【冬童話2026】空からふってくる雪の結晶に二つとして同じものがないわけ
冬童話2026への参加作品です。
「織花童話集Ⅱ」としては、2年以上経ってからの更新です。
またお読みいただけば幸いです。
ある日の朝に作られた二つの雪だるまたちが、おしゃべりをしています。
「あの子、雪がふったのをよろこんでいたね」
「あの子、ぼくたちを作る時、手が真っ赤だったよ」
「てぶくろをはずしてつくっていたからね」
「あの子のすてきなところ、知っている?」
「うん。知ってる」
「あの子、とってもやさしいんだ。だってぼくらにおそろいの青いバケツのぼうしをくれたのだもの」
「それだけじゃないよ。ぼくらが世界を見えるように目を作ってくれたよね」
「かわいい鼻もつけてくれたよ」
「うれしいね」
「うれしいね」
「「うれしいね」」
「明日もあの子、遊びに来るかな?」
「来るといいな」
「あっ、あの赤紫のてぶくろ、あの子のじゃない?」
「ほんとだ。かたほうだけ落ちている」
「ぼくにうでと足があればなぁ。とどけるのに」
「雪がつもって分からなくなりそう」
「どうしよう?」
「どうしよう?」
「「どうしよう?」」
「あっ、雪だるま!二つも!」
そこへ男の子がやってきました。
一番右側の雪だるまは、男の子が赤紫のてぶくろに気づいてくれるといいなと思い、ごろんと倒れました。
「うわっ雪だるまが!」
男の子は急いで雪だるまをおこしました。
その時右側の雪だるまの頭はさっきより少し大きくなりました。
「よっこらしょっと。あっ赤紫のてぶくろが落ちている。だれのだろう?そうだ、それなら……」
男の子は、近くの木の枝をひろうと、雪だるまにさして、そこに赤紫のてぶくろをかぶせました。
男の子はもうしわけなさそうに笑って、
「一人だけ、かたほうだけでごめん」
と言いました。
「良かった。これであの子、赤紫のてぶくろにきづくね」
「良かったよ」
「良かったよ」
「「良かったよ」」
「あの男の子のすてきなところ、知っている?」
「うん。知っている」
「あの子、すごくやさしいんだ。だって赤紫のてぶくろを見つけてくれた」
「それだけじゃないよ。君を一人でおこすほど力持ちだ」
「一人だけ、かたほうだけごめんってあやまってもくれた」
「あたたかいね」
「うん。あたたかい」
「「すごくあたたかい」」
雪だるまの小さなおしゃべりは、それからしばらくの間続きました。
雪はその日の内にやみ、次の日は良いお天気でした。
そして、次の日も次の日も良いお天気でした。
雪だるまたちはだんだん体が小さくなるのを感じ始めていました。
そんな時、公園に赤いほっぺの女の子が息をはずませながらやってきて、雪だるまの前に立ちました。
「私のてぶくろ!たっくんが言った通り、ここにあった」
そうして、雪だるまの手からてぶくろをとり、にっこり。
「拾ってくれてありがとう!たっくん!」
そして、雪だるまのこともなでて、ニコニコして言いました。
「ありがとう!雪だるまさん、てぶくろを守ってくれて」
「ありがとうだって」
「良かったね」
「うれしいね」
「しあわせだね」
「人っていいね」
「本当にいいね」
「「すごくいいね」」
空から雪だるまたちをすっと見ていた冬の女神さまは、なんて心の良い雪だるまたちなのだろうと思いました。
そして、このままでは溶けてしまう雪だるまたちを何とかしたいとお空へ呼ぶことにしました。
冬の空は淡い水色で、光の雪がきらきら待っています。
まばゆくても熱くないその場所を、雪だるまたちはいっぺんに気に入りました。
「お前たち。今日からは雪の精霊として、地上を見守り、みなにこたえなさい」
冬の女神さまはそう言うと、雪花のように美しくほほえまれました。
「はい」
「はい」
「「はい。女神様」」
さっそく雪の精霊になった雪だるまたちは、地上の声に耳を澄ませます。
「お母さん、ありがとう。大好き」
「お父さん、すごい!そんなこともできるの?」
「トムは良い子だね」
「すごいぞ、ナターシャ。がんばったな」
「タマのもふもふ、あたたかい」
そんな声がきこえてきたら、雪だるまたちはうんと嬉しい気持ちを込めて、それはそれは美しい雪の結晶を作ります。
そして、地上へ送り届けます。
きらきらきらきら、ふうわりふうわりふうわり。
「おじいちゃん。今までありがとう。天国で安らかにね」
「明日、食べるものがないわ」
「学校でいじめられているんだ」
「重い病気になってしまった」
「あなたとはもうあえないの?」
そんな声が聞こえてきたら、雪だるまたちはうんと励ます思いを込めて、それはそれは美しい雪の結晶をつくります。
そして、地上へ送り届けます。
きらきらきらきら、ふうわりふうわりふうわり。
雪の結晶は、似たものはあっても、同じものは一つとしてありません。
それは二つの雪だるまたちが、一人一人の声を聞いて、心を込めて雪の結晶をつくっているからなのです。
今日も空で雪だるまたちが、地上の声に耳をすませています。
あなたの掌に落ちた雪の結晶は、もしかしたらあなたの声に雪だるまたちが応えてくれた証拠かもしれませんね。
「しあわせだね」
「しあわせにね」
「「しあわせよ、ふりつもれ」」
雪だるまたちは、この国が春になってからもちがう国で雪をふらせつづけます。
気持ちも同じものは二つとないと大切に大切に地上の人々をだいじにだいじにおもいながら。
おしまい
お読みくださり、ありがとうございました!
他の作品にも目を通していただけましたら、嬉しいです。
宜しくお願いいたします。
「織花童話集」も良かったら、読んでやってくださいませ。
それから、冬童話にもう一つ『鉱山に雪が降る日、レイナは』で参加しています。
こちらはちょっと大人向けの仄暗さがある童話です。
どうぞこちらも宜しくお願いいたします。




