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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 4章《残虐の女王が求めるもの》
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130話【ブラストリア】



◇ブラストリア◇


 ロザリーム・シャル・ブラストリア。

 【ブラストリア王国】第二王女。近隣諸国(きんりんしょこく)滅亡(めつぼう)させ、国を守った英雄的(えいゆうてき)王女だ。

 しかし、乱心し先王を殺す。その罪で投獄(とうごく)されるも、その後の生死は不明。

 一説(いっせつ)では“魔道具”の暴走でその身を(ほろ)ぼした、とも言われる。


 ――それが、ローザがあの日と言う(90話)、ローマリア・ファズ・リフベインの口から語られた、【リフベイン聖王国(・・・・・・・・)】に伝わる、歴史書の内容だった。


 エミリアの結婚の話をして、決闘をする流れになった後にこの話をしたのだが。

 目の前が真っ暗になったサクラがこの話を覚えているかはかなり(あや)しい。

 同じくエドガーも、かなりサクラを気にしていたので、全部を全部覚えているかと聞かれれば、答えはいいえ。だろう。

 二人共、自分の事で手一杯(ていっぱい)だったのだから、仕方ないが。


「……はい、どうぞ」


 朝に作っておいた(エドガーが)アイスコーヒーをコップに入れ、ローマリア王女に出す。


「あ、ありがとう……その、ミルクとお砂糖(さとう)をいただけますか?」


 どうやらブラックは飲めないらしい。

 かく言うローザも実は甘党なので、ローマリアに負けじと砂糖(さとう)を入れている。


「……ロザリーム殿、わた――」


「そのロザリームって止めてくれない?……ローザでいいから。殿もいらないし……わたしはもう王女じゃない、エドガーの“契約者”で、エミリア達の仲間なのだから……いいわね?」


 ローマリアの固い呼び方に、ローザはかぶせる様に言う。

 (まく)し立てて言ったため、ローマリアは反論する(ひま)すらなく。


「あ……は、はい!では、ローザ……と、呼ばせていただきます!」


「ええ、それで――っつ!」


 突然来た胸の痛みに、ローザは左手で胸を抑える。

 その場所は、謎の空間で赤い光玉を受け入れた場所だ。


 この痛みも、これで五回目、()れたくもない痛みだが仕方がない。

 一度目は、【月光の森】でグレムリンと戦っている時、二、三回目は、サクヤとサクラが“召喚”された時、四回目は、メルティナが“召喚”された時だ。

 【孤高なる力】が発動した――という事は、新たに誰か“召喚”された。

 もしくはローザが、ローマリアを仲間と認めたという事だろう。


「――ローザ?」


 反対側の椅子(いす)に座るローマリアが、立ち上がってローザを気にする。


「……なんでもないわ……コーヒーが熱かったのよ」


 アイスコーヒーが熱かった?

 ローマリアが、混乱(こんらん)しながらローザとコーヒーに視線を行き来させている。

 そりゃそうだ。

 毎回痛みを誤魔化(ごまか)すようにしているが、今回は初めて苦悶(くもん)の表情になってしまった。

 もしかしなくても、痛みへの耐性(たいせい)が落ちてきているのだろう。


「それよりも、この前の続きを話しましょうか」


 ローザは笑顔で誤魔化(ごまか)す。普段は見せないにっこりスマイルで。

 変なことを言ってしまったが、無しにしてもらわねば。


「は、はぁ……分かりました」


「私の名前がこの国の歴史書に()っている……つまり、私は過去からここに“召喚”された……ということになるわね」


「ええ、そうなりますね。それもローザ、貴女(あなた)は私たち王家の先祖(せんぞ)に当たるはずなのです……」


「……この場所が、【ブラストリア王国(・・・・・・・・)】――だから?」


 仮説(かせつ)ではあるが、ローザはほぼ確信を持っている。

 ここ【リフベイン聖王国】は、かつて【ブラストリア王国】があった場所なのだろうと。

 そして、この国の王族の髪色は、桃色(・・・)だ。

 【ブラストリア王国】の王族の髪色は、赤。

 長年の時を()て、髪の色素が薄くなったのなら納得もできるが。


「でも、あれ以降【ブラストリア王国】が(なが)らえて行ったとは思えないのよね……それに、どれくらい前になるのかしら――【ブラストリア王国】が(ほろ)びたのは……」


 存在しない名前になっている以上、ブラストリアという名前が【リフベイン聖王国】の王家にしか知られていないという事は、情報は外に出ていないという事。

 もしくは、相当昔に(ほろ)びが(おとず)れているかだ。


「……おそらくは千年以上前だと思われています。古すぎて、正確な年数が分からないのですよ」


「――千年……」


 途方(とほう)もない年月だ。

 そんなにも長い時間を駆けたのならば、例えここが未来であれ【異世界】だと言われても仕方が無い。

 しかし、これでローザが“魔道具”の名前を知っていることの説明はつく。

 魔物(モンスター)や“悪魔”も、ローザが居た時代のものがそのまま“神話”とされている可能性がある。

 ローザは、背凭(せもた)れに身体を預けて、感慨深(かんがいぶか)くコーヒーを飲む。

 別に感傷に(ひた)っているわけではないが。


「ローザ殿……いや、ローザは気に食わないとは思うけれど……」


「――?……何が?」


「え、いや、え?……あれ?」


 本気で困惑(こんわく)するローマリア。

 ローザは別に、未来の世界でブラストリアがどうなっていようが、始めからどうでもよかった。ローマリアの考えとは、そもそもから違っている。


「気にし過ぎよ……私は、未来に興味(きょうみ)はない。第一、ここが未来の世界だなんて、流石(さすが)に分からなかったし……千年(・・)よ?逆に分かる人が居たら会ってみたいわ……ま、いないでしょうけれど」


 どこか嬉しそうに、でも切なく感じるローザの笑顔を、ローマリアは忘れないだろう。


「そう言えば、ローザの時代の王家はどうだったのですか?本当に史実(しじつ)通りなのですか?」


「そうね、大体合っているわ。父を殺したのも、投獄(とうごく)されたのもね……それよりも、王を殺害(さつがい)した私の名が残っている事の方が驚きね……」


 ローザは正直に答える。ローマリアの探究心(たんきゅうしん)は、単なる興味本位(きょうみほんい)には感じなかったからだ。

 本当に国を思い、過去の様にしたくないと思っての発言だと思えた。

 その心根(こころね)は、妹を思い出して少し胸が痛かったが、きっと【孤高なる力】のせいだと、言い聞かせた。




 話は、結構盛り上がった。

 ローザが“召喚”される前に起こった事件。

 それらをつなぎ合わせて考えられた推測(すいそく)

 蛇足(だそく)に過ぎない想像の会話。

 正直、結構楽しかったとローザも思っていた。


「はぁ~、楽しかった……ローザ、ありがとう!おかげでいい脱走(だっそう)になったわ!」


「……脱走(だっそう)だったのね。やっぱり」


「……あっ」


 しまったと口を(ふさ)ぐがもう遅い。第一、(すで)にバレているのだから。


「あ、あはは……」


「まったく……近くまで送っていくわ……――ぐ……ぅっ!」


 立ち上がろうとしたローザだったが――ガタン!!と、急に(ひざ)をつく。

 胸を抑え、(うずくま)る。


「――ローザ!!どうしたの!?大丈夫ですかっ!?」


 あわあわと、ローザのすぐ(そば)までやって来くるローマリア。

 壊れそうなものを触る様に、優しく背を(さす)る。


「平気よ……立ちくらみが……しただけ、だから」


「とてもそうは見えないわ!そ、そうだ、エドガー達を呼んで――っ!?」


 ローザは、ローマリアのスカートの(すそ)(つか)む。

 今出る、最大の握力(あくりょく)で。


「!?」


 ローザの手は、ローマリアに簡単に(ほど)かれてしまった。

 指を一本一本、優しく(ほど)き、硬直(こうちょく)(やわ)らげるように、そっと。


「――っ!!」

(……そう、ここまで落ちたのね……私は。戦いの“たの字”も知らないような女の子に、簡単にあしらわれてしまうくらい……弱く)


「ローマリア。お願いがあるわ……私の、ブラストリアの子孫なら、聞いてくれるわよね?」


「いや……でもローザ……この状況は」


 ローザの手を取りながら、ローマリアは困惑(こんわく)を隠せない。

 しかし、ローザの手の熱と視線(しせん)が、その戸惑(とまど)いを打ち消す。


「――っ!……わ、分かった」


 そうして、二人の王女は密約(みつやく)()わすのだ。

 ――ローザの炎が、消え去る時まで。


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