表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 2章《天使奔走》
295/383

64話【小さな祭り】



◇小さな祭り◇


 ローザとエミリアの二人は、午から後も汗を流した。

 何度も訓練用(くんれんよう)木剣(ぼっけん)木槍(きやり)を合わせて、ローザが満足するまでエミリアは付き合った。

 風が()(さら)して汗を(かわ)かすが、もう相当な不快感(ふかいかん)だった。


「ふぅ。そろそろ終わりかしらね……」


「だねぇ……はぁ、はぁ。疲れたー」


 エミリアは盛大(せいだい)に大の字に寝転んで、体力の限界(げんかい)だと声を上げた。

 ローザもまた、(ひざ)に手を置いて息を(あら)くしていた。


(……《石》の力が無いと、私もこの程度か……)


 体力だけで言えば、ローザは完全にエミリアに負けていた。

 今寝転んでいないのは、ローザのプライドあってのものだろう。

 しかし実際(じっさい)、ローザは《石》による能力の向上(こうじょう)が無ければ、戦闘力は大幅(おおはば)に、いやそれ以上に減少(げんしょう)する。

 それは自分でも理解している。だからこそ、どうにか出来ないかと考え、こうして前時代の修行(しゅぎょう)のようなことをしているのだ。


「少し休んだら、今日は帰ろうね」


「……そうね」


 大の字から回復したエミリアは、ストレッチで身体を(ほぐ)している。

 ローザは絶賛(ぜっさん)動きたくない状態だった。


(加護(かご)がない状態(じょうたい)で戦えば、私は一番戦えないかもしれない……)


 その思いは、“異世界人の中では”と言う意味合いだが。

 エミリアを見るローザの視線(しせん)からも、エミリアや他の現地民(げんちみん)意識(いしき)している事が分かった。


 サクヤには、【忍者】としての才と長年(つちか)ってきた修練(しゅうれん)が。

 サクラには、《石》以外のギフトがある。

 メルティナも、機械という専用(せんよう)の装備があり。

 フィルヴィーネに(いた)っては、存在そのものが異端(いたん)だ。


 ならば自分にあるものは?幼少期(ようしょうき)から《石》の力で戦ってきたその実力は本物だ。

 しかし、それ以外は?

 剣は《石》の《魔法》による具現(ぐげん)であり、自分のものではない。

 その業火(ごうか)だってそう、全ては《石》、ローザは【消えない種火】で成り立っている。

 それが今、悩ましい程に痛感(つうかん)している。

 ローザはポケットに入れてある《石》をそっと(つか)んだ。

 熱を感じない《石》は、(いま)全快(ぜんかい)ではない。

 フィルヴィーネによる魔力の譲渡(じょうと)で、ローザ自身の魔力は回復した。

 しかし、それでは戦えない。

 いざという時に何も出来ないかもしれないと言う未来(みらい)が、これほど怖いと思うなど、以前は考えた事も無かったと言うのに。





 ストレッチを終えて、二人はミッシェイラ家の敷地(しきち)を出ようとした。

 そこに。


「エミリア君」


「……ミ、ミッシェイラ公!」


 どこからか戻って来たのか、正装をしたギランツ・ミッシェイラ公爵と相対(あいたい)した。


「帰りかね?」


「はいっ。今日もありがとうございました!」


「ははは、存分(ぞんぶん)に使ってくれて構わないよ。今は、誰も使う者がいないからね」


 ギランツは自嘲気味(じちょうぎみ)に言う。

 以前は、息子であるコランディルが使っていたのだろう。

 しかし今、彼は収監中(しゅうかんちゅう)の身だ。


「……あ~、は、はは……」


 エミリアは、どう言ったらいいのか分からずに目線(めせん)をローザに送った。

 ローザは「私を見ないで」と視線(しせん)()らす。


「いやなに。すまんね……そんなつもりはなかったのだが。実は今も、城に面会(めんかい)に行っていたのだよ」


「……そうなのですか?」


「ああ。【収監所(ゴウン)】から移動になった囚人(しゅうじん)たちは、全員が城の独房(どくぼう)に入れられているからな」


 収監所(しゅうかんじょ)は、以前ローザ達が【大骨蜥蜴スカル・タイラント・リザード】と戦った場所だ。

 侵入者(しんにゅうしゃ)によってかき回され一度は混乱(こんらん)したが、何故(なぜ)か大きな(さわ)ぎにはならなかった。

 同じく、【石魔獣(ガリュグス)】が現れた区画(くかく)も混乱したのだが、しかしそれも同じく、()ぐに鎮静化(ちんせいか)してしまい、誰もが話題(わだい)にすらしない。


(それなのに……収監者(しゅうかんしゃ)たちは移動させられたまま。どうして誰も気に()めないのかしら)


 ローザは当然のように疑問(ぎもん)に思えるが、エミリアもこのギランツと言う男も、疑問(ひもん)には思っていない様に感じ取れた。


「所で……」


 ギランツが、エミリアの後ろにいたローザに視線(しせん)を送る。

 「あ!」と、エミリアもローザを紹介しないのも変だと気付いて。


「すみません公爵……こちら、私と一緒に訓練場(くんれんじょう)を使わせていただいている」


 エミリアがサッ――と手をローザに向けると、仕方がなさそうに一歩前に出るローザ。


「初めまして、公爵閣下(かっか)……私はローザ・シャルと(もう)します。以後、お見知りおきを」


「ああ、君がそうか……」


 納得(なっとく)する様子で、ギランツは顎先(あごさき)に指を持っていった。

 ローザが、ローマリアの指南役(しなんやく)だと言うのを知っていたのだろう。


「ローマリア殿下(でんか)が世話になっているようだ……感謝する」


「いいえ。大層(たいそう)な事はしておりませんわ……逆に私が助けられております」


「ははは、そう言っていただけると……殿下(でんか)もお喜びになるだろう。君がこの場所を使ってくれると言うのなら、今後も活用(かつよう)するといい。許可もわざわざ取らなくてもかまわないよ」


「え!いいんですか!?」


 エミリアがその待遇(たいぐう)(おどろ)く。


「ああ。好きにしたまえ……それでは、私は屋敷(やしき)に戻るよ」


「ええ、感謝致しますわ、閣下(かっか)

「ありがとうございます!失礼いたします、ミッシェイラ公」


 二人は頭を下げ、ギランツを見送った。

 そして、エミリアが。


「ローザ……あんな話し方出来るんだね」


馬鹿(ばか)にしているの?」


「えへへ、そういう訳じゃないけどね」


 何故(なぜ)か嬉しそうに、エミリアは言う。


「ローザって、エド以外の男の人には結構(きび)しいって感じじゃない?だから嬉しいんだ……」


「……なんでよ」


(やわ)らかくなったって言うか、(とげ)が抜けた?って感じで、(せっ)しやすいと思うよ」


「私だって、分別(ぶんべつ)くらいつくわよ……誰にでも()みつく訳じゃないわ」


 「ほら行くわよっ」と、ローザはほんの少し照れたように門へ向かった。

 《石》を身に付けていない為、(ほほ)に赤がさしたら一瞬で丸分かりだっただろう。


「あははっ。待ってよもぉ~」


 エミリアさらに嬉しそうに、ローザを追いかけたのだった。





 二人は【貴族街第三区画(ガーネ)】を抜けて【貴族街第二区画(ダイディア)】へ来ている。

 訓練(くんれん)を終え、そのまま城がある【王城区(ブリリアント)】に戻らず、寄り道をしていた。


「いい(かお)りね」


「だ、だね~……お腹減るよ」


 今日は、ここ【貴族街第二区画(ダイディア)】で小さな祭りがあるのだと言う。

 屋台(やたい)(かお)りに(さそ)われて、ローザが思うままに辿(たど)り着いたのだ。

 (さいわ)い、今のローザには収入(しゅうにゅう)がある。

 ローマリア王女に指南(しなん)した分のお給金(きゅうきん)だ、立派(りっぱ)な仕事だと言えよう。


「これは、何のお祭りなの?」


「――え?これは豊穣(ほうじょう)のお祭りだよ。もうすぐ夏で、【パイル】の収穫(しゅうかく)だから」


「【パイル】?」


「うん、あれだね」


 エミリアがあれ(・・)と手を向けたのは、果物(くだもの)屋台(やたい)だった。

 大きな実に長い葉、(とげ)の生えた皮があって、見た目は(あま)り美味しそうではない。

 しかし、屋台(やたい)の男性が切るその実は、果汁(かじゅう)(あふ)れて芳醇(ほうじゅん)(かお)りを(かも)し出していた。

 輪切りにしたその実を、(くし)に刺して売っている。

 子供たちが銅貨(どうか)(はら)って買っていて、黄色い果肉がとても美味しそうだ。


豊穣(ほうじゅん)の祭りなのに、もう収穫(しゅうかく)しているの?」


「ううん。あれは昨年度(さくねんど)のだよ、年に二回収穫(しゅうかく)できるんだけど、今売っているものは去年(きょねん)の冬のだね」


 ローザは「へぇ」と言いながら、自然と屋台(やたい)に足を向けていた。

 食べる気満々だ。


「おじさん、その……」


 なんだっけ?とエミリアを見る。


「【パイル】だね」


「【パイル】を二串(ふたくし)


 キチンとエミリアの分も頼んで。


「あいよ。銅貨(どうか)二枚ね」


 ローザは赤い鳥が刺繡(ししゅう)された財布(さいふ)から銅貨(どうか)を二枚渡し、(くし)に刺さった【パイル】を口に運んだ。


「……おいしっ」


「でしょ~?」


 程よい酸味(さんみ)と甘みが口に広がり、ローザは無意識(むいしき)に感想を口にしていた。

 エミリアもその果物(くだもの)を食べながら、二人でほのぼのと祭りを楽しんでいた。

 しかし、その二人の背後から、唐突(とうとつ)に掛けられる声があった。


「――お姉さま(・・・・)


「「――!!」」


 バッ――と振り向くその先には、【リフベイン聖王国】第二王女スィーティア・リィル・リフベインがいた。

 何千年もの(あいだ)、何度も何度も転生し続けて来たローザの妹、ライカーナ・シエル・ブラストリアが立っていて。

 不敵(ふてき)な笑みを浮かべながら、ローザに声を掛けて来たのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ