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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
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83話【嫌悪の行方】



嫌悪(けんお)行方(ゆくえ)


 夕刻(ゆうこく)を過ぎた時間帯、再びセイドリック・シュダイハの調査(ちょうさ)をしていた【忍者】サクヤ。

 シュダイハ家の屋敷(やしき)から急ぎ帰ったサクヤは、真っ先に(あるじ)であるエドガーの部屋に突撃した。


主殿(あるじどの)ぉぉぉっ!大変ですっ!すぐに身支度(みじたく)を!」


 バンッッッ!!


「――うわっ!サ、サクヤ……!?」


 身体を休める為、転寝(うたたね)をしていたエドガーは、サクヤの大声で飛び起きた。

 今度は寝ていただけで良かったと、心の中で安心する。

 今日のエドガーは客観的(きゃっかんてき)に見ても、随分(ずいぶん)と動けるようになっていた。

 昼には無かったサクラとの契約の(あかし)である《紋章》が、(ひたい)に回復していた。


「――どうしたのっ!?サクヤ……すっごい汗だけど」


「わたしはいいのですっ……それよりも本当に身支度(みじたく)をしてください!城に(まい)りますぞ!!」


「し、城!?城って……【リフベイン城】に!?」


「そうそれ!それです!そう言っておりました……これから城に向かうと、花嫁をこの目で見ると!」


「――!……まさかそれって、エミリアの……」


「はいっ!エミリア殿の(おっと)となってしまう可能性がある男……です」


 随分(ずいぶん)(ふく)みを持たせた言い方をするサクヤ。

 しかしエドガーは、その言葉で背中に一気に汗が()き出るのを感じた。

 セイドリック・シュダイハが、エミリアと会うために王城へ向かうという事ならば、エミリアは。


「じゃあ……もしかしたらエミリアも?」


「恐らくは……しかしながら、兵を用意するとも言っていました、強引なことも考えられます……」


「――分かった。準備をしながらでもいいから、その時のことを聞かせてくれるかな。あと、ローザとサクラを呼ばないと……」


「それはわたしが……」


「頼むよ。サクヤ」


 エドガーは着替(きが)えを始める。時間はないのでコートを羽織(はお)るくらいだが。

 それでも、戦いがある可能性がある以上、装備は(ととの)えなければならない。

 サクヤは、自室で休んでいるであろうローザとサクラを【心通話】で呼びつけた後、エドガーに先ほどあったシュダイハ家での事柄(ことがら)を話し始めた。





 少し前。約束事などは特に取り付けてはいない。

 だが、一度入り込んだことで忍びやすくなっていた。


『……ルーリア。いないのか?』


 屋根裏(やねうら)部屋に侵入(しんにゅう)したサクヤは、この部屋の(ぬし)ルーリア・シュダイハをこっそり呼ぶが、姿は見えない。


気配(けはい)もないな……まあ当然か、約束したわけではないしな』


 (あた)りを見渡し、相変わらず(ほこり)だらけの室内に嫌な顔をするが。

 【赤い仮面】を取り出してそれを身に着ける。


『さてと……大将(たいしょう)何処(どこ)かな……』


 今回のターゲットであるセイドリック・シュダイハを大将(ボス)と定め、サクヤは屋敷(やしき)探索(たんさく)をする。無論、屋根裏(やねうら)を通って。


『ここは二階か……普通、大将(たいしょう)何処(どこ)に居るか……あからさまに変な趣味(しゅみ)をしているしな、簡単に見つかるだろう』


 楽観視(らっかんし)して、セイドリックの部屋を探し始める。




『ん……ここは……?」


 屋根裏(やねうら)に開く小さな穴から真下を(のぞ)くと、贅沢(ぜいたく)な扉が見えた。

 豪勢(ごうせい)に金銀があしらわれており、扉の(そば)には裸の少女像が置かれている。


『……反吐(へど)が出るな』


 ぼそりと(つぶや)いて、サクヤは屋根裏(やねうら)から飛び降りた。

 誰もいない事を確認して扉に耳を当てる。

 ――すると。


『……父上、これはどうしますか……?』

『ん?なんだ?……それは』

『先ほど城から届いたのですよ……第三王女の(いん)も押してあります』

『……中身は、確認したのか?』

『ええ。まぁ……エミリア・ロヴァルトが登城するらしいですね』

『ロヴァルト……ああ。お前の嫁になる娘か……』

『そうですよ、父上』

『確か、騎士学生だったな……しかし、ロヴァルト伯の娘か……』


 ぺらりと紙を(めく)る音が、サクヤの耳にも聞こえた。


『王城の西に兵を多数用意してある。そなたの嫁になる者を見ておいてはいかがかな、セイドリック殿(ごの)みの美女であるとの事、会っておいて損はないと思うが……自分の婚約者に会っておけ、という事でしょうね。この内容的には』

『……行くのか?』

『ええ。そのつもりですよ……ふふふ。美女と言われれば、父上だって興味(きょうみ)はあるでしょう?」

『……ぐふふ、確かに』


⦅確かに。では無いっ!そもそも、一国の姫がそのようなことを言うかを(あや)しめっ!!⦆


 サクヤは、声が出そうなほど阿呆(あほう)な会話にツッコミを入れつつ、耳を()ませる。


『兵を用意してある……という事は、エミリア・ロヴァルトが城に向かうのを邪魔をしろってことでしょう?つまり、そのまま連れて……いえ、お(まね)きしても……?』

『うむ。いいだろう。どうせ嫁に来るのだ、数日早かろうが、別段文句(もんく)は出まいよ』

『ですよね♪……それにしても、王女殿下(でんか)はロヴァルト家の人間がさぞかしお嫌いなのですかね?』

『さてな……(おおやけ)の公務はなされていないお方だ。実際、ワシも会ったことはないからなぁ』


『……』


 とうとう言葉まで出なくなり。

 ここから去りたい気分に(さいな)まれるサクヤ。


『こ、こ奴らの阿呆(あほう)のせいで、あと数日あるはずの期限が(せば)まるぞ!?』


 もしもセイドリックがエミリアを気に入り、そのまま屋敷(やしき)に持ち帰ろうとすれば、この二日も、残りの日数も何の意味もなくなってしまう。


『では、父上。私兵を貸してもらってもいいですか?』

『ん……?構わんが、今すぐ用意できるのは五十くらいだぞ……?』

『十分ですよ。城からも兵が出ているのでしょう?……これだけいれば、小娘の一人くらい簡単ですよ。いくら相手の爵位(しゃくい)が上でも……ね』


『……これは……まずいか?』


 セイドリックはエミリアを連れて行く気満々だ。

 これでは七日あった筈の期日は効力を失ってしまう。


『と、とにかく……主殿(あるじどの)に知らせねばっ』


『エミリア・ロヴァルト……僕(ごの)みの美女、か……ぐふふ。きっとこの像のように綺麗なのだろうなァ』

『……ワシはボンキュッボンがいいのう……』

『はっはっはっ。駄目ですよ父上、少女は僕の為に存在しているのですから』


 部屋の中からカタンと何かを置く音が聞こえ、サクヤは嫌な予感に、首をギギギっと横に(かたむ)ける。そこには、少女の裸婦像(らふぞう)が置かれていた。


『……ま、まさか』


 その少女の像は、どう見ても幼い少女だった。

 この像がエミリアに見えてしまうくらい、部屋の中の阿呆(あほう)の会話は決定的であった。




 サクヤは、無意識のうちに屋敷(やしき)を抜け出していた。

 途中(とちゅう)屋根裏(やねうら)でルーリアらしき人物に声を掛けられた気もしたが、早く行動に移さなければと相手にしなかった。


 何よりも、先行してエミリアと合流をしなければならない。

 その為にはエドガーを、ローザとサクラを連れなければ、エミリアの貞操(ていそう)(あや)ういと、サクヤの警報(けいほう)が鳴る。


『くそっ……一対一ならば何とでもなるが……!五十人は流石(さすが)に……』


 サクヤは自分の強さを、個人技での戦闘ならば優位であると認識(にんしき)している。

 しかし複数、それもかなりの人数になると別だ。【魔眼】で動きを止められるのは自分の範囲(はんい)の精々数人。

 話に聞いた五十人など、到底(とうてい)相手にできない。


『魔力?が万全であれば、忍術次第でどうにでもなるが……わたしもローザ殿の事を言えないくらいには、疲労がたまっている……――むっ!……あれは、エミリア殿……!?」


 現在、サクヤは【貴族街第四区画(サファラス)】を抜けて、【貴族街第一区画(リ・パール)】まで来ていた。

 偶然(ぐうぜん)にもロヴァルト家の屋敷(やしき)を通りかかり、馬車に乗り込むエミリアとアルベールを目撃する。


『おーいっ!エミ――っ!!――あぶっ!』


 声を掛けられれば簡単だったが、(むか)え(オーデインとノエルディア)が居た為、(あわ)てて口を(ふさ)ぎ、断念(だんねん)せざるを()なかった。


『ちっ、ならば……急がねば!』


 サクヤは急ぎ、【下町第一区画(アビン)】へと向かった。



「……と、言う訳でした」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!な……何それ!キモイキモイキモイキモイィィィィっ!!」


 自身の身体を(さす)り、鳥肌を(おさ)めようとするサクラ。

 サクヤが話しているうちに、サクラとローザもエドガーの部屋に来ていた。


「王室の事情(じじょう)も知らない貴族がいるとはね……どこまでも快楽街(かいらくがい)にご執着(しゅうちゃく)なわけね……」


 ローザも、(あき)れているのか怒っているのか、少し顔を暗くしていた。


「……準備は出来た。行こう」


 エドガーは静かにそう言い、(さや)に入れた赤い剣の()(にぎ)る。

 まだ全回復ではない魔力を(おさ)えつつも、しっかりとした(つく)りの剣だ。


(あ、主殿(あるじどの)……怒っているよな……?)

(そりゃあそうでしょ……エミリアちゃんがそんな男に取られたら……って言い方は変か……)

(とにかく急ぐわよ……計算上、恐らくは王城の近くで鉢合(はちあ)わせするはずだわ、その前にエミリアの乗った馬車を止められればベストだけれど……間に合うかしら)


 サクヤがサクラに寄り()い、小声で話す。

 すぐ後ろからローザも混ざり、二人に(つた)える。


「行くよっ……三人とも」


「う、うん!」

「……承知(しょうち)です!」

「……ええ」


 そうして、【福音のマリス】一行は出撃した。

 夜になる聖王国で、一人の少女の運命は転がり始めていく。


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