1月27日(2)
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放課後、俺たちは三島繫明さんの家にやってきた。三島さんは、二件目の事件現場となったラーメン屋の常連さんで、被害者とも親しい間柄だったらしい。
三島さんは、俺たちがやってくると、客間に案内してくれた。
俺たちはテーブルを挟んで三島さんの対面にあるソファに腰掛ける。
「三島さん、この度は取調べに応じていただき、ありがとうございます」
最初に口を開いたのは紅さんだった。
今回、俺は書記に徹することになっているので、メモ帳とペンを取り出し、メモを取る準備をする。
「いやいや、忠蔵さんがあんなことになってしまったからね。警察の方々に協力するのは当然のことだよ」
「ご協力、感謝します。犯人逮捕のために全力を注いでまいりますので、本日はよろしくお願いします。さて、まず、三島さんと忠蔵さんとのご関係について伺ってもよろしいですか?」
「僕は忠蔵さんが営むラーメン屋の常連でね。開店当初からよく通っていたんだ。忠蔵さんとはお店の外でも付き合いがあって、つい一か月前には、忠蔵さんと東北の方まで一緒に旅行に行ったかな。といっても、ご当地のラーメンを食べてばっかだったけど」
「最近、忠蔵さんとトラブルになった人はいますか?」
「これは前の刑事さんにも話したんだけどね、僕も思いつかないんだ。忠蔵さん、お客さんや近所の人にとても好かれていたからね」
「事件当日、三島さんは忠蔵さんのお店に行かれました?」
「いいや、行っていないよ。当日は、出張があったからね。出張から帰ってきたら忠蔵さんのラーメンを食べようと考えていたのに……」
「心中、お察しします。そういえば、忠蔵さんのラーメン屋さんって、常連の人の名前を掛札に記名する制度がありましたよね」
「ああ、そうだね。僕も名前を書いてもらったよ」
「たしか、師範でしたね」
「よく知っているね」
「あの常連システムって、どうなっているんですか? スタンプカードとか?」
「いや、そんなものはないよ。あれは、お客さんの名前と顔を店員さんが覚えたら書かれることになっているんだ」
「それじゃあ、人によって、お店に通っている回数はまちまちなんですね」
「そうなるね。そういえば、常連さんで一人面白い人がいたな」
「えっ、どんな人ですか?」
「名前までは憶えていないんだけど、店員さんは『さむらいさん』って呼んでいたよ。なんでも、ある日、さむらいさんと外国人のお客がたまたま一緒にお店にいたとき、その外国人がさむらいさんの名前を見て、武士みたいな名前だから、お侍さんだって嬉しそうに話していたそうなんだよね。それで、店員さんが名前と顔を覚えちゃったみたいで。その子、まだ数回しかお店に来たことがなかったそうだから、常連さんになった最速記録じゃないかな」
「へー、『さむらいさん』って呼ばれていた人もいるんですね」
「あだ名はよくあることだよ。僕も店員さんからは、『シゲさん』って呼ばれていたしね」
「なるほど、それでは、次の質問に移りますね。――――」
その後、俺たちの三島さんに対する取材は、一時間ほど続いた。




