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WELCOME TO HELL!  作者: 毛熊
第二章 戦奴編
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カルネラ港奪還作戦 その十

 リナルドとトゥルのいる戦艦に乗り込んだ私は感覚を研ぎ澄ませて二人の気配を常に意識しつつ、救援に向かうべく走り続けていた。一時は死の直前にまで衰弱していたリナルドだが、少しだけ回復しつつある。魔人になっていなければ、間違いなく死んでいただろう。


 だが、状況は芳しくない。戦艦に乗り込んだことでようやく感知したが、二人の前には三十以上もの敵の気配がするのだ。急いで救援に行かねば二人とも死んでしまう。魔人は頑丈だが、不死身ではないのだから。


「■■■!」

「■■■、■■……!?」


 ここは敵地であり、私の行く道を阻もうと飛び出してくる敵も多くいる。しかし、今の私はとにかく急いでいるのだ。構っている暇はない。立ち塞がる敵は全て二本の剣で片っ端から斬り殺した。


 先ほど戦った機鎧兵のように優れた技術を持つ者はいない。私は足止めをされることなく敵を血祭りに上げながら二人の下へと駆ける。頭部をカチ割り、腰から下を両断し、毒で犯して始末していった。


ぎぐげが(見付けた)!」


 下へ下へと通路を進み、私は遂に二人がいる通路にまでやって来た。通路の奥には氷の壁が張られており、それを破壊するべく炎弾を放っている。爆発する度に氷の壁がビキビキと言って亀裂が入っていく。


 あの調子ではもうすぐ破壊されてしまうだろう。壊れてしまえばその向こう側にいる二人はグチャグチャにされてしまう。そうはさせるか!


「がああああっ!」

「■■■!?」

「■■■!」


 私は霊力を高めて砂を作り出す。それに何かの形を与えるでもなく、ただ力業で目の前の敵兵を押し流した。押し流しただけなので、まだ敵兵は砂の中から脱出しようと藻掻いている。逃げられても面倒なので、私は砂を圧縮してその中にいた敵兵を押し潰した。


 通路が静かになったところで、私はリナルドとトゥルの二人に注意を向ける。二人は武器を構えたまま硬直していた。どうした?さっさと逃げるぞ。私はジェスチャーで外へ続く道を指差した。


「ったく、こっから良いとこ見せようって所だったのに……痛ぇ!?なっ、何すんだよ!?」

「強がっちゃって、もう……。ありがとうございまし、たぁぁ!?」


 二人が硬直状態から立ち直った直後、ガクンと戦艦が大きく揺れた。そしてギシギシと嫌な音が二人の後ろから聞こえてくる。どうやら二人が行った破壊工作の結果、戦艦が沈みつつあるらしい。とっとと脱出しなければ!


 それがわかっているからか、二人は何も言わずに私と共に甲板を目指して走り出した。走っている最中、何度か先ほどと同じ揺れと軋む音が響き渡る。揺れの間隔は徐々に狭まっており、戦艦が致命的なダメージを受けているのは確実だった。


「■■■!」

「■■!■■■■!」


 しかし、脱出を阻もうと敵が立ち塞がることがあった。その敵は私が全て突破していく。平気そうに見せていたが、リナルドは深傷を負っていて走るのもやっとだ。トゥルはそんな彼を支えているので、戦えるのが私しかいないのである。


 敵の血で通路を塗り固めながら、我々は遂に外へと出る。そんな我々を出迎えたのは、白機兵を含む百人ほどの敵であった。


「■■■!」

「マジかよ!?」

「危ないっ!」


 リナルドとトゥルは悲鳴を上げながら急いで通路の中に飛び込んで銃弾を避けた。しかし、私は銃弾を防ぐ必要がない。弾丸の雨を真っ向から受け止めながら、敵のリーダーであろう白機兵を観察した。


 白い鎧の形状はこれまで斬り捨てて来た者達と同じである。幅が広く分厚い刃と柄の部分がゴチャゴチャしている片手剣を右手に持ち、太めの筒が上下に二本並んだ銃を左手に持っていた。


 おや?前に戦ったことがある者に似ている。向かい合って感じる雰囲気から別人なのは確かだが、武装が同じであることを考えると戦い方に大きな違いはないだろう。私はグッと身体を屈め、低い姿勢で突っ込んだ。


「■■■!」

「ごがっ!」


 白機兵は思った通り、左手の銃を私に向ける。銃口が光った瞬間、そこから放たれたのは無数の小さな弾丸だ。強い打撃力を誇る一撃だが、私はそのことを知っている。その攻撃を受けたことがあるからだ。


 知っていれば対処もしやすい。私は更に姿勢を低くして回避すると、身体を捻りながら銃を切断するべく黒い剣を振るう。しかし、白機兵は冷静に銃を下げつつ、右手の剣を振り下ろす。それを私は白い剣で受け流さず、剣の腹でわざと受け止めた。


「■■■?」


 その瞬間、白機兵は剣の柄を握る手を不自然に動かした。すると()()()()に剣からも弾丸が放たれる。初見の時は驚かされたビックリ武器も、タネが割れていれば回避は造作もない。私は首を傾けて銃弾を避けた。


「ぎぃっ!」

「■■■……!」


 回避されると思っていなかったのか、白機兵の方が驚いて動きを止めてしまう。その隙を逃さず、私は膝を抱え込むようにしてから気合いの声と共に横蹴りを膝に叩き込んだ。


 鎧がひしゃげ、その奥で守られているはずの膝が砕ける感触が伝わってくる。私は自然と笑みを浮かべ、白機兵は苦しそうな呻き声を出していた。更に追撃すべく白い剣を押し上げて相手の剣を弾くと、今度は黒い剣で胴体を薙いだ。


「■■■■■!」

「がごおぉっ!?」


 黒い剣が鎧に少しだけめり込んだ時、鎧の背部が展開されて炎を噴射する。そして予備動作なく後ろへ飛びながら、左手の銃を至近距離でぶっ放した。胸に食らった私は大きくのけ反り、すぐに追い掛けることは出来なかった。


 距離が開いたので仕切り直しである。と言っても私がやることは変わらない。近付いて、斬る。ただそれだけだ。私は再び甲板を踏み締めて駆け出した。


「■■!■■!■■!」


 白機兵は左手の銃を私に向け、何度も何度も引き金を引く。その度に小さな弾丸が私目掛けて飛んでくるが、それを大きく左右に跳ぶことで回避する。ジグザグに動くだけでも効果はあるものだ。


 苛立ったのか白機兵は左手の銃を強く握り締める。すると鎧の腕の部分の装甲がスライドして、銃の表面を覆っていく。この変貌は一瞬の内に終わり、白機兵は再び引き金を引いた。


 その時、私は急激な霊力の高まりを感じ取った。何かはわからんが、危険な攻撃が飛んでくる。これは今までの弾丸のように受けてはならない。それを本能で察した私は、その場で大きく跳躍した。


「うおおっ!?」

「きゃあっ!?」


 強化された銃から放たれたのは普通の銃弾だった。しかし、その銃弾はこれまでとは比較にならないほどの速度で放たれたのである。どれほど速いかと言うと、速過ぎて空中で燃え尽きてしまうほどだった。


 放たれた時の轟音と紫電を伴う衝撃波によって戦艦が大きく揺れる。通路に隠れていたリナルドとトゥルが悲鳴を上げ、甲板にいた機鎧兵達も立っておられずによろめいていた。


 そんな周囲に構うことなく、白機兵は銃口を空中に逃げた私に向ける。私が銃口の奥で激しく光が明滅するのを見た直後、再び轟音と共に必殺の銃弾を放った。


「■■!?」

がぐががっが(危なかった)!」


 私が何の備えもなく回避が困難になる空中に逃げる訳がない。私は一瞬で砂の鋏を作り出すと、それを足場にして前へ跳んだ。放たれた弾丸は役目を終えた砂の鋏を粉砕するどころか、ドロドロに溶かしてしまう。直撃していれば私もああなっていたことだろう。


 しかし、私に銃弾は当たっていない。それが事実であり、跳躍した私が既に白機兵の真上にいるのも事実だった。私はここで始めて両手の剣に刻まれた霊術回路を起動する。


 危険を感じた白機兵は反射的に剣を盾にするように構えた。その刀身はうっすらと輝いていて、こっちも霊術回路を起動させているのは明白だ。二振りの刃がぶつかり合い……私の白い剣はその剣を何の抵抗も覚えることなく切断してから頭頂から股下までを両断した。


「■……■■……■……!」


 真っ二つにされた白機兵は何かを言い残したようだが、私にその言葉は届かない。言葉がわからないからだ。私は無言で奴が使っていた銃を拾い上げる。そして白機兵があっさりと死んで呆然としている機鎧兵達に銃口を向け、引き金をひいてみた。


 引き金に指を掛けた時、私の身体から強制的に霊力が吸われるような感覚を覚えた。そして引き金を引いた瞬間、銃口から轟音と共に銃弾が超高速で放たれた。


「■■■■■!?」

「■■■!■■■!」

「■■■■■!■■■■■■!」


 撃たれた機鎧兵達はたまったものではなかった。直撃した者達は身体の一部が鎧ごと燃やされて絶命し、余波を受けた者も四肢が千切れて絶叫する。今更だがとんでもない威力だ。本能が鳴らした警鐘に従って正解だった。


 他の者達は半狂乱になりながら私に向かって銃を乱射し始める。通用しないことはもうわかっているだろうに……冷静な判断が出来ていない結果だ。


「ウッシャアアアアアッ!!!」

「ごるるるるっ!」


 しかし、リナルドとトゥルは今が好機だと冷静に判断していた。隠れていた通路から飛び出すと、恐慌状態の機鎧兵達を次々と討ち取っていく。すぐ近くで仲間が槍で貫かれ、戦鎚で叩き潰されていると言うのに、私を狙ってしまうのは恐怖故の行動だろう。


 機鎧兵は二人に任せておけば良いだろう。銃弾の雨を浴びながら、私は最も近い戦艦の大砲に向けて銃を撃つ。超高速の弾丸は大砲の根本を貫通し、その奥で燃え尽きたらしい。何発か撃つと大砲は内側から燃え始め、ついには爆発した。


「それ、威力は凄ぇけどうるせぇなぁ」

「うぅ……耳がおかしくなりそうだよぉ」


 爆発によって再び戦艦が揺れる。その頃には銃弾の雨は止み、気付けば返り血で真っ赤に染まった二人によって機鎧兵は全滅していた。どうやら二人はこの銃がお気に召さないらしい。強力なのに……うるさいのは否定しないがね。


 甲板に上がった我々を見て、ミカと二人の魔人がこっちに来る。三人は我々を回収するために来たのだ。沈没しつつあることと甲板での火災によって、空を飛ぶ仲間達を撃つ余裕がないらしい。三人は高速で真っ直ぐに我々を回収した。


 我々が離れた後、さっきまで乗っていた戦艦は大きく傾いて船首を上に上げてから沈み始めた。残っている戦艦もこの調子で、しかし油断せずに沈めてしまおう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 視点変更の塩梅がほどよくて読みやすいです
[一言] せっかくいい武器かっぱらってもどうせ研究するからって回収されちゃうんだろうな…w
[一言] おおー? 新しい武器が手に入ったみたいですが霊力で威力のブーストでもしてるんですかねこの銃は? 向こうでは白機兵でもないと霊力の量的に扱えないでしょうがこちらではどれくらいの実力があれば扱え…
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