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WELCOME TO HELL!  作者: 毛熊
第二章 戦奴編
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カルネラ港奪還作戦 その二十

 動き出した自走砲を見て、我々はまさか撃たないだろうという願望と同時に共和国軍なら撃つに違いないという不思議な確信を抱いていた。そして我々の確信は正しかった。数十台の自走砲の砲口が我々に……今も機鎧兵と戦っている我々に向けられたのだ。


 おいおい、今撃っても良いのか?撃ったら自分の味方も巻き込むんだぞ?そんなことを心の中で問い掛けるが、アスミごと攻撃したのを知っている私は撃つことを確信していた。


ドドドドドドドドドッ!!!


 予想通りに自走砲は味方を巻き込んでも構わないとばかりに砲撃を開始した。私は絶対に撃ってくると思っていたので、既に準備を整えていた。霊力を練り上げて、分厚くて密度の高い砂の壁を作り出して自分と仲間達を守ったのだ。


 しかし一斉射撃の威力は凄まじく、砂の壁はほとんど原型を留めていない。飛び散った砂が辺りに漂い、私以外のほぼ全員が目や口に入った砂に悶絶している。仮面によって顔を守っている機鎧兵も、武器や鎧の隙間に砂が入ったのか動き辛そうにしていた。


「ペッ!ペッ!クソッ、どうすんだ?あれを相手にするのかよ?」

「自走砲を破壊出来る者は限られる。まともにやり合うのは無理だろう」


 ザルドの言うように、自走砲を破壊出来る攻撃力を有する者は魔人部隊でもあまりいない。可能なのは私、ティガル、ゴーラ、そしてトゥルくらいだろう。他の者達も優れた武器を持っていれば別かもしれないが、持っていないのだからどうしようもなかった。


 それではどうするべきか?北へと戻ればデキウス達が守っている地下道と通じる穴に自走砲を連れていくことになる。それだけは避けなければならないので論外だ。


 ならここで踏みとどまるのか?いや、それではダメだ。こいつらを倒すなら、私もいつまでも守ってはいられない。そして守るのを止めれば、勝利する前に確実に半数以上は死ぬ。他の誰が何人死のうがどうでも良いが、仲間が死ぬのは悲しい。その確率はなるべく低くしたいのだ。


 それ故に自走砲を無視して外壁に特攻するのも同じく論外だ。それでは私を含めて全員が根絶やしにされる未来しか見えないからだ。


「……」

「あっちに行けって?」

「なるほど、そう言うことか」


 考えた末に私が出した結論は、敵の兵舎がある場所へと()()()ことだった。あそこは敵だけでなく建物も密集している。細い路地が多いので自走砲は追い掛けるだけでも困難だろう。


 何よりもカレルヴォの魔人が掘った穴がある。そこの戦いを勝利に導けば、血に飢えたカレルヴォの魔人は間違いなく戦いの気配がする外壁にやって来るだろう。そうして連中を外壁の側で戦わせ、足止めする任務に利用するのだ。


 私は兵舎の方へ白い剣の切っ先を向ける。ザルドはその意図をいち早く理解して、魔人部隊をそちらへと誘導していく。その流れに私だけは乗らなかった。何故なら、移動する仲間達の背中を撃たせないために自走砲を足止めしなければならないからだ。


「……!」

「皆さん!今のうちに急ぎましょう!」


 再び放たれる自走砲の一斉射撃を再び砂の壁を作ることでどうにか防ぐ。再び飛び散る砂に背中を押されるようにして、仲間達は急いで兵舎の方へ走っていった。その姿を見送る私に向かって、ティガルが戦っていた白機兵が大剣を振り上げて襲い掛かる。霊術に集中していて反撃出来ないとでも思っているのか?舐めるなよ。


 その一撃を二本の剣で受け止めた私は、尻尾の毒針を鎧の隙間に滑り込ませようとする。しかし、その前に白機兵の大剣が光と共に強い電撃を放った。どうやらこれが大剣に秘められた機能であったらしい。


「があっ!」


 触れている剣から私も感電し、全身を電撃が駆け回る。私は他の痛みと同様に、電撃による痛みにも慣れているので平気だ。電撃はゲオルグによる最初の訓練で受けた忌々しく、最も克服せねばならなかった攻撃だったからな。


 しかし、不愉快なものは不愉快だ。私は両腕に本気で力を入れて強引に白機兵を押し戻す。意外なことに私の押し出しに逆らうことなく、白機兵は後ろに下がった。


「……!」


 奴が下がった途端に、自走砲による三度目の一斉射撃が今度は私一人に集中する。今回は砂の壁を張る余裕がなく、砲撃は直撃してしまった。


 近い距離からの砲撃は洒落にならない威力がある。闘気によって外骨格の強度を上げていたものの、凄まじい衝撃と熱が私を襲う。外骨格に亀裂が入った気がするものの、私は倒れることなく耐えきった。


 その傷を癒す時間を与えないとばかりに大剣使いの白機兵が私に襲い掛かる。今度は剣で受け止めずに体捌きによって回避すると二本の剣で白い鎧ごと両断しようとした。


「!?」


 しかし、私の剣が白機兵の肉を斬ることはなかった。剣が触れる直前に鎧の肩の部分が展開し、そこから発生した斥力場が私を押し出したのである。転がることこそなかったものの、トドメを差すことには失敗してしまう。


 斥力場を解いた白機兵は大剣を振り回す。単純な技量ならば先ほど討ち取った斧槍使いの方が上だと思うが、破壊力のある大剣と斥力場による防御の組み合わせは厄介だ。一瞬で倒すことは出来ないだろう。


 斧槍使いもまだ隠していた何かがあったのかもしれないが、それを発揮させる前に死んだのでわからない。やはり、敵が強いのならば全力を出す前に仕留めてしまうべきである。当たり前だが忘れがちなことを私は頭の中に刻み込んだ。


「■■■!」

「……っ!」


 白機兵の猛攻が急に止まって後ろに下がると、また自走砲が火を吹いた。砲撃に晒されながら、私は一刻も早くこの白機兵を討ち取るための一手を打つことにした。


 私は霊力を爆発的に高めていく。それを危険な兆候だと判断したのか、砲撃の向こう側から白機兵も電撃の霊術を放つ。その判断は正しいが、同時に間違ってもいた。


 私の行動を阻もうとするのは正しい。しかし、それならばもっと強力な攻撃……例えば戦艦を貫いた強化された銃のような、私を一撃で殺せる攻撃を加えるべきだった。それが出来ないのなら今すぐに逃げるべきだったのだ。


「がああああああっ!」


 私は二度に渡って張った砂の壁。それを作るために生み出した大量の砂を操作して、砂嵐を発生させる。以前のように範囲を重視した目眩ましではない。白機兵と自走砲を巻き込む最低限の範囲に絞った代わりに風速が百倍以上に跳ね上げた殺傷するための砂嵐だった。


 荒々しいという表現では生温い砂嵐は、その内側に捕らえた全てのものを砂によって削って行く。運悪く巻き込まれた機鎧兵は一瞬で鉄屑混じりの血煙と化し、自走砲も装甲が傷だらけになるだけの止まらず次々と砲身がへし折れていた。


 あれ?思っていたよりも自走砲の装甲は頑丈ではないのか?このまま自走砲部隊を壊滅させられそうだ。それならティガル達を逃がさずとも良かったのではないかとも思ったが、彼らがいたらそもそも全力の砂嵐は発生させられない。やはり彼処で皆を逃がしたのは正解だったのだ。


「■■?■■■■■■■!?」


 砂嵐の中で唯一無事と言えるのは斥力場を発生させて自分を守っている白機兵ぐらいのものだ。ただし、この砂嵐は私が完全に掌握している。その内側から動かずに守りを固めているのだから、どこにいるのか丸わかりというものだ。


 砂嵐の中で私は白機兵の位置を補足し、砂嵐を操りながらそれとは別に霊力を練り上げて新しく砂を作り出す。大きな手を象らせたその砂は、掌で白機兵の周囲を覆う斥力場を鷲掴みにした。


「■■■!?」


 白機兵は驚いているようだが、もう遅いし逃がしはしない。砂の手は球状に広がって白機兵を守る斥力場を包み込むと、そのまま握り潰すように圧力を加えていく。


 砂の手は一つだけでは斥力場と拮抗して突破することは出来ないらしい。ならば手を増やしてやれば良い。私は新たに砂の手を五つほど作り出すと、その全てが白機兵の斥力場に襲い掛かる。単純に六倍になった圧力は斥力場を徐々に押し潰して行き……最終的に斥力場ごとゆっくりと白機兵を握り潰した。


 白機兵の断末魔の絶叫が聞こえたが、砂嵐の轟音によってすぐにかき消されてしまう。私はティガルにちょうど良さそうだと思った白機兵の大剣を拾うと、砂嵐のそのままにして仲間達と合流するべく駆け出した。


 自走砲の足止めと白機兵の討伐を終えた私が兵舎に近付くと、そこでは激しい戦いが繰り広げられていた。穴から出てくる魔人と帝国兵に機鎧兵が銃弾の雨を浴びせ、その背後からティガル達が襲い掛かって乱戦になっているのだ。


 背後からティガル達が襲い掛かったというのに、何故に敵が健在なのか。それは二人いる白機兵が原因だった。片方は地上でティガルとザルドの二人を相手に互角に渡り合い、もう片方は背中から炎を噴射してミカ達と空中戦を繰り広げている。


 特に強い二人とも頭上という有利な位置からの攻撃を封じられてしまったのだ。苦戦も必至と言うべきだろう。私は戦況を打開するべく、奪い取った大剣を肩に担いでから思い切り投擲した。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、もうなんていうかサソリを敵基地とかに空から投下して砂嵐を発生させたら大抵の事は片がつくんじゃなかろうか? 耐えられるのは白機兵くらいでしょうし、ただあまり連発したらすぐに対策取ってきそ…
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