第14出撃 青森へ
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「うぁ〜、婆ちゃんもっとゆっくり走って!!」
「きゃあぁぁぁ~」
婆ちゃんの運転は想像の遥か上をいっていた。
暴走運転手とは婆ちゃんの事を言うのだと思うくらいだ。
「他の車がいないからスイスイ進めるの!!」
婆ちゃんはノリノリで運転している。
だが、確かに他の車は走っていない。
皆、何処かに避難しているのだろうか?
「よし、ここから高速にのって青森に行くじゃ」
この運転で高速道路を走るのか?
勘弁してくれと思うのは俺だけではないはずだ。
しかし、婆ちゃんしか運転出来ないのなら仕方ない……。
高速道路に入った瞬間、車はスピードを上げた。
俺はスピードメーターを確認してみると、時速180キロで走っていた。
(これ、軽自動車だぞ……軽で180キロって……)
アクセル全開で走り続ける車。
「よし、のってきたじゃ!! ミュージックオンじゃ!!」
婆ちゃんは車のカーナビを操作して音楽を流し始めた。
その音楽はいかにもスピードを出させるような感じの曲だった。
車は音楽にのるようにスピードを上げまくる。
もはや軽自動車のスピードではない。
「ちょっ、止めて〜」
晃子が車酔いを起こしている。
この運転では無理もない。
「婆ちゃん、晃子が」
「なんじゃ、情けないの……、なら近くのサービスエリアにでも止まるかの」
(なんでサービスエリアがある事知ってるんだ?)
暫くして車は無事にサービスエリアに辿り着いた。
「な……なんとか無事に着いた……」
「ほれ、少し休憩じゃ!! 青森まではまだまだかかるからの」
婆ちゃんの言葉はスルーして、俺は晃子を車から下ろし、ベンチに寝かせた。
「ありがと……」
「ああ、とりあえず休んでろ。俺は飲み物でも買ってくるからさ」
(普段は人でいっぱいのサービスエリアも人型いない……、アニマル帝国のせいで何処かに避難して引きこもっているんだ……)
俺はお茶と食べ物を持って晃子と婆ちゃんの所に戻った。
もちろん、お金は置いてきた。
「ほら、飲み物だ」
「ありがと……でも置いておいて……」
まだ動けそうもない。
「晃子ちゃんは車に弱いんじゃな……」
(いや、弱いとかそういうのじゃないと思う……)
しかしそれを口に出来ない。
この先もこの地獄のドライブが続くのか?
そう思うと憂鬱になる。
「なあ婆ちゃん、もっとゆっくり、安全運転で行こうよ」
「なんじゃ、世界の危機なんじゃから急ぐのは当たり前じゃろ」
それはそうなんだけど……。
でも、今のままじゃ、アニマル帝国と戦う前に婆ちゃんに殺されてしまう。
晃子もこんな感じになってるし……。
ドコォーン
「なんだ!!」
近くにで凄い音がした。
「まさかアニマル帝国のやつらか?」
辺りを見渡してみた。
すると、大きな猪みたいなロボが高速を破壊しながら走ってきていた。
「おっ、まだこんな所に人が残ってたのかヨ〜」
猪みたいなロボから猪顔の人が降りてきた。
いや、人なのか?
顔は猪で、身体は人間っぽい感じだが、少し違う気がする。
「おいおい、こんなオンボロ車に乗ってるのかヨ〜」
「なんじゃお主は!!」
「おやおや、オンボロ車の運転手はオイボレのババアがヨ〜」
「オイボレとはなんじゃ!!」
婆ちゃんが興奮している。
まぁ無理もない。
なんか喋り方もムカつくし。
「俺様は、アニマル帝国のスピードスター、韋駄天のボタン様ヨ〜、ババア、あんたにスピード勝負を申し込むヨ〜」
スピード勝負?
「俺様の愛車、猪丸と、ババアの車で勝負ヨ〜」
俺達がウサギロボのパイロットってのは分かっていないようだ。
「婆ちゃんどうする?」
「そんなのは決まっている。受けてたってやるじゃ!!」
婆ちゃんは気合い十分で受けてしまった。
「さっ、亮太、晃子ちゃん、車に乗るんじゃ」
「いや、晃子はまだ車酔いが……」
このまま車に乗ったら確実に婆ちゃんに殺される。
なんとかしなくては。
せめて晃子が回復するまでは時間を稼がないと。
「おい、ボタン!! 少し時間をくれないか?」
単刀直入にお願いしてみた。
「なんでだヨ〜、早くやろうぜスピード勝負をヨ〜」
「か弱い女の子が寝込んでるんだ、休ませてくれ」
晃子の身体が一番大事だから、素直に話して待ってもらうしかない。
もしダメなら、一人でもウサギロボを呼び出して倒すしかない。
「う〜、分かったヨ〜、1時間だけだヨ〜、それ以上は待てないヨ〜」
そう言って、ボタンはまた走り出して行った。
「ふ〜、なんとか時間は稼げたか……」
これで晃子が少しでも良くなってくれれば良いのだけど……。
「ありがと……、早く治す為に少し寝るね」
そう言って晃子は眠ってしまった。
婆ちゃんはやる気満々で車のガソリンを補給している。
セルフガソリンスタンドがあるサービスエリアだったが、正直、ないサービスエリアで良かったと思ったのは内緒だ。
それからあっと言う間に1時間が過ぎた。
晃子も目を覚まし体調も回復したようだ。
サービスエリアにあった、酔い止め薬を俺達は飲み、万全の態勢でボタンを待った。
「待たせたヨ〜」
ボタンが帰ってきた。
これから地獄のスピード勝負が始まるのだった。
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