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卒業後

 結局、境間がそれ以上、多濡奇にちょっかいをかける事はなかった。

 多濡奇は処女と淫崩を奪われ、溢れる殺気を覚えた。


 だがあいつは、須崩に関わると、『あの頃』に戻っちまう。

 弱くなる。


 淫崩もそうだったな。どいつのこいつも、こんな無能に何足を取られてんだ、と、俺は歯がゆい。

 

 俺が殺してやってもいい。

 が、それで多濡奇が強くなるかというと、絶対そうはならない。

 奪われた衝撃なら、淫崩の方が大きいんだ。須崩の死は感傷の域を超えないだろう。

 

 だから、俺は決めた。

 少なくとも、あいつが保育所(ここ)にいる間は、俺が奴を守る。

 唾を吐き捨てたくなるほどの、無能、須崩の野郎も守る。

 

 弱かろうが強かろうが、あいつらに手を出す奴は、潰す。


 境間は、もう干渉してこねえ。

 だが、問題はあった。絶対数が多すぎるんだ。

 

 保育所の餓鬼どもは、『駆他を()れる』ってだけで、張り切りやがった。


 特に中流だな。

 半端な強さの奴らは、コンプレックスが凄まじい。

 あんまり組まねえ奴らが、チームを組んで、須崩をおびき出す。


 ため池、橋の下、体育館、図書館、役場、畑、川原、そして炭焼き小屋。


 多濡奇のやつは、須崩が攫われたら、何処にでも行く。

 罰でも求めているみてえだ。


 くそ。

 罰を受けるのは俺だろう。


 が、俺も死んだら多濡奇を守れねえからな。

 しかも、俺は1人だ。

 仕方ねえから、ちょっとでも怪しいやつは、全員イソギンチャクにする事にした。

 モップか。個体差はあっても、全員いぼの塊だ。


 たまに、多濡奇とニアミスになる。

 俺の胸は酷く傷む。

 が、舎弟にきつく命令する。

 

 何の感情も示すな。

 

 それでいい。

 感情なく殺す。

 余計な勘繰りもされねえ。


 で、殺しまくって、4年が過ぎ、俺と多濡奇は卒業した。


 そういやあいつは、ひよこで殺気をかくすようになった。

 まあ、それで気が済むなら、良いだろう、と思う。


 保育所を卒業すると、多濡奇の噂を聞くようになる。

 やりまん、ってヤツだ。


 強い駆他の女が、案件仲間とやりまくってる。


 ……その話を聞くたび、俺は、思う。

 お前は、まだあの夜にいるんだな。

 淫崩を救えなかったって、お前自身を責め続けているんだな。


 俺は痛む。

 酷い痛みだ。

 だが、あいつに容赦は無いはずだ。

 痛みしかないあいつなら、いくらでも生き抜くことができる。


 それが、俺のわがままだ。


 俺はというと、休みの仕事で、ペンキ屋になった。

 シンナーの臭いは、鼻にきつい。

 胸糞わりい。

 が、それは、ささやかな罰だ。

 それに、罰を受けながら、世界を綺麗に染めていく。

 できるだけ、人目に付きそうな、ビルを塗る。

 赤は特に念入りに、誰よりも速く。


 だが、塗り終えると、必ず俺は、俺を殺したくなる。

 赤はあの夜から、多濡奇の血の赤に変わった。


 もう、ああ、赤だな、と思えなくなった。

 だがそれも、俺に与えられた罰なのだろう。


だが、後悔はしねえ。

 多濡奇は生き続けている。

 20代の前半で、100年級の案件を3つこなしたらしい。

 その後も、小せえのをいくつかこなして、ここ5年間は完全休暇に入っていると聞いた。


 遊園地の着ぐるみ係らしい。

 まあ、子供好きな多濡奇らしいな。


 俺の頬は緩む。

 

 気が付けば俺は32歳だ。

 俺はたまに案件をこなしながら、ペンキ屋を続けている。

 斑転の寿命はそんな長くねえ。


 まあ、50まで生きればいい方だが。

 免疫不全を取り込んだからな、俺はせいぜい、40までか。


 後悔はねえ。罰は受け続けるけどな。

 それが、あの夜の代償だ。


 と、思っていたら、案件の依頼がきた。

 100年級らしい。


 俺は、境間から説明を受けるため、横浜に向った。

 向かった先、山下公園で、……多濡奇と再会した。 

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