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WELCOME TO HELL!  作者: 毛熊
第七章 大陸騒乱編
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不可解な行為

 隠れ里で一晩を明かした後、私達は王国へと出立した。トゥルをはじめとする同行者達は名残惜しそうにしていたものの、今はそれどころではないことは分かっている。しばしの別れを告げて隠れ里を後にした。


 隠れ里から出ると同時に『森の神』様によって外へ続く一本道が作り出される。私達は『森の神』様へ感謝しつつその道を通って森の外へ出た。


「警戒を密にしろ」

「「「おう」」」


 ここから先は私達に友好的な神々の領域から離れることになる。王国の領域内であっても油断は出来ない。気を引き締めていく必要がある……と思っていた。


 森の外へ出た直後、私は視線を感じ取る。それは仲間達も同じだったらしく、いつでも得物を抜ける態勢を取った。


「あれは……」

「トバイアスの部下だな」


 視線を感じたのは間違っていない。ただ、その視線の主は味方だったらしい。私達が行き来する際、陰ながら護衛兼監視をしている者達だったのだ。


 私は双剣の柄から手を離し、急いで接近してくる彼らを待つ。この対応から考えて、いつ私達が姿を見せても良いように待機していたようだ。


 王国が何もしていないとは思っていなかったものの、ここまで徹底しているとは。王国も何が起きているのか把握しようと必死らしい。


「アンタレス殿でしたか!」

「ティガル達だと思ったか」


 トバイアスの部下達は何度も首肯した。本来であれば今回はティガル達が王国へ来るはずだったのだ。それなのに私が来たのだから、驚くのは無理もないだろう。


 これはお互いの情報についてすり合わせを行う必要がありそうだ。私はまずトバイアスの部下にリーゼロッテの無事と彼女から預かった書状があること、そして書状を届けるために急ぎ王都へ向かうことを告げた。


 彼らはリーゼロッテの無事を知り、驚くと同時に安堵しているようだった。そして王都まで同行することを求めて来る。普段から共に移動しているのは知っているが、今回は陰ながらではなくすぐ側で行動したいと言い出したのだ。


「我々も何が起こっているのか知りたいと同時に、アンタレス殿達も今の王国の情勢についてお話することが出来ます」

「……それもそうか。わかった。共に行こう」

「感謝します」


 短いやり取りを経て、私達はトバイアスの部下を加えて王都を目指す。彼らは私達を陰ながら守る役目もある関係上、かなりの手練れである。だが、彼らは魔人ではない。いくら闘気で身体を強化しても、魔人の無尽蔵に近いスタミナについていくことは難しかった。


 それ故にほぼ平野が続く王都までの道のりは休みなしで駆け通す予定だったのだが、幾度か休憩する必要にかられてしまう。王都に到着するのは想定よりも数日遅れることとなった。


 ただ、個人的にはその価値はあったと思っている。何故なら、聖騎士団は我々にだけ手を出した訳ではなかったからだ。


 聖騎士団が標的にしたのは全ての魔人だったらしい。王国が保護していた魔人達も大勢が殺され、国外にいた魔人も殺された……と()()()()()という。


 何故確定ではないのかと言えば、魔人達の死体がないからだ。ただし、戦った跡地には夥しい血痕とそこに沈む聖騎士の死体、半死半生の魔人が残っていた。そして治療を受けて回復した魔人の証言から、聖騎士の襲撃は間違いないようだ。


 魔人達も無抵抗で殺されるはずもなく、激しく抵抗したようだ。だが、魔人の中でも最精鋭である私達ですら罠にハメられたとは言え苦戦を強いられた。多少は私達に匹敵する者達がいたかもしれないが、聖騎士団は一人一人がそれなりに強い上に連携も上手い。大勢の聖騎士が死亡したものの、明確に返り討ちに成功した集団はいないようだ。


「この一件、不可解なことが多すぎるな……」


 もうすぐ王都が見えてくるという場所で最後の休憩を取っている間、私は一人で考えていた。聖騎士団が魔人を襲撃する。それ自体は私の感情面では認められないが、連中の主張を聞いていれば理解出来る。奴等は一貫して魔人の存在そのものを否定していたからだ。


 それ故に魔人を根絶やしにするべく各地の魔人を襲撃するのもわかる。この一件で魔人が大勢死んだのだから、目的は果たしたと言えよう。


 一方で、聖騎士を損耗するようなやり方は意味不明だ。伝聞ではあるが、聖騎士の腕前から察するに共和国との戦争を戦った者達なのだと思われる。それほどの腕前になるまで鍛え上げた聖騎士達を、まるで使い捨てにするかのようなやり口……普通に考えて費用対効果が悪すぎるだろう。


 聖騎士は狂信者が多いので、戦死が前提の作戦に身を投じることに抵抗がない者も多いのだろう。だが、そんな聖騎士という都合の良い者達の代わりが務まる戦力を確保するのは難しい。貴重な者達を使い捨てにするほど、魔人を一掃する作戦が重要だと思えなかった。


 また、魔人の遺体が消えているのも不可解だ。消した方法は不明だったようだが、私はその方法に心当たりがある。それはティガル達をハメた罠に使われた空間を操る霊術だ。


 跡地には血痕こそあれど、燃えカスなどはなかったらしい。遺体を焼いた訳でもないのに忽然と消えていることからも、霊術を使ったのは確定と言って差し支えないだろう。


 だが、空間を操る霊術を使っているとするなら、また別の疑問が生じる。それは血溜まりに残っていたという聖騎士の遺体だ。魔人の死体が消えたのは、霊術によって別の場所へと転移させられたのだと思われる。ならば聖騎士の遺体が残っているのは何故なのだろうか?


 私が連中の立場にあったなら、敵の遺体など捨て置いて味方の遺体は回収する。仲間達が死ぬことも辛いが、その遺体が辱められるのも耐えられないからだ。


 しかし、聖騎士達は魔人の……連中にとっては敵の死体を回収することを優先している。どうしてそんなことになっているのか?私の頭脳では、自分自身を納得させられるだけの理由を導き出すことは出来なかった。


「それに、最も知りたいことが聞けず終いか」


 私達にとって最も優先される情報。それはティガルの安否である。ボタン達も知らないと言っていたし、トバイアスの部下達も知らないと言う。依然として安否不明のままだった。


 ただ……聞いた話から私達は最悪の想像をしてしまった。聖騎士によって討たれ、転移されたであろう魔人達。その中にティガルも含まれているのではなかろうか、と。


 この最悪の想像を私達は振り払った。実際に戦ったリナルド達の話から、並の聖騎士では何人いたとしてもティガルを仕留めることは不可能である。ティガルの得物もレオと同じく森で扱うには不向きだが、彼の腕力と速度であれば樹木をへし折りながら大剣を振るえるからだ。


 しかし、この想像はティガルと戦ったのが並の聖騎士だけだった時の話。仮にリナルドやレオと戦った、飛び抜けて強い聖騎士が交ざっていたら?そして手練れの聖騎士が二人以上いたとしたら?環境の不利を背負ったまま勝てると言い切れるだろうか?


「ボス!」

「……ちょうど良かった。今行く」


 悪い方へ悪い方へと向かって行く私の思考を断ち切ったのは、仲間の呼び声であった。ティガルは無事。どこかで傷を癒すために潜伏している。私はそう自分を納得させて……いや、自分に言い聞かせてから再び駆け出すのだった。

 次回は12月22日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
魔人の死体の回収はもしかしたら魔人のあれこれを調べるため? まさか自分たちに都合のいい魔人を新たに作り出そうとしているとか? 怖いわあ。
仲間の遺体よりも魔人を優先するとは碌な事に使われなさそうだ もう名前以外に正義要素見当たらない集団になってそうだなあ
この作品だからなぁ 希望は少ないだろうねぇ ティガル無事だといいけど
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