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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第2部【動乱】篇 2章《天使奔走》
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48話【新皇帝の一手】



新皇帝(しんこうてい)の一手◇


 パラパラと雨が降り始めた帝国の空を見上げる、一人の少女。

 (いま)だ慣れない真新しい軍服(ぐんぷく)に身を包み、腰には剣が帯刀(たいとう)されている。

 そわそわと誰かを待っているようで、手には何かの(かぎ)(にぎ)られていた。





 私の名前は、ノーマ・グレスト。

 (ほまれ)ある【魔導帝国レダニエス】の騎士よ。


 今私は、ある男を待っているんだけど、そいつがなかなか来ない。

 そりゃあイライラすると言うものよ。

 だって、もう半時(はんとき)(30分)以上よ?

 夏が近づいて来て、この恰好(かっこう)だってしんどいって言うのにさ。

 まぁ、以前までの鎧兜(よろいかぶと)よりは(はる)かにマシだけどね。


 この黒い軍服は新品で、(おろ)したての革の(にお)いが、独特(どくとく)威圧感(いあつかん)を出していた。

 だって数日前まで、私達帝国の騎士は鎧を着ていたのだ。

 新しい皇帝(こうてい)、ラインハルト陛下へいかの発言一つで、重武装が免除(めんじょ)されて、この恰好(かっこう)(いた)る。


 “魔道具”【黒銀(くろがね)のコート】。

 帝国南部の森に生息する、(かた)皮膚(ひふ)を持った狼から取れた毛皮を利用して作られた一品であり、魔力を()って()り込んだ装備だ。

 その防御力もさることながら、魔力が()り込まれている事で、装備者の魔力を底上げしているというもので、(おどろ)くことにラインハルト陛下(へいか)は、騎士達全員分を用意していた。

 防御力は(よろい)以上、魔力も底上げしてくれるとなっては、分厚く重い(よろい)を着込む理由なんてなくなる。


「ラインハルト陛下(へいか)さまさまよね~」


 【魔導車(まどうしゃ)】のドアに背を(あず)けて、私は相方である男を待つ。

 ホントに遅い、抗議(こうぎ)してやるわ。と、そんなことを考えていたら。


「――わりぃわりぃ!遅れちまったわ」


 やっと来た男は、悪びれもなくへらへらして私の隣まで来る。


「へへ……わりぃって言ってんじゃんか、そう怒んなって」


 私の顔を見て、すぐに怒っていると判断したのか、この男、バルク・チューニはへらへらしながら謝罪(しゃざい)する。

 糸目なので余計(よけい)ににやついて見えるのが、また腹が立つ。


「バルク……あんた何やってんのよ!皇子(おうじ)……じゃなかった、皇帝陛下(こうていへいか)に言われたでしょ!?私達これから、エリウス殿下(でんか)迎えに(・・・)行くのよ!?」


 そう、私達に与えられた任務(にんむ)勅命(ちょくめい)だ。

 ラインハルト新皇帝(しんこうてい)は、即位(そくい)して()ぐに、帝国騎士団の解体(かいたい)宣言(せんげん)した。

 そしてなんと、翌日()ぐに、新しい騎士団が設立(せつりつ)されたの。


 その名も、【黒銀翼(こくぎんよく)騎士団】。

 その名の通り、黒銀(くろがね)の翼をあしらった装備一式を身に(まと)い、帝国を守る(きば)となる事を目的とした騎士だ。


 創設(そうせつ)間もないにも(かかわ)らず、ラインハルト陛下(へいか)は私達【黒銀翼(こくぎんよく)騎士団】に命令を下さった。

 それが、皇女(こうじょ)エリウス様をお迎えする事だった。


 しかし、何故(なぜ)私達に?という事だけど。

 それは、実は単なる人手不足だったりする。


「分かってんよ、しゃーねぇだろ?隊長(・・)がいねーんだから!」


 そう、隊長。前の騎士団の隊長である、カルスト・レヴァンシークさんがいない状態で騎士団が解体(かいたい)されて、そのまま【黒銀翼(こくぎんよく)騎士団】が設立(せつりつ)された訳だけど、隊長の信望(しんぼう)は厚かったから、(したが)わない人も結構な数いたの。

 だから今は、私達みたいな若い人材しかいないのよ。


「それはそうだけど!半時(はんとき)(30分)も待たせるとか、馬鹿(ばか)じゃん!!」


 私は持っていた【魔導車(まどうしゃ)】の(かぎ)をバルクに投げつけて、助手席に乗り込む。


「うへー、こっわ」


 バルクも(おび)えるフリをしながら、運転席に乗り込んできた。

 後部の座席には、(すで)に数人が待機している。

 そんな【魔導車(まどうしゃ)】が、計十台だ。

 総勢(そうぜい)80名が、エリウス殿下(でんか)お迎え作戦のメンバーだ。


「うっし!発進すんぞー」


「うっさい!早くしろ!」


「ホントだよ」

「おせーよ」

「糸目の馬鹿(ばか)


 部下達(・・・)は、口々にバルクに暴言(ぼうげん)を叩きつける。

 そう。何せこの、遅れてきて好き放題言われる男、バルク・チューニこそが、この部隊の隊長なのだ。





「お、雨降って来たな……」


 【魔導車(まどうしゃ)】を発進させて三時(さんとき)(3時間)、フロントガラスにぽつぽつと、雨がぶつかるようになって来た。

 車内で、男達が会話をしている。


「マズイな。雨が降ってくれば、道が(ととの)ってないから【魔導車(まどうしゃ)】を走らせられんぞ?」


「いや、それは馬車も同じだろ?スピードはこっちが上なんだし、多少落としても追いつけんだろ」


「第一、殿下(でんか)攫われた(・・・・)と言っても、馬車とは(かぎ)んないんじゃないか?」


「いや、異世界人ってやつが二人ほど宿で目撃されてる。なんでも“天使”様らしいぞ?そいつらがエリウス殿下(でんか)らしき人物を連れて馬車に乗り込むのが、バッチリ監視(かんし)“魔道具”に(うつ)ってる。商人の荷馬車(にばしゃ)だ、かなり小さいから見逃すなよ?」


 後ろの席から、運転をしているバルクに次々と話しかける男達。


「わーってるよ。つか運転してる俺に言うなよ!隣で眠りこけてる副隊長(・・・)に言えや!!」


「……すこー、すこー」


「だってノーマちゃん気持ちよさそうに寝てるし……なぁ?」

「だな。だからお前に言うのは当たり前だろーが!」

「その通りだ!きりきり働け馬鹿(ばか)隊長!」


「――んだよお前らー!俺隊長だぞ!泣くぞしまいにゃ!!」


 三人の部下に次々に言われて、バルクはアクセルを()む。

 魔導機関(まどうきかん)に魔力を注ぎ、エンジン全開だ。

 眠っているノーマに腹が立ちつつも、バルクは素直に(したが)うのだった。部下の言葉に。





 【帝都(ていと)ガリュガンツォ】、【レダニエス城】謁見(えっけん)の間。


 新たな衣装(いしょう)(そで)を通し、新皇帝(しんこうてい)ラインハルトは、(ひじ)をついてため息を落とした。

 そんな姿を見守るのは、一人の老人。

 名をボーツ・オル・マドローと言う。この男は大臣(だいじん)の一人で、初めからラインハルト派だった人物だ。


「お疲れですな、陛下(へいか)……」


「ボーツよ、どうしてこの国の騎士達は、いつの間にこんなに腑抜(ふぬ)けになっていたのだ……」


 ラインハルトは呆然(ぼうぜん)としていた。

 帝国騎士団を解体し、新しい騎士団を設立(せつりつ)したが、解体に納得(なっとく)がいかない騎士が(こぞ)って()めていった。

 その数、なんと数百。その全てが、前隊長であるカルスト・レヴァンシークを(した)っていたのだ。

 ラインハルトも、これには想定外(そうていがい)だった。

 ()めていった騎士の大半が、隊長クラスの指揮(しき)()れる人物だった。

 残ったのは、新兵だった若い騎士達ばかり。


 それでも、実力者は大勢いる。

 隊長に任命(にんめい)したバルク・チューニもその一人であり、素行面(そこうめん)はともかく、魔力量は尋常(じんじょう)では無かった。

 副隊長のノーマ・グレストも、何故(なぜ)かかなりの人物に(した)われていて、事実上の隊長は彼女とも言える。

 それ以外も、実力者は大勢いる。しかしその大半が、十代の少年少女であるという事だ。


 ラインハルト自身、(いま)だ十代の若輩(じゃくはい)だと認識(にんしき)している。

 しかし、その野望(やぼう)は大きく(はか)り知れない。

 十代が多いのはいい。若い力が集まれば、それこそ老害(ろうがい)として(はい)した前皇帝(ぜんこうてい)の理念とは相反(あいはん)する未来が見える。


 しかし、指揮(しき)指導(しどう)を出来る者がいない。

 それは、育成が進まないという事でもあった。


「隊長に()えたバルク……あいつは天才だ。しかし、どうも阿呆(あほう)だ……それに副隊長のノーマ、やる気があるのはいい。だが、阿呆(あほう)だ……」


「ふむ、確かに困りものですな……」


 頭を(かか)えたくなった。

 これなら【魔女】に洗脳(せんのう)してもらった方が、まだ役に立つと言うもの。

 しかし。


(いや……それではダメだな。それでは、いざという時(・・・・・・)に役に立たない。俺が求めるのは、国として覇者(はしゃ)に成る事だ……(ひと)りよがりで世界を(せい)したところで、それでは老害(ちち)と同じ……愚者(ぐしゃ)だ)


 ラインハルトは立ち上がり、玉座を後にする。


「騎士達のもとに向かわれるのですか……?」


「ああ。数人は残っているだろう、指導者(しどうしゃ)が出来るものが……」


 少なかろうが、指導者(しどうしゃ)は必要だ。

 一気に若返りを果たした騎士団を、真の意味でまとめてくれる人物が。

 カルスト・レヴァンシークが相応(ふさわ)しいのは分かる。だが彼は、エリウスの部下であり、エリウスの信者(しんじゃ)だ。

 きっとあの放送も、どこかで聞いていたはずだ。

 ならば、カルスト・レヴァンシークが向かう先は二択(にたく)

 逃げたエリウスのもとか。騎士隊長として(おのれ)の責務のある、ここ帝都かだ。


もう一つ(・・・・)の騎士団も決めねばなるまい。帝国を守る……牙をな」


「はっ……陛下(へいか)。残っている者を招集(しょうしゅう)いたします」


 ラインハルトの言葉に、ボーツ大臣は一礼をし別方向へ向かう。騎士の選別に行ったのだろう。

 【魔導皇帝(まどうこうてい)】ラインハルトの見る未来は、覇道か王道か。

 しかしその先に、【召喚師】との邂逅(かいこう)がある事を、【召喚師】は知らない。


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