表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
165/383

151話【臨戦態勢】



臨戦態勢(りんせんたいせい)


 サクヤが飲用(いんよう)した薬は、思ったよりも早く効き始めて、()いは()ぐに回復した。

 今は、またローザの運転を観察(かんさつ)しに行っている。

 (つら)くても頑張(がんば)る努力家なのか、また具合が悪くなってもいいと学ばないのか、これではどちらか分からない不思議(ふしぎ)な少女だ。


 窓の外を(なが)めていたエドガーは、ゆっくりと停車する【ランデルング】に、目的地に着いたと言うことを感じた。そんな中でも、右手に描かれた天秤(ライブラ)の紋章が気になる。


「……」

(紋章が形を変えるなんて……でも、名残(なごり)はある)


 天秤(てんびん)は赤い。皿は紫で、形も三日月だ。

 しかもその皿の上には炎が揺らめいでいる。

 どう考えても、ローザとフィルヴィーネの紋章だと理解できた。


「――着いたみたいだな。エドガー」


「――え、あ……そうですね」


 フィルヴィーネに言われて、考えを中断する。

 これも新しい力だと割り切り、エドガーは心に仕舞(しま)う。

 「この力は、異世界人を(しば)る力な気がする」と、不安な気持ちを。





 殺伐(さつばつ)とした風景(ふうけい)だった。

 水の補給(ほきゅう)をした【ルド川】を出発した直後は、まだ多少の緑があった。

 しかしもう(すで)に、視界に入る景色(けしき)に緑は無い。

 ()れ果てた木々と大地、割れた()け目、様々な動物の骨が()ちて、そこら辺に転がっているのが見える。


「……ここが、【ルノアース草原】、いや荒野か……」


「……だだっ広いな。これなら、多少暴れても確かに平気であろうな、ふぁぁぁぁ~~あ」


 フィルヴィーネが、言い終えると同時に欠伸(あくび)をする。

 背伸びをして、眠る(気絶)リザをつまんで胸の谷間に入れた。

 それでなくても大きいのに、フィルヴィーネの胸は、サクラが用意した服で更に強調されていた。その隙間に、見事にハマるリザ。


「ぼ、僕はちょっとサクラ達を見てきますね」


「……うむ」


 ()えてリザには()れず、エドガーは運転席に向かう。

 パシュゥゥ――と自動で開かれた扉を抜けると、ぐったりとしたサクラとサクヤが居た。


「……ふ、二人共、大丈夫かい?」


「……だいじょーぶだよ。疲れただけ……」

「はい、主様(あるじさま)……今までこ奴(サクラ)はよくやっていました……()めてあげてください」


 ローザが運転中のここは、どのようだったか。

 二人の疲労感(ひろうかん)を見て(さっ)してしまうエドガーは、「ははは……」と笑いながらも、そのローザを(うかが)う。


「ローザも、お疲れ様……」


「ええ。これはいいわね……気分が晴れるわ」


 ローザは【ランデルング】のハンドルを()でながら、エドガーに答える。

 なんだかとても(かろ)やかに答えてくれている。

 結果的に、ローザのストレス発散(はっさん)にはなったようで何よりだ。

 約二名ほど、精神的に(まい)ってしまってはいるが。


「そっか、それなら良かったよ」


 エドガーは運転席の窓から外を見る。

 後部の部屋から見る景色(けしき)とはまた少し違い、()れ果てているのがよく分かる。

 フィルヴィーネの言う通り、多少の戦いでは影響もないだろう。


 それにしてもこの【ランデルング】は、よく無事に走ったと思う。

 普通の馬車だったら、絶対に脱輪(だつりん)していただろうし、ここまで来るのに何日掛かった分かったものではない。

 サクラとメルティナに感謝だ。


「これで、今度からは遠出(とおで)が出来るわよ?それこそ、他国(・・)に出かけてみたりね」


 背筋を伸ばすローザは、楽しそうに言う。

 これは、相当【ランデルング】の運転をお気に()したようだ。


「――はは、それはいいね……」


「でしょう?」


 それよりも、エドガーはまず他の街や村に行ってみたいと思っている。

 王都から出たことがないのだ。当然の主張(しゅちょう)だろう。


「……でもさ、本当になーんもないんだねぇ」


 サクラが助手席で言う。視線(しせん)はフロントガラスの向こう側だ。

 旱魃(かんばつ)した(うるお)いのない大地と、(くず)れかけた崖やむき出しの山肌が無限(むげん)(ごと)く広がっている。


「本当だな……わたしの御国(おくに)も、もう少し(ゆた)かであったぞ」


「――いやいや、日本は全然(ゆた)かでしょっ……比べられないわよ、あんたの時代だって、田園(でんえん)だらけなんじゃないの!?」


 自分の地元を思い浮かべて、サクヤにツッコむ。

 日本の古き良き田舎風景(いなかふうけい)容易(ようい)に思い浮かんだ。


「どうだろうか……わたしの知る【ミカワノクニ】は、まぁまぁな田舎(いなか)であったぞ……」


「ほらね!三河(みかわ)って愛知(あいち)じゃん!同じだよっ!うちは服部(はっとり)家――あんたもそうなんでしょ!?」


「――!!――!?」


「え――なに?あたし変な事言った?」


「……あ、いや……わ、わたしも思っていたのだっ」


 二人はこの世界に来てから、あえて名字(みょうじ)を言っていなかった。

 お互いに勘付(かんづ)いて、気付いていても言わなかったのだ。

 そういえば、自己紹介の時も名前だけだった気がする。


 二人は、特にサクヤは自覚する。やはり自分達は、同じ存在なのだと。

 出身地も、名字(みょうじ)も同じ、育った環境(かんきょう)と時間軸が違うと言うだけで、別の世界の同じ人間なのだと。


「「……」」


 (にら)み合っているのか見つめ合っているのか。

 少なくとも、いがみ合っている訳ではなさそうだ。


「……」

(やはり……同じ。このサクラは、わたしの……)


 サクヤの心に芽生(めばえ)えていた疑惑(ぎわく)は、この時確信に変わった。


「――ほら二人共……そろそろ降りるわよ。ここに来た目的は、私があの“魔王(おんな)”と戦う事が目的なのだから……なんだったら、二人も戦う?」


 サクラは首をブンブン()るい。

 サクヤは少し考えて。


「――いや、今回は……見学(けんがく)させていただくとしよう」


 自分なりの考えがあるのか、サクヤは(ことわ)った。

 ローザは「そう」と一言だけ言い残して、先に運転席を後にした。


「……僕たちも行こうか」


「うん」

「……はい」


 これから起こるローザとフィルヴィーネの戦いに。

 エドガー達は、不安に()られながら下車するのだった。





 エドガーがローザの後をついて【ランデルング】を降りると、(すで)にローザが身体を動かし始めていた。

 フィルヴィーネは大きな岩に腰掛けて、リザと会話をしていた。デコピンから目覚めた様だ。


「……」


 無言でフィルヴィーネを見るローザ。

 視線(しせん)で何かを起こしてしまうのではないかと冷や冷やしてしまうエドガー。

 ローザはもう、臨戦態勢(りんせんたいせい)だ。


「ローザ、もう準備しているんだね」


「ええ、いつでも行けるわよ」


「き、気が早くないかな?」


 着いて早々だ。正直言って少し見て回りたい気持ちがある。この【ルノアース荒野】を。

 ローザの思いも、それはもう十分に理解しているが。

 エドガーのそんな気持ちを感じたのか、ローザは。


「……あの子達(サクヤとサクラ)と見て回ってきていいわよ……私はあの女と一戦(まじ)えるから」


「い、いや……そういう事ではなくてね」


 苦笑いを浮かべて、ローザの背中を押す。


「――ん……ありがとっ……」


 ストレッチをしながら、ローザはドンドン気合を入れていく。

 エドガーとローザ、その二人のその様子を見ながら。


「――見てよ【忍者】……あれがエド君の、(たら)しの部分だよ。見た今の!あんなにスムーズにローザさんの背中を(さわ)ってさぁ……ねぇ。女()れしてないとは思えないんだけど……」


「た、確かにな。主様(あるじさま)は、ああいうところがある……ジゴロと言うやつだな!」


 二人は見合って笑う。結構(ひど)い事を言っているが、聞こえているエドガーは否定(ひてい)しない。いや、ジゴロは否定(ひてい)した方がいいと思うが。


「……(われ)は構わぬよ、エドガー。精々(せいぜい)手加減してやるさ」


 フィルヴィーネが余裕(よゆう)を持って言う。

 ――ピキッと、ローザの眉間(みけん)に怒りの(しわ)が浮かんだ。


「……ふんっ。大丈夫よ、エドガーに心配は掛けないわ」


 しかし、事前にエドガーに言われた事もあるので、ローザはフィルヴィーネの挑発(ちょうはつ)には乗らなかった。


「ふぅ……」

(よかった……)


 ローザが思いとどまってくれたと、この瞬間だけは思っていた。

 何故(なぜ)ならば、右手の天秤(てんびん)の紋章、【真実の天秤(ライブラ)】は、何も反応を示さなかった。だから、エドガーは安心してしまっていたのだ。

 まさかローザが、自分を(だま)して、(うそ)を隠し通す精神を持っているなんて、想像もできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ