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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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187話【その魔眼、危険につき】



◇その魔眼、危険につき◇


 フィルヴィーネの部屋で、エドガーとサクヤは正座させられていた。


「なんであたし(・・・)まで……」


 一階の休憩所で一人、明日以降の作業をしていたサクラは、急に講座(こうざ)を開くとしてフィルヴィーネに呼ばれ、共に正座している。

 正直よく分からないままのサクラは、小声で隣のサクヤに言う。


「ねぇ、あたしやる事あるんだけど……」


 綺麗(きれい)に背筋を伸ばして、正座に()れているらしいサクヤは。


「わたしに言われてもだなぁ」


「――そこっ!私語は(つつし)むがいい!」


「「――す、すみません!」」


 フィルヴィーネは、サクラに(かばん)から取り出させた眼鏡(めがね)を掛けている。髪もアップにして、スクエアフレームメガネを掛けて、わざわざ魔力でスーツの様な服装に着替えてもいた。俗に言う、女教師スタイル。

 何故(なぜ)そこまでするのだろうか。というか何処情報(どこじょうほう)だろう。

 まぁ、十中八九サクラだ。


 しかし、そんな女教師フィルヴィーネの行動が何なのだろうかと、エドガーは読めない。

 サクヤとサクラの二人も分からないだろう。

 リザだけが知っている。答えは簡単。

 “魔王”様が退屈(たいくつ)だからだ。


「クックック……では始めるぞ?まず……サクヤよ、もう一つ(・・・・)の【魔眼()】はどうした?」


 まどろっこしい事を嫌うのか、フィルヴィーネはいきなり核心(かくしん)に触れるタイプだったらしい。


「「……」」


「――は?」


 フィルヴィーネの言葉に全員が沈黙(ちんもく)

 ()頓狂(とんきょう)な声を上げたのは、言われた本人サクヤだった。


「覚えもないのか。困ったものだ……その【魔眼()】……【メデューサ・アイ】であろう?」


「【メデューサ・アイ】?」

「メデューサって……魔物の?」


 順にエドガー、サクラが言う。


「そうだ。石化の(のろ)いを持つ、黒い眼光(がんこう)の魔物……何故(なぜ)片方しか無いのだ。それは本来二つで一つ、一つでもそれなりに使える代物(しろもの)だが……やはりセットでないと最大限の力は出せぬ。その効果はさまざまにあるが、中でも強力なのは――」


「――ちょ、しばし待たれよ!待ってくれぬか!」


 ペラペラと話し出したフィルヴィーネを(せい)して、立ち上がったサクヤは腕を組んで考え始める。

 どうやら、一番混乱しているようだ。


「……あんた……自分の力を把握(はあく)してなかったわけ?」


「だ、(だま)っててくれ!――わたしも混乱しておるのだっ!」


「ふ~む。では、少し【魔眼】について説明しよう。サクヤは自分で覚悟を決めておけ(・・・・・・・・)


「――!」


 何か意味深な事を言い、フィルヴィーネが説明を始める。

 サクヤが一瞬だけ顔を強張(こわば)らせたのを、リザだけが見えていた。





 サクヤの左眼、通称(つうしょう)【魔眼】。

 元の世界では【停動眼(ていどうがん)】、この世界では【闇光瞳(あんこうどう)】と呼ばれる、黒い《石》だ。

 一番近しい石はブラック・オニキスと言える。

 サクヤの左眼そのものが、宝石の様な(かがや)きを持っているが、それは魔力の(かがや)きに近いとフィルヴィーネは言う。


 フィルヴィーネが知る【魔眼】の代表格とも言えるものが、【メデューサ・アイ】。

 見たものを石化し、動けなくすると言われた魔物、メデューサの力を持つ“魔道具”。

 実際に、メデューサのように石化させる事は無いが、症状(しょうじょう)(きわ)めて似ていることからそう名付けられたらしい。


「――だが。上手く使いこなせれば石化も可能だろう。声を出すことも出来ず、まるで時間が止まったと錯覚(さっかく)するほど、人の形を()した《石》のように見えるからな」


 「サクヤにはまだ無理だろうがな」と後付けして。


「【魔眼】は種類(しゅるい)が多い……【メデューサ・アイ】のような物もあれば、戦闘能力強化や敵の弱体化、精神操作(せいしんそうさ)自然干渉(しぜんかんしょう)……上げればキリがないからな」


「サクヤは、生まれつき持ってた……って言ってましたけど、誰もがそんな感じなんですか?」


 エドガーの問い。


「……違う。確かに生まれつき(そな)えている者もいるだろう……だが、それは神々(かみがみ)(さず)ける恩恵(おんけい)だ。片方なのも()せぬ。もし、サクヤの世界の神々(かみがみ)(さず)けたのだとすれば、意地の悪い“神”もいたものだ」


 フィルヴィーネは、まだ考え込むサクヤを見る。

 真剣に考えているのが分かる。

 普段のおちゃらけた雰囲気(ふんいき)がぶち壊れる程悩んでいた。

 いや、フィルヴィーネが言ったように、覚悟を決めているのだろうか。


「サクヤ、覚悟は決まったか?何でもいいから知っていることを話すがいい。そこから(われ)が考えよう」


 待つのが嫌いなフィルヴィーネさん。

 とうとうサクヤが考えているのが待てなくなったらしい。


「――う、うむ……この左眼は、わたしが生まれつき持っていたものだ……()み嫌われ、(のろ)われた力と言われていた」


 サクヤは探り探り言葉を選んでいるように見えた。

 しかし、そんなサクヤの事など考えないフィルヴィーネは。


実際(じっさい)そうだからな。【魔眼】だぞ、()(がん)だぞ?」


 身も(ふた)もない。まのがんって何?


「うぬぅ……ハッキリ言い過ぎではないか?……しかしそのせいでわたしは、屋敷(やしき)から出たことが無かった。外に出たのも……数が知れる」


「……引き(こも)りね」


「――違う」


 サクラの言葉に(たま)らずツッコむが。キレがない。


「父はわたしを恐れていたのです……いつ自分の心の臓を止められるかと……(おび)えていたらしいですから」


「――らしいって……」


「父上とは一度しか顔を合わせたことがないのです。顔もうまく出てこぬくらいで……話しをする時は、もっぱら障子(しょうじ)越しだった記憶しかありません」


 「ははは」と笑うが、どことなく悲壮感(ひそうかん)があるサクヤの横顔に、流石(さすが)にサクラもふざけられなかった。


「その左眼が【魔眼】だって事には、いつ気付いたんだい?」


「――!!……よ、幼少時(ようしょうき)です、主様(あるじさま)……それで……その……わたしは……」


 (あるじ)の言葉に、サクヤが(おび)えたような顔を見せる。

 それ以降は言い(よど)むサクヤに、フィルヴィーネが答えを出してしまう。


「……幼少期(ようしょうき)……なるほどな。(おさな)時分(じぶん)では、制御(せいぎょ)(きび)しいだろう……自動発動して……誰かの命を止めたか(・・・・・・)……」


「「――え?」」


 (おどろ)くのは、エドガーとサクラだ。

 それは、サクヤにとっての(いまし)めであり、呪いであり、知られたくない過去だ。

 隠そうと思っていた過去の出来事が一気に思い出されて。

 サクヤにはもう、いつもの明るさは無かった。


「――……は、はい……その通りです……」


 一瞬だけ引き()ったそのサクヤの眼は、悲しみに染まっていた。


「ふむ。大抵(たいてい)そうだ、初めは使い方が分からぬものが多い。精神操作系の【魔眼】など、知らぬうちに人を操ったりしているものだしな。発動の時期(じき)もそれぞれで違う。呪われた“魔道具”など、そんなものだと言ってしまえたらどれだけいいか……」


 しかし、“魔道具”は人を変える。

 手に入れた者は、その強力な力に翻弄(ほんろう)されて身を(ほろ)ぼす。

 畏怖(いふ)する者は、何もできずに恐怖におびえる日々を送るだろう。

 それこそ、サクヤの父のように。


 破滅(はめつ)象徴(しょうちょう)――それが“魔道具”だ。


「……そう考えると、お主(エドガー)不思議(ふしぎ)だな。こんなにも強力な“魔道具”に囲まれているのに、身を(ほろ)ぼさず……“不遇”と言う立場だけで事済んでいるのだからなっ――はっはっはっ」


 「本来ならば命の一つや二つ、無くしていても不思議(ふしぎ)ではないぞ」そう言うフィルヴィーネは、なんだか少し(うれ)しそうだ。


「……は、ははは……――いや、笑い事じゃないですよ」


 元来(がんらい)、自分の事を“不遇”などとは思わない様にしているエドガーは、(かわ)いた笑みを浮かべて項垂(うなだ)れる。

 しかし、フィルヴィーネはそれを無視して。


「――してサクヤ、発動のきっかけは……?」


「……」


 聞きたくなかった質問だった。

 サクヤは――スーッと息を()いて、懺悔(ざんげ)するように言う。


「……わたしは……血を分けた妹(・・・・・・)を――妹の心の臓を止めたのです」


「いもう……と?」


 その黒く漆黒(しっこく)にも似た悲しき(ひとみ)は、異世界のもう一人の自分。

 妹にそっくりな、もう一人の少女――サクラを映し出していた。


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