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電書第2巻 2/25コミックシーモア配信《連載再開しました》ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ  作者: はなまる


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第34話 ドアマット幼女と飴作り

エルシャの遭難事件の、後日談的なお話です。


 皆さま、こんにちは。


 エルシャ・グリーンウッド六歳です。


 遭難騒ぎから一夜明けた朝食の席で、わたしとヘンリーで採ってきた初雪ニンジンをお披露目しました。


 ソフィアさんは『まぁまぁ、お嬢様ったら!』と、目を丸くしました。


 ベックさんは『これは……立派な初雪ニンジンですな!』と、感心していました。


 そして早速、おばあ様に食べてもらうことになりました。


「どうやって摂取するのが、効果的なんですかね?」


「かなり癖のある味らしいですよ。すり下ろして、蜂蜜と混ぜてみますか?」


 植物図鑑によると、葉っぱや茎も食べられるそうです。ちょっと齧ってみました。


「うっ、苦ぁい……。あうっ、舌がビリビリします……」


 これは……! 良薬口に苦しとはよく聞きますが、余りに余りなお味です。苦いだけではなく、渋みと辛み、えぐみもあります。


 わたしはハドソン先生が持たせてくれた巾着袋から、蜂蜜飴を取り出して急いで口に入れました。


「そんなに、ですか?」


 ソフィアさんも葉っぱを一枚、口に入れました。眉間に皺を寄せて味をみています。


「ああ、これは……本当に食べて大丈夫なんですか?」


「お酒に漬け込むと良いらしいです。二年くらい漬けるとまあまあ食べられるって、狩人のおじ様が言ってました」


「二年も待てませんね」


 ソフィアさんにも、蜂蜜飴を渡して二人で黙ってコロコロと口の中を転がします。


 これを食べて、薬効に気がついた人は凄いですね。普通なら毒だと思って吐き出すレベルです。


 こんな強烈なお味のものは、熱と咳で弱っているおばあ様には負担になってしまう。


 ソフィアさんと、うーんと考え込んでいると、玄関から声が掛かりました。


「おーい、ソフィア。注文の品を持って来た。開けてくれ」


「狩人のトーマスですね。ちょっと荷物を受け取って来ます」


 昨夜、大泣きを見られてしまった狩人のおじ様です。ソフィアさんと話しながら、大きな荷物を抱えて玄関から入って来ました。


「嬢ちゃん。初雪ニンジン、持ち帰ってたんだって? どうやって見つけたんだ?」


「えっ、あの。植物図鑑で調べて……」


 昨日の今日なので、恥ずかしくてモジモジしてしまいます。だって、鼻水も出てしまいましたし。


「おお、こんな大ぶりのニンジンを二本も! 大したもんだな」


「あっ、こっちの大きいのは、ヘンリーが掘り出してくれたんです。わたしが掘ったのはこっちです」


 少しひしゃげた、色みの強い方を指します。


「うむ……。良い色だ。年数を経ると赤味が増すんだ。これは三年モノかも知れんな!」


「三年モノはたくさん、滋養を蓄えてるんですよね?」


「ああ。だが、味もだんだん強烈になる」


 さすがトーマスおじ様は、狩人だけあってよくご存知です。


「葉と地下茎、どちらも熱を加えても大丈夫ですか?」


「ああ、薄く切ってお茶に入れたり、スープにしても大丈夫だ」


「食前と食後では、どちらが効果がありますか?」


「胃の中に何もない方が吸収が良いが、胃腸の弱っている場合は食後に。胃もたれする場合もある」


 わたしの勢いに、最初は面食らったようにしていたヘンリーおじ様ですが、徐々に真剣に答えてくれるようになりました。


「嬢ちゃんは、医者か薬師でも目指しとるのか?」


「いいえ、そういうわけでは……。ただ、おばあ様が、少しでも元気になればと……」


「なるほどな。薬草に興味があるなら、わしのところへ勉強に来るといい」


「はい……。ありがとうございます」


「その犬も連れて来なさい。良い救助犬になる。それと……嬢ちゃん、足を痛めとるな? ちゃんと治さないと捻挫は癖になるぞ」


 何となく言い出しにくくて、足のことは後回しにしていたのです……。ソフィアさんとベックさんに、追加で叱られました。


 トーマスおじ様がペタンと貼ってくれた湿布は、冷たくて爽やかな匂いがしました。薬草の勉強……良いかも知れません。




   * * *



「乾燥してから粉にして、蜂蜜と練って飲み込める大きさに固めるとか、飴にするとか、どうでしょう?」


 トーマスおじ様は、継続して摂取することが大切と言っていました。味もそうですが、長く保管出来るよう加工が必要です。


「ええ……ええ! やってみましょう!」


 その後もソフィアさんと色々相談して、半分は保管用に粉末に。もう半分は、飴を作ることにしました。


 すり下ろした初雪ニンジンに、生姜をベースにしたスパイスをいくつか加え、水飴と蜂蜜を入れて練っていきます。


「生姜の代わりに、ハッカでもいいかも知れませんね」


「ああ、いいですね。ハッカ味も作りましょう!」


 そうして、出来上がった飴を味見します。


「うーん、ずいぶん食べやすくはなりましたけど、美味しくはないですね」


「そうですか? 私はけっこう好きですね。大人は好きな味です。きっとお嬢様も大人になればわかりますよ」


 大人になると味覚が変わるとは聞いたことがあります。でも、そんなに違うものですかね? こんな変な味が、好きになるの? 不思議です……。


 おばあ様も大人です……気に入ってくれると良いのですが……。


 おばあ様は、ベッドで起き上がって、ぼんやりと窓の外を眺めていました。横になると咳が出るので、起き上がっている方が楽みたいです。


「エルシャ、雪が降っているのね」


 声に力がありません。おばあ様には、わたしが遭難しかけたことは内緒にしてあります。心配は身体に毒なのです。


「はい。おばあ様、初雪ですよ。わたし、こんなに積もった雪を見たのは初めてです」


「ふふ。雪像作りやソリ遊び、冬のお楽しみもたくさんあるのよ」


「それは楽しみです」


「奥様、身体にいい飴をエルシャ様と作ったんです。咳にも効きますから、舐めてみませんか?」


「あら、素敵ね。もらうわ」


 おばあ様の枕元に、ガラスのケースに入れた初雪ニンジン飴をコトリと置いて、ひとつを取り出して手渡しました。


「ありがとう……あら、これ……もしかして、初雪ニンジンの飴?」


 においを嗅いでおばあ様が言いました。


「わかりますか? 食べやすいように、工夫したんですけど……」


「ずいぶん前に食べた時はすごい味で……。吐き出してしまったわ。でも、この飴は優しい味がするわね」


「本当ですか? 良かった! たくさん作りました。いっぱい舐めて、元気になって下さい」


「ありがとうエルシャ、ソフィア。私は幸せ者ね……。ああ、なんだか、ポカポカしてきたわ。よく眠れそう」


「奥様、少しお休みになりますか?」


「ええ、起きたらまた舐めるわ。虫歯にならないように気をつけないとね」


 おばあ様は宣言通りたくさん飴を舐めて、二日後の朝には熱が下がり、咳もだんだんと治まりました。


 まだまだ寒い日が続きます。わたしもニンジン飴を舐めて、風邪を引かないように気をつけて過ごします。



読んで頂き、ありがとうございます。

感想のお返事が滞ってしまって申し訳ないです。現在、少々差し迫っておりまして笑 作者いっぱいいっぱいです泣

あと少し……あと少しなんです! 頑張ります!

そんな作者を応援には、☆評価や電子書籍ポチッとするのが効きます。よろしくお願いしますね!

コレ、オワッタラ、オレ……スコシ、ノンビリシタイ……


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― 新着の感想 ―
よかった……コメント控えてたけど、もしエルシャがここまで苦労して持ち帰った初雪ニンジンを口にする前にお婆さんが亡くなっていた、なんて展開だったら間違いなくブクマ外してた。お婆さん長生きしてくれい。
エルシャは遭難したとき、足を怪我してませんでしたっけ 治療してる様子や大人たちが怪我に驚いているような描写が無かったと思うので気になりました 見落としだったら申し訳ありません
 初雪ニンジンの癖の強さに苦戦しながら、どうにか祖母のローザさんでも負担なく摂取して体調よくなるよう工夫し、飴などにかえて渡すエルシャちゃんの描写や、雪に関する遊びの話題を微笑ましそうに行う場面が素敵…
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