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89_それはそうなるわよね

 


 突然聞こえてきたアリーチェ様の大きな悲鳴に驚いた私たちは、急いで屋敷の方に馬を走らせた。


(まさか、アリーチェ様に何かあったんじゃ……!)


 悪魔の気配はもうない。だから、綺麗さっぱり消し去れたと思ったのだけれど、そうじゃなかったのかもしれない。もしくは予想に反してレーウェンフックの屋敷の方になんらかの影響があったのかもしれない。なんせこんなことは初めてだから、何が起こっていてもおかしくはないのだ。

 だからこそ、想定外のことがあったときのためにマオウルドットをあえて置いてきたのだけれど……。


 そんな風にあれやこれやと良くない事態を想定しながら、屋敷に向かう。

 しかし、門の方に辿り着くまでに、私は明らかな異変に気付いてきた。


「こ、これは……」


 なんとなく事態を察して、屋敷の少し手前で馬を走らせるのをやめて、恐る恐る歩を進める形に。


(うわあ、どうしよう。すっごく嫌な予感がするわ!)


 進みながらもチラ、と様子を窺うと、フェリクス様はなんだか呆けているし、カイン様はものすごく引きつった顔をしていた。どうやら二人も同じように嫌な予感を感じているらしい。

 カイン様なんて、抱っこしたままのジャック達が今がチャンスとばかりに彼の騎士服にたしたしと鋭く手を出したり、ガジガジと甘噛みしていても、全くそれどころじゃないといった感じだ。


 ついに屋敷の門をくぐる。

 そこには手で口を覆って立ち尽くすアリーチェ様と、ポカンと口を開けて目をぱちくりとしているマオウルドットがいた。


 ──ただし、マオウルドットの体はとんでもなく大きくなり、頭は離れの屋根を突き抜けて飛び出しているし、手足も尻尾も、まるで建物から生えているかのようになっている。


(うわーあ!このサイズのマオウルドットを見るのは何百年ぶりかしら!)


 久しぶりに森で会ったときも、封印は緩んでいるだけで解けてはいなかったので、本来の大きさに比べれば半分にも満たないほどの小さなマオウルドットだったものね。


 ふと、ポカンとしていたマオウルドットが私に気付き、目が合う。数秒見つめ合ったまま沈黙が漂ったけれど、マオウルドットがニヤリと笑った。


「ふ、ふはははは!!見てみろルシルー!これぞ誇り高きドラゴン!久しぶりにでっかいオレ、かっこいいだろー!!!」


 ああ……マオウルドット、なんだか魔王っぽい笑い方なんてしちゃって、とっても嬉しそうね……。


「マオウルドット、大きくなったら、もう一緒に住めないわね」

「えっ」


 思わず呟くと、さっきまでドヤ顔で嬉しそうにしていたマオウルドットは絶句した。


 よく見ると、本邸の方にいたサラを始めとする使用人も外に出てきて呆然と見ているし、いつもマオウルドットにベッタリだった子猫軍団は、マオウルドットの飛び出した尻尾の先に大興奮でじゃれついている。あ、あはは……大きな猫じゃらし、とっても楽しそう……。


 見たところ、怪我をしている人はいないみたいでよかった。だけれど、当然ながら、離れは屋根も壁も壊れ、窓も割れて、とても住める状態ではなくなっていたのだった。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 どうやら、私がイヤリングを通して送った魔力が膨大だったために、マオウルドットに魔力が漲って、本来のサイズまで身体が大きくなってしまったらしい。

 そうよね、だって封印で魔力を制限したからこそ、あんなに可愛らしいサイズになっていたんだもの。よく考えれば当然の流れではあったわよね。

 直前まで離れで猫ちゃんたちとのんびり昼寝をしていたマオウルドットは、私からのいきなりの念話のあと、突如として流れ込んでくる魔力を、離れから出る間もなくその身に受け取ったということだった。


 そんなマオウルドットは今、シクシクと泣いている。


「うっ……あんまりだ……大きくなったからもう一緒に住めないってなんだよ!突然魔力寄越したルシルが悪いんじゃないか!」


 めそめそする大きなドラゴンをフェリクス様もカイン様もなんとも言えない表情で見ている。アリーチェ様は森で怖い目に遭ったことを思い出してしまわないかしら?と心配になったけれど、どうやらそこは問題ないらしい。しかしエリオスを抱き寄せながら、「マオちゃま……」と哀れむような目で見つめている。エルヴィラは少し警戒しているようだ。


 うーん、確かに考えが甘かった私が悪いのよねえ。そう思って、素直に謝る。


「マオウルドット、本当にごめんね!」

「謝るなら小さくして!オレ、絶対一人で森になんて帰らないからな!」

「えっ、小さくしていいの?」

「えっ、できるの?」


 もちろん、出来るに決まっている。だって封印は私に紐づけられているんだもの。

 そう伝えると、マオウルドットはみるみるうちに顔を輝かせた。


「フン、早く言えよ!まあ、オレは大きくても困らないけど?ルシルはオレがいないと寂しいだろうから、一緒にいるために小さくなってやるよ!」


 さっき、小さくして!って泣いていたのはどこの誰なのかしら?

 そう思ったけれど、実際に私のせいでマオウルドットを振り回してしまっているのは事実なので、それは言わないでおくことにしたのだった。





感想欄で、何人か当たってましたね……!

(だけど、マオウルドットは大きくなっても、可愛いよ……!)



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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
― 新着の感想 ―
[良い点] マオちゃま大きくなっても可愛いねぇ
[一言] マオちゃま可愛いよ···!
2022/12/31 21:51 退会済み
管理
[一言] 基本的に猫ちゃんしか勝たんがマオちゃまもようやっとる(ニコニコ)
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