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96_大賢者誕生!

 


「ええっと……私が次の『大賢者』様になる、とは?」


 言われた内容に戸惑って思わず聞き返すと、エドガー殿下は深く頷いた。


「そのままの意味だよ」


 ……私が、大賢者になる。

 うーんと、それってつまりどうなるのかしら?もしも私がそれを承諾したとした場合の想像が全くつかなくて困ってしまう。

 すると、そんな私に気がついたのか、エドガー殿下は説明を付け加える。


「大賢者になると言っても、普段の君の生活や立場が何か変わるわけではないんだ。華々しく大賢者襲名のお披露目をしたり、その名を知らしめるために有名になってもらったりする必要はないしね。そもそもエリオス殿だって、その名と存在は隠されていたわけではないけれど、その実態を知っている者などほとんどいなかったわけだし」


「たしかにそうですね」


「ただ、この世界に呪いという絶望が存在している限り、呪いを解くことができる力という希望に、救われる人が存在する。これまではそれが大賢者エリオス殿だったわけだ」


 なるほど。恐らく、もともと呪いを解く力を持つ者がイコール大賢者だったわけではないのだろう。だけれど、エリオスが呪いを研究し尽くし、それを解く力を誰よりも高め、そのうち大賢者と呼ばれるようになったことで、その地位が明確になっていったのではないかと思う。

 そして、力を失ったエリオスは、このまま大賢者であり続けることはできない。


 エドガー殿下は居住まいを正すと、改めて私を真摯に見つめた。


「ルシル嬢。改めてお願いしたい。エリオス殿に代わって大賢者となり、王家から依頼する呪いの解呪を請け負ってもらえないだろうか?あれほど強く、長い月日はびこり続けたレーウェンフックの呪いを解いた君にしか頼めないんだ。もちろん、大賢者が王家の依頼で解呪を請け負っていること自体は公にされてはいないことであり、従ってこの頼みは公式のものではない。だから、君には断る権利がある」


 なるほど、だからか、と納得する。なぜなら、今私たちがいるのは殿下の執務室で、正式な謁見などではないからだ。もしもこれが公の場ならば、私を大賢者にというお願いは『お願い』という名の『命令』でしかなくなってしまう。

 エドガー殿下は本当に私に選ばせてくれるということね。


 だけれど、私には特に迷いなどもなかった。


 大賢者がどうとか、そういうのはおいておいて。私には、今回の件で感じたことがあるのよね。

 それは、悪魔は昔から変わらないということ。


 はっきりと明言とはされていないから、知らない人も多いことだけれど、呪いの力は悪魔の力だ。呪いを解く方法は様々あって、一番どんな呪いにも対応できるのが悪魔をも上回る強い光属性の魔力……つまり、エルヴィラのように、人が聖女と呼ばれるほどの力。

 私がリリーベルの頃には、闇の魔法を使う人も、光の魔法を使う人も多かったけれど、今はその数がとても減っているように思うのよね。長い年月に、きっと色んな事があって、昔よりもずっと稀有な力になってしまったんだと思う。


(闇の魔法を使うからって、呪いをかけたなんて私が冤罪をかけられるくらいだもの。正しい情報があまり知られていない証拠だわ)


 まああれは、バーナード殿下がとんでも勘違いをしていただけといえばそれまでだけど……。


 それはさておき、光の魔法を使える人がとても少なくなっているということは、呪いを解ける人も少なくなっているということ。そして、エリオスが大賢者として長い間活躍していたことからも分かるように、それ以外の方法でも呪いを解くことができる人が、ほとんどいないんだということは簡単に想像できる。


 リリーベルだった私の歴代飼い主たちは、皆呪いを解く力を持っていた。だから、私は呪いの色んな解き方を知っている。

 それなら、やらないっていう選択肢はないわよね!

 だって、誰かがどこかで苦しんでいて、それを私なら助けることができるんだもの。


「私にどこまで出来るかは分かりませんが、出来る範囲のご協力はさせていただきたいと思います」


 だから私はそう言って、エドガー殿下に向かって承諾の気持ちを込めて頭を下げた。

 エドガー殿下は安心したように微笑む。


「ああ……よかった。もちろん、ルシル嬢に解けない呪いがあったとして、そのことで君が責任を負うなんてことはないから安心して。それから、大賢者であることを知らしめる必要はないけど、隠す必要もないから、場合によってその肩書きを使うこともしてくれて構わない」


 それって、結構破格の対応なのじゃないかしら?だって、たまに王家の依頼を受けて解呪の協力をするだけで、私は「大賢者」という権力を手に入れるということでしょう?

 もちろん、その力を無闇に使うつもりはないけれど。だけどいざという時にその身分を明かしても問題ないというのはありがたいわよね。


 いつぞやの、万能薬を配って回った時のことを思い浮かべる。あの時だって、私がまるで天使かのような噂が広まった後は、とってもすんなり薬を受け取ってもらえるようになったものだ。まあ、あの噂は今思い出してもちょっとどうかとは思うんだけどね?


 まあそれはともかく、こうして私は、エリオスから『大賢者』を引き継ぐことになったのだ。


 ふふん!大賢者ルシル、誕生です!




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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
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