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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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146話【充填】



充填(じゅうてん)


 大型装甲車【ランデルング】。

 今し方完成した、この兵器と見間違(みまちが)う程のフォルムを持った車を、誰が運転するかと話していた中で、自分が運転すると言い出した人物がいた。

 魔力が枯渇(こかつ)したこの世界で、今(もっと)魔力(それ)を必要としている筈の人物、ロザリーム・シャル・ブラストリア。


 ローザは、「私がやるわ」と言い出し運転席に入り込んで来た。

 ズイッと前に出て来て、ついついメルティナが席を(ゆず)る。

 だがもう一人、サクラは言う。


「――いや、ローザさん。車の運転できないでしょ?」


「そうね。でも、魔力が関わっているのなら――話は変わるのではない?」


「――そういうものじゃ……はぅ!」

「――ノー。出来るかもしれません」


 サクラが、運転と魔力の接点(せってん)が見つからずに否定(ひてい)しようとしたが、メルティナがそれを(はば)んだ。

 手で顔を(さえぎ)られて、サクラはムッとしながらもメルティナに問う。


「……どうやって?」


起動(きどう)に使用しているのは“魔道具”です。それも《石》……ローザやサクラでも、やりようによっては普通に運転するよりも、事は()むかもしれませんよ」


「――確かにな」


 メルティナの言葉に、フィルヴィーネが小さく(うなず)く。

 どうやら初めから知っていたのだろう。口を出すつもりは無かったのか、紫紺(しこん)の髪の毛をクルクルと指で巻きながら、視線(しせん)だけで様子を見ている。


「つまり、あたしでも運転できるって事?」


「イエス」


 サクラは、喜々(きき)とする。

 そしてローザは、早く早くと気が(はや)っているのか。


「……教えなさい」


「な、何故(なぜ)上から目線なのでしょうか……」


 教えるも何も、ローザはもう出来る気でいる。

 メルティナは、先程ローザに(ゆず)った席に近付き。


「では手をかざしてください――そう、このハンドルです」


「――えぇ!あたしは!?」


(だま)っていなさいサクラ……」

(だま)っておれ、小娘」


「……ええぇ」


 ローザはともかく、フィルヴィーネにまで(だま)れと言われサクラはへこむ。

 フィルヴィーネは、運転方法に興味(きょうみ)があるようだ。

 方法と言うよりも、その魔力の使い方に、だろうか。


「少しだけお待ちを」


 メルティナはハンドル周りと、《石》の装置を調べている。

 (かが)んで、ブレーキやアクセルも調べる。

 メルティナがこのコックピットを作ったのは、自分が操作(そうさ)しやすいようにだったが、ローザやサクラが運転、操縦(そうじゅう)をしてくれるのなら、それに()したことはない。

 メルティナだって、【クリエイションユニット】の使用で魔力を使っているのだから。


「アクセルとブレーキは……どうやら《石》とは接続(せつぞく)していない事を確認。やはり、魔力で操作(そうさ)できる可能性は高そうです」


 メルティナがサポートAIとして搭載(とうさい)されていた【ランデルング】は、未知のエネルギー、【ストラジアエナジー】という燃料(ねんりょう)で動いていたのだが、当然この世界には無い。

 しかしそのエネルギーの代わりを魔力で充填(じゅうてん)する事が出来れば、操縦(そうじゅう)すらも可能なはずだ。

 実際(じっさい)、エネルギーがなくとも起動(きどう)には成功しているのだし。


「やはり、魔力が(きも)ですね」


 操縦(そうじゅう)にどれだけの魔力を消費するかは分からないし、移動にかかる時間もあやふやだ。

 メルティナ的には空を飛びたいと言うのが、正直なところだが。

 しかしそれは、筋違(すじちが)いだ。


「これを(にぎ)って、魔力を流すのね?」


 ローザは、かざすだけにしていた両手でハンドルを(つか)んで、【消えない種火】に魔力を込める。


「イエス。ですが少しずつにしてください……」


 「そ~っとですよ、そ~っと!」と、メルティナはローザに魔力をセーブするように言う。


「分かってる」


「……」


 ローザは弱まっている。言われずとも少量しか注ぐことは出来まい。

 しかしそれでも、その馬鹿にならない魔力は素の状態で二番目(・・・)だろう。

 (すで)に、フィルヴィーネの魔力が、ローザを抜いている筈だ。


「……」


 ローザだって、メルティナの()を理解している。

 メルティナが自分の異変(いへん)を感じている事を。

 地下での言動は、それを確認するための物だったのだろうと言う事も。


「分かっているってば、そんな目で見ないで……気が()るわ」


 モニター付近にある、メーターのメモリの数値はゼロだ。

 “M”と書かれたそれは、魔力(マジック)の“M”だろう。


 ローザの魔力に反応して。

 少し、また少しとメモリが上昇していく。


「そうです!その調子!」

「――ああもうっ、うるさい!」


 冷や冷やしながら、メルティナはローザを応援する。

 気が()ったローザは、我慢(がまん)できずに声を出す。

 そして、その瞬間に魔力は大きく注がれてしまい。


「……――あっ」


 ギューーーンと注がれたローザの魔力は、ギリギリでメーターを満タンにした。


「……ほっ……」

「セ、セーフ……」


 サクラとメルティナは、息をついて一撫(ひとな)でする。

 フィルヴィーネだけは欠伸(あくび)をしていたが。


「……取り()えず、いいみたいね」

(あ、(あせ)った……クシャミのような(いきお)いで魔力を出してしまった……節約(せつやく)したいのに――でも、まだ平気……まだ動ける)


「で、ですね……(あせ)った~」

「そ~っと。と言ったではないですか!」


貴女(あなた)が変な風に言うからでしょう。私だって初めての物は緊張(きんちょう)くらいするわよっ!」


「――えっ、そうなんですか!?」


 ローザの一言に、サクラは本気で(おどろ)いていた。

 ローザくらいの人でも、緊張(きんちょう)するのかと。


「……当たり前でしょう。私を何だと思っているのよ……」


「あふぁふぁ……いふぁいれす」

(あたた……いたいです)


 ローザはサクラの(ほほ)目一杯(めいっぱい)に引っ張った。

 自分がまるで人外だと言われたようで、気に(さわ)ったのだ。

 サクラも、小さな失言だと分かって、()えていい様にされている。

 みょーんと伸びるサクラの(ほほ)、実に(やわ)らかい。


「それで、次は?」


 サクラの(ほほ)を伸ばしながら、ローザはメルティナに聞く。


「イエス。もう大丈夫です……あとはゆっくりと走らせるだけ、ですが……」


 メルティナはモニター付近や装置を確かめながら(うなず)く。

 メモリは満タン。《石》も異常なし。起動(きどう)は問題はなさそうだ。


「なら……」


 ローザは再びハンドルを(にぎ)るが。


「ストップ!ストーップ!まだ駄目(だめ)ですってローザさん、そんなに(あせ)らなくても……」


「……」


 目を()らした。

 これは、余程()いていたらしい。


 「ふふん」と、フィルヴィーネが笑っていた。(あせ)る子供達を見るように。


「――あれ、もう終わったのかな……?」


 (のぞ)き込むように、エドガーとサクヤ、そしてローマリアが運転席にやって来る。

 どうやら、一通り見終わったようだ。


「……そうよ」

「――いや、まだだってば!」

「まだです」

「まだだな」


「……ローザ殿」

「ははは……ローザ……」

「自信たっぷりに……ローザ、凄いわっ!」


 エドガーとサクヤは(あき)れ。

 ローマリアは自身満々に言うローザを感心していた。

 王女の心酔(しんすい)半端(はんぱ)ないのだが。


「それで、あとはどうするのかな……?手伝えることがあるなら、手伝いたいんだけど」


 エドガーは苦笑いを浮かべながら言う。

 この装甲車【ランデルング】に興奮(こうふん)しすぎて、何もしていなかったことを反省(はんせい)しているようだ。


「ノー。もうすることはありませんので大丈夫です」


「あ……そ、そう」


 メルティナの、マスターに配慮(はいりょ)の欠片もない宣言に、エドガーは申し訳なさそうに頭を()く。


「メルティナも人の事言えないでしょうに……」


 座席に身体を預けて、ローザは愚痴(ぐち)る。

 そしてエドガーは、現地民(げんちみん)なら誰でも思う可能性を口にする。


「でもさ、こんな大きな車体……どうやって門の外(・・・)に出すんだい?――この車、門より大きくないかな?」


 エドガーの言葉は、少女達の意表(いひょう)を突く言葉になった。

 ローザやサクラ、メルティナは()頓狂(とんきょう)な声を上げ。


「え?」

「……はぁ!?」

「……想定外(そうていがい)


「フハハハハハッ!!……お(ぬし)たち、馬鹿(ばか)であろう」


 涙を流して大笑いする“魔王”様。

 どうやら気付いていたな?


「――気付いていたなら言いなさいよっ!!」


 逆に、ローザが気付いていなかった方が意外(いがい)かもしれない。

 それほどまでに(あせ)っているか。もしくは苛立(いらだ)ちか。


「クックックッ……それでは面白くないであろうが、(おの)ずと気付け、(たわ)けが!」


「……ぐっ……」


「あたしも失念(しつねん)してたなぁ……」


 フィルヴィーネは愉快(ゆかい)そうに笑って言うが、ローザはとても(くや)しそうに顔を(ゆが)め、サクラは片手で顔を(おお)う。

 メルティナは、エドガーから目を()らした。


 エドガーが“召喚”した少女達、は完成された存在ではなく、それぞれがバラバラな程に、不完全で、何か様々なものを(かか)えた一人の人間である。それを痛感(つうかん)した面々(めんめん)だった。


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