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80_そんな未来、問題しかないです!

 


 エリオスの話を聞いて、私には一つ気になったことがあった。


「どうしてマオウルドットにはその話をしたの?」

「……未来が予知夢よりずいぶん変わってしまったみたいだったから。万が一、エルヴィラの覚醒よりも僕が死ぬ方が先だったら大変でしょう?だから、もしもの時には少し時間を稼げるように、マオウルドットの魔力を分けてもらったんだ」

「なるほど……」


 確かにギリギリの時にドラゴンであるマオウルドットの魔力があれば、最低限死ぬことはないかもしれないわね。ただ生きているだけっていう、ひどく苦痛の伴う状況にはなってしまうでしょうけれど。


「エリオスがフェリクス様の呪いを自分には解けないって言ったのは、呪いの中心に自分がいたからなのね」


 私の言葉に、エリオスは困ったように微笑む。だけど、そんな曖昧な態度で私を煙に巻こうなんてそうはいかないわよと、私は続ける。


「マオウルドットに、もしもの時には私の記憶を消すように言ったのはどうして」

「……あいつ、そこまで話したんだ。さすがドラゴンだよね、少しも空気を読む気がないじゃないか」

「答えなさい、エリオス」


 そう。エリオスは、状況次第では私の中からエリオスの記憶を消すようにマオウルドットに頼んでいたのだ。本当に信じられないわ!そもそもそんなことができるのも驚きだけれど、どうやらマオウルドットの封印を修正するときに手心を加えて、エリオスがこれまで解いた呪いを呪具に溜めていたものを一度だけ使えるような形に変換して分け与えていたらしい。とんでもない力よね……。どれほど呪いの研究をしていれば、そんなことができるようになるのか。ますますエリオスの過ごしてきた時間の長さを感じて切なくなる。

 少しふざけたようにマオウルドットを責めてみせたエリオスは、私が詰め寄ると観念したように大きくため息をついた。


「もしも、万が一、僕がいなくなったあとでリリーベルが責任を感じるようなことがあれば、耐えられないと思ったんだ。……ふふふ。リリーベルが永遠に僕のことを考え続けるのも悪くないなって、少し迷ったんだけどね」


 全てを聞いて、ふつふつと怒りが湧いてくる。エリオスは、自分のしたことを知ったら私が怒るんじゃないかって怖がっていたみたいだけれど、そうね、その通りだわ。


「本当に、大変なことをしてくれたわね、エリオス」

「……ごめんなさい、リリーベル。僕のせいで、たくさんの人が苦しんで──」

「そうじゃないわよ!もう!エリオスったら、私のことを分かっているように見せかけて、全然分かっていないじゃないの!」

「え……?」


 私は別に、特別善人でもないし、もちろん聖人君子でもない。正直な気持ちを言うならば、会ったことも見たこともないフェリクス様の代々呪われていたご先祖様なんて全然興味もないし、それよりも目の前のエリオスの方が大事に決まっているじゃない!


「エリオスがこれほど苦しんでいて、どうして関係ない人の気持ちを慮ってあなたに怒ると思うのよ!私が怒っているのは、あなたがこんなに大事な話を私に黙っていようとしたことについてよ!」

「──っ!」


 だってそうでしょう?マオウルドットが口を滑らせなければ、私は何も知らないまま、エリオスが死んじゃっていたかもしれないなんて!おまけにエリオス自体を忘れさせられるかもしれない危険まであったなんて、そんなの許せるわけないでしょうが!


 なによりも、エリオスがこんな運命を受け入れて、すっかり諦めてしまっていることに腹が立つ。


「だけどね、私はこんなに弱った病人に怒るほど人でなしでもないから、お説教は後にする。()()()()()()()()、ゆっくり怒ってあげるから、覚悟しておくことね!」


 私は立ち上がると、びしりと人差し指をエリオスに突きつけて宣言する。


「リリーベル……それは……無理だよ」


 ついでにエリオスの弱気も、鼻で笑ってやった。


「フン!私が絶対にエリオスを死なせないわ!ほら、何をそんなに沈んだ顔をしているの?今まで私が、エリオスに嘘をついたことがあった?」

「……ううん」


 くしゃりと顔を歪め、目に涙をいっぱいに溜めたエリオスの体をゆっくりと抱き起す。全部話したことで少しスッキリしたのか、それとも……最後の時が近づいているから残りの力が寄り集まっているのか、多少元気が出てきたみたいで、エリオスは自分の力で立ち上がることができた。

 もちろん、最後になんてさせないけれど。


「さあ、それじゃあ、行くわよ!辛いかもしれないけれど、無理してでも頑張ってもらうわ!」

「行くって、どこに?」


 ふふん!私も伊達に予知夢を見てきていないし、そうおバカじゃないからね!


「予知夢のエルヴィラは覚醒の勢いで呪いを全部吹き飛ばしたけれど、覚醒のきっかけが弱かったみたいで、まだそうはなっていないわよね」


 エリオスがまだ生きているのがその証拠だわ。一瞬で呪いを吹き飛ばすほどの覚醒を促した、予知夢の私の闇魔法の暴走がどれほど強かったかが分かるって感じね。うふふ、さすが私!


「だけどきっと、そのタイミングはあまり大きくずれることもないでしょうから、私の勘が正しければそろそろ悪魔のお出ましよ!」


 私の中には、強い決意が宿っていた。


(──エリオスの命がかかっている以上、エルヴィラに呪いを消し飛ばさせるわけにはいかない)


 今までとは真逆の方針になってしまうけれど、仕方ないわよね!




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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
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