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108_女王陛下とのご対面

 

 私はオレリア殿下と引き離され、すぐさま女王陛下の元へと連れていかれた。

 どうやらここは女王の間らしい。謁見室や執務室とも違い、私室ほどプライベートな空間でもない。


「お前がオレリアが連れてきた新しいメイドね?」


 女王陛下の御前に差し出された私は、頭から足の先までじっくりと観察する視線を感じながら、王族への敬意を示す礼をとった。


「女王陛下にご挨拶申し上げます」


 頭を伏せたまま部屋の中をこっそり観察してみる。

 壁際には数人の護衛騎士がぴしりと並んでいて、そばにはメイドも控えている。ふむふむ、ここにいる騎士様達は、クリス様とは騎士服の色が違うのね。きっとどの王族の護衛かで色を分けているのだろう。

 クリス様は赤を基調としたもので、女王陛下の騎士様たちは緑を基調としている。


 椅子に座る女王陛下は、美しい銀髪をきっちりとまとめて結い上げ、シルクが美しく見るからに上等なつくりだと分かるドレスを身に纏っていて、王族の気品漂うオーラのある方だった。

 うんうん、高貴な方ってこうでなくちゃね!美しくて、優雅で、上品で、かっこいい!


 素敵!


 少し切れ長の目で、唇を引き結んでいて、確かに厳しそうな方だなと思うけれど、意地わるそうなお顔には見えないし。


「顔をあげなさい」


 言われた通りにすると、じろりと睨まれてしまった。


 おっと?意地悪な方ではなさそうだけど、私のことは嫌いっぽい。

 姿は知らないはずだとはいえ、女王が知っている大賢者はエリオスだから、私が大賢者だとはバレてないと思うんだけど……。

 そこまで考えて、きっとオレリア様が突然連れてきた知らないメイドを警戒しているんだわと気が付いた。

 オレリア様はうまくごまかしてくれているはずだし、新人のメイドを直接知らないことなんてざらにあるはずだから、きっと親心ってことなんじゃあないかしら?


 そう思い、勝手に心が温かくなる。

 私は今世の両親の愛には縁はないけれど、前世の飼い主たちのおかげで、親の愛を知っているし、そういうのは大好きなのよね。


「オレリアがメイドとしての教育をすると聞いていますが、お前の教育はわたくしがします」

「はい!よろしくお願いします!」


 元気よく返事をすると、周囲からなぜか戸惑うような空気を感じたような気がするけれど、なぜだろう??


「スランでは現在大事な儀式を間近に控えていて、陛下も気を張っていらっしゃるのです」


 女王の間を出た後で、老年の紳士に捕まえられて困ったような、心配するような顔でそう告げられた。

 なんとこの方は宰相様らしい!女王陛下の側近でもあるので、こうしてフォローに来てくれたってことよね。


 スランの人達って本当に優しい方ばかりだわ!


「はい、ありがとうございます。女王陛下に認めていただけるように全力で頑張ります!」


 嬉しくなって、元気にそう答えたのだけれど、宰相様はますます心配そうにするばかり。

 ええっと、なんでだろう?みんなこういう顔で私を見ているよね?私って、そんなにお仕事ができなさそうに見えるのかしら??

 まあ、「失敗すればいい!」と言わんばかりに意地わるそうにされるよりはいいんだけれど……。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 夜、女王陛下に与えられたメイド部屋からこっそりと抜け出す。

 スラン王国ではメイドに与えられる自室も一人部屋でよかったわ。夜中に抜け出すことをバレたら大変だもの。


 向かった先は、オレリア殿下が教えてくれた、人目につかない庭園の隅の方。

 私が到着すると、すでにフェリクス様が待っていた。


「お待たせしてすみません」

「いや……大丈夫だったか?」


 こうして夜に落ちあって、報告や各々の現状を共有することは、王城に入る前に決めておいたことだった。どうしたって、私とフェリクス様は別行動をすることになるわけだからね。

 本当はマオウルドットとの連絡みたいに、念話がつかえればいいんだけれど……。フェリクス様はまだ練習中だ。実を言うとあれはとても高度な魔法で、なかなか習得が難しいのだ。

 フェリクス様も私の魔力を持っているから、そのうち出来るようになるとは思うけれど。


 ……そういえば、マオウルドットも猫ちゃんたちも好きに出かけたきり姿を見ていないわね。まあ、危険な状態になったりしたらそれこそ念話を飛ばしてくるくらいはするだろうから、大丈夫なんだろうけど。

 それよりも、毛玉妖精はどうしたんだろう……と思ったら、フェリクス様の肩に大きな毛玉がついていた。


「まあ、毛玉ちゃん!あなた、フェリクス様と一緒にいたのね」

「……俺もまさか俺と一緒に来るとは思っていなくて、本当の毛玉かと思って摘まんで捨てそうになった」

「ふふふ、毛玉ちゃん、捨てられなくてよかったわね」


 毛玉はぶるる!と震えて見せる。返事をしているらしい。


 簡単に私が女王陛下に教育を受けることになった話をした後、昼間に気になっていたことを聞いてみることしにした。


「アーヴィン様とは、ひょっとして予知夢の中で親しくされていたんですか?」


 どうも、フェリクス様の様子が完全な初対面じゃないんじゃないかと感じたのよね。なんとなくだけれど。

 フェリクス様は私の言葉にぴくりと反応する。


「……そうだな、予知夢でも関りがあった人物だ。……今回は、仲良くなれそうもないが」

「え?」


 後半なんて言ったのかが聞き取れなくて聞き返したけれど、フェリクス様はなんでもないと言って教えてくれなかった。


 ……けれど、私はピンときましたよ!

 ひょっとして、ひょっとして、アーヴィン様とフェリクス様は、オレリア殿下を巡って恋のライバルなんじゃあないかしら!?

 オレリア殿下の近くにいる、ちょっと軟派な騎士でありご令息。だけれどそんなちょっとチャラチャラとした態度は実はわざとそう振る舞っているだけの偽りのもので、本当は一途な想いを抱えているの!

 それを真摯にぶつけることができなくて、わざと女性に軽く振る舞っているんだわ。

 どうしてそんな風に思うのかって?

 だって、ローゼリアやヒナコが好きだった恋愛小説で、そういう男の人をたくさん見たことがあるんだもの!


 私、ローゼリアたちのおかげでなかなかの恋愛マスターなのよね!

 これから一波乱も二波乱も起きちゃったりして。

 そう思い、ニマニマしていると、フェリクス様に不審な目で見られてしまった。



 とにかく、明日から女王陛下による私の実地教育が始まるので、まずはそれを乗り越えなければいけない。

 オレリア様には大変な事態になったと謝罪されたけれど、よく考えれば女王陛下直々に教育してもらえるなんて、とんでもなく光栄なことよね。


 オレリア様としては大賢者であり侯爵令嬢でもある私が本当にメイドとしての教育を受けるなんて……というところなのかもしれないけど。でも、私が自分のことは一通りできることは、レーウェンフックに迎えられたばかりの頃の一人ぼっちの離れでの生活でも証明済みだし、多分、他の人のお世話も問題なくできると思うのよね。

 それに、全く嫌じゃない。むしろわくわくするわ!

 新しく何かを覚えること、新しくできることが増えることって、とっても楽しいものね!


(せっかくならどんなご要望でも完ぺきに答えます!なーんて、スーパーメイドを目指しちゃおうかしら??)


 それはとてもいい目標な気がして、フェリクス様にも宣言すると、生温かい目で「応援している」と言ってくれた。


 もちろん、本気でそんな風になれるとはさすがに私も思っていない。メイドのお仕事ってとっても大変で奥が深いことを分かっているからね。

 けれど目指すだけならいいわよね。


 つまり、それくらいの気合いで挑もうというわけだ。


(私の頑張りに、女王陛下がこんなにやる気のある子だったなんて!と、感心しちゃうかもしれないわ!)


 想像すると楽しい。

 アッ!と驚いちゃうくらい、全力で頑張ろう!



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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
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