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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 3章《聖槍、天高く》
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123話【素材】



素材(そざい)


 光が治まると、【クリエイションユニット】は(けむり)を放って、ブシューっと音を立てた。

 汗をかくメルティナは、腕で(ひたい)(ぬぐ)いながら。


「これでは、せっかくマスターに()いていただいたのに、またお願いしなければいけません」


「あ、あはは……《石》を外す時に、また()いてあげるよ」


 少し()れながら、エドガーは言う。


「――ワタシの裸を思い出しましたね?」


「ぶっ――な、何を……!」


「ふふっ……冗談です。マスター」


 その笑顔は、実に晴れ晴れしたもののように見えた。

 何の後悔(こうかい)も無く、メルティナは【クリエイションユニット】を使用して、元の世界の自分のボディを素材へと変えた。

 その結果、完成したものが。


「――完成しました。マスター……どうぞ、これを」


 メルティナは【クリエイションユニット】を連結解除する。

 4機のリング状に戻ったユニットは、メルティナがベッドの横に丁寧(ていねい)に戻していた。

 まだ軽く熱を持つその四角いものを、エドガーは受け取る。


「……これは、金属の……(かたまり)……だよね?」


「イエス。言わば……【アルヴァリウム・インゴット】と言った所でしょうか」


 綺麗(きれい)な、銀色の鋳塊(ちゅうかい)

 (シルバー)と色味だけは似ているが、まったくの別物。


「……もしかして、メルティナはこれを……」


 エドガーが(ほっ)していたもの。

 槍の“召喚”の為、中心となる素材。

 いくら探しても見つからなかったもの――金属。


「ワタシは、しばらく役に立つ事が出来なくなるかも知れません。ならば、今できる事をしたまでです」


 《石》を外すという事は、能力を手放すと同義。その前に、メルティナはやれる事をしたかった。

 役に立つという事を、エドガーに(しめ)しておきたかったのだ。


「それで金属塊(これ)を……」


 正直言って、大助かりだ。

 ローザと二人で散々探した“魔道具”の中に、金属は無かった。

 その問題が、これで解決できるの。

 しかもこの【アルヴァリウム・インゴット】には、《石》を通じて魔力が宿(やど)っている。


「……この施設(しせつ)に金属がない事は。以前、備蓄整理(びちくせいり)をした時に記録しています。ですので、マスターが探しているのはこの種類なのではないかと」


「……お、おっしゃる通りで」


 真顔で言われて、エドガーは反論する気も起きなかった。

 その金属塊(きんぞくかい)をテーブルの上に置き、エドガーは両手を見る。


「……魔力が、まとわりついてる……」


「イエス。【アルヴァリウム】は少量ですが、魔力を(ふく)んだ魔鉱(まこう)金属です。ですので、人間が持つ常用金属以上に……軽いでしょう?」


「あ。確かに!すっごい軽いよっ!!」


 もう一度持ち直して、ひょいひょいと何度も上下させるエドガー。

 新しい知識(ちしき)()て嬉しそうにする、その少年(ぜん)とする姿にメルティナは。


「――フフフ。良かったです……マスターのお役に立てて」


 (ひか)えめに言うメルティナに、エドガーは心底嬉しそうに。


「――それだけじゃないよっ!」


「……そ、そうですか?」


 そう言うメルティナだが、言われなくとも本当は知っているし、エドガーが槍の素材を求めていると想定(そうてい)すれば、この宿の備蓄(びちく)を知っているメルティナからすれば、(おの)ずと金属が必要だと分かる。


「そうだよ!!」


 興奮(こうふん)気味に、メルティナがしてくれた貢献(こうけん)(たた)える。


「今日一日、何処(どこ)を探しても見つからなかったんだ……だから、凄くありがたいし凄く助かる!それに――これで……エミリアの為に、槍を“召喚”できる……!!」


 魔力を宿した金属。

 それはとても貴重であり、今までも【福音のマリス】には無かった素材だ。

 少なくとも、エドガーにはその価値(かち)が分かる。

 今メルティナが言ったように、魔力を()び、更に軽い。

 エドガーは軽く持ち上げているが、鋳塊(ちゅうかい)というものは重い。

 ましてや、魔力を持つ特殊(とくしゅ)金属だ。


「金属鉱石は、今まで何度か見たことがあるけどさ。魔力を持つ金属は貴重なんだよ、この国で使われている剣や槍は、なんていうかその……粗末(そまつ)だからさ。だからそれだけに、何度も何度も“召喚”を試して、槍の刃や()を選別していくって言う手間が(はぶ)けるでしょ?だから、このインゴットがあればその手間が(はぶ)けるんだ!しかも、これだけ良質(りょうしつ)な金属があれば――」


 少し言いにくそうにするあたり、配慮(はいりょ)なのだろうが。いったい誰に対して?

 いやしかし止まらない。エドガーの饒舌(じょうぜつ)が。

 流石(さすが)にメルティナが止めに入り。


「――マ、マスター。落ち着いてください」


 特に、今は。


「あ……ご、ごめん。つい……」


 嬉しくてはしゃぐ。そして()ぐへこむ。シュン――と。


(か……かわいい)


 ポっと顔を赤らめて、メルティナはベッドに座り直す。

 そしてエドガーも、言われた事を落ち着いて()み込んで。


「そうだよね……こんな遅い時間に言う事でもなかった。あはは……」


 そう言えばそう。今はもう深夜前だ。

 しかも今は宿泊客もいるのだ。自重(じちょう)しなければ客が離れてしまう。




 オタク状態のエドガーが冷静(れいせい)を取り戻し、汗をかいたメルティナの背を再び()いていた。


「お湯が(ぬる)くなって申し訳ないけど……」


「ノー。丁度(ちょうど)いいです。それと……」


「――ん?」


 メルティナは視線(しせん)だけをエドガーに向け。


「……少し、(あやま)り過ぎではありませんか?」


「……」


 エドガーはキョトンとしていた。

 しかし、その後すぐに笑顔になりメルティナは。


「ど、どうして笑うのですか?」


 理解出来ない。

 少しばかり、(マスター)の性格が心配になった。


 そんな心配そうなメルティナにエドガーは。


「あはは……そんな目で見ないでよ。ちょっと前(・・・・・)の事を思い出しただけだ時からさ」


「前の事?」


「うん」


 エドガーは()き終わったタオルを(おけ)(ふち)にかけ続ける。


「以前……ローザに似たようなことを言われたんだ。『(くせ)(あやま)るってあんまり良くないと思うわよ。それよりだったらありがとうって言われたいわね』――ってさ」


 笑顔で、(なつ)かしむように。

 それだけで。


(あ……もしかして……)


 それだけで、ローザに言われた言葉だと(さっ)して、メルティナは胸を押えた。

 しかし(かぶり)を振るい。


「もしかして、ローザにですか?」


 笑顔で、気にしない素振(そぶ)りを見せながら。

 メルティナは思う。

 エドガーの中に、自分が残した言葉はあるのだろうか――と。


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