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81_私に任せておきなさい!

 


「エリオス、エルヴィラのいる場所が分かる?」

「……多分。今の僕は、とても悪魔との繋がりが深いから、すごく嫌な感じがする方にエルヴィラがいると思う」

「そう。それじゃあまずはエルヴィラのところへ行って、呪いには手を出さないでほしいってお願いしなくちゃいけないわよね!」


 エリオスを連れて一緒に馬に乗り、レーウェンフックの離れを飛び出しながら、私は気合を入れる。エリオスはどんどん力が湧いてきているようで自分の足で走るのも苦ではないみたいだけれど、それが少しでも生きる気力が湧いたからなのか、繋がりが深くなっている悪魔が近くまで来ているからなのかはちょっと分からないけれど。

 それにしてもフェリクス様にお願いして馬に乗る練習をしておいてよかったわ!

 いつも私を乗せてくれるこの子も、悪魔の気配に怯えてしまうかと思ったけれど、なんだかやる気に満ちていて頼もしい限りだわ。


「リリーベル、エルヴィラが呪いを解くのを止めて、どうするつもりなの?やっぱり、運命通りにエルヴィラに力を使わせて、僕だけが悪魔と一緒に消える方が──」

「それ以上言ったら許さないわよ」

「…………」

「ふふん!私に考えがあるのよ、任せておきなさい!」


 全く、エリオスはすぐに弱気になるんだから!自分が犠牲に、なんて次に口にしたら何かお仕置きしてやらなくちゃいけないわね?

 そんなこと考えながら、馬を走らせていると。


「にゃあ!」

「にゃおーん!」

「みゃあん?」


「みゃあ!?あなたたち、いつの間についてきちゃったの?」


 どこからかジャック、マーズ、ミシェルがひょっこりと顔を出してきた!ええっ?本当にどこにもぐりこんでいたのかしら?全然気がつかなかったんだけど!?

 ……でも、そっか。


「うふふ!あなたたちもエリオスが心配なのね!」

「え……」


 私の言葉にエリオスは少し戸惑って見せたけれど、自由な猫ちゃんたちは『そうよそうよ!』とでも言わんばかりににゃあにゃあと鳴いている。

 ふと、マーズが、エリオスのことは好きでもっとくっつきたいのにそうできないと不満を零していたことを思い出す。


(あれって、今考えれば呪いの中心にエリオスがいたからだったのね)


 猫は人間よりも感覚が鋭い。きっと、呪いのことがはっきりと分かっていないような子だとしても、肌に感じるその気配に、エリオスの側に近寄ることができなかったのだろう。


 ついでにアリーチェ様が言っていたフェリクス様の話も頭によぎった。


『フェリクスはね、ああ見えて小動物が好きなのよ!』

『でも怖がられて逃げられるから全然触れないの』


 ……あら?あれもひょっとして、フェリクス様が怖がられていたわけじゃなくて、猫ちゃんたちはフェリクス様の呪いのせいで近くにいられなかっただけじゃあないのかしら?


(もしそうなら、呪いが解けたらフェリクス様も猫ちゃんたちと遊べるんじゃない?)


 脳内で、心ゆくまで猫ちゃんに触り嬉しそうに頬を染めるフェリクス様や、猫ちゃんたちに埋もれ幸せのあまり天に召されそうになっているフェリクス様を想像してしまう。


(待って?そんなフェリクス様、とっても、か、可愛いのではないかしら……!?)


 だって体が大きくてお顔が怖めで怯えられているようなフェリクス様が猫ちゃんにでれでれになるのよ?うーん、想像だけでとっても素敵!

 ばっちり実現させてあげるためにも、頑張らなくちゃいけないわよね!


「にゃーん!」

「うにゃ!うふふ、そうよね!この子たち、みんなエリオスとたくさん遊びたいみたいだから、呪いが解けたらきっとしばらくは離してもらえないわよ!」


 私が笑ってエリオスにそう言うと、彼は眩しいものを見るような、苦しいのを我慢するような、そんな何とも言えない表情でじいっとジャック達3匹を見つめていた。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



 馬でしばらく走った場所に、エルヴィラはいた。

 周囲には見慣れない騎士様達と、そしてその場に伏して動かない大型の魔物の姿。……見たこともない魔物だわ。もう息をしていないように見えるのに、その体からまだなんともいえない禍々しい魔力が湧き出て漂っている。うーん。どうやらこの魔物がエルヴィラの覚醒を促したみたいね。


 そして、正直少しほっとした。相手がこの程度だったから、覚醒のタイミングで勢いあまってそのまま呪いを吹き飛ばす、なんてことがなかったんだものね。エルヴィラにはちょっと申し訳ないけど。


 私は呪いのことが頭にあるばかりに『この程度』と表現してしまったとはいえ、それでも光魔法の覚醒を促すほどの特別な個体で、それを討伐することに成功した騎士達も気持ちが昂り、良い熱気にあふれている。

 少し離れた場所に立つ私に気がつき振り向いたエルヴィラの目は、覚醒したばかりでギラギラとエネルギーに満ちていた。


「まあ、ルシル様っ!?どうしてここに?いえ、それよりも聞いてください!」


 エルヴィラは騎士達から離れ私の元に近づくと、興奮気味にニコニコとはしゃぐ。


「私、光魔法は随分上達したと思っていたんですけど、勘違いでした。なんと、先ほど覚醒したんです!!体中に力が漲っていて……私の中の光魔法が、教えてくれるんです。これで、これで、フェリクス様とレーウェンフックの呪いを、解くことができるって!」



 あああ、ごめんなさいエルヴィラ!絶対にそれをしてもらうわけにはいかないのよね……!!



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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
― 新着の感想 ―
[良い点] 猫語が癖になります。
2022/12/13 12:06 退会済み
管理
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