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罪と罰

今回もお相手は決めていない

「クリスティーナ、どうして口をきいてくれないんだい?」


寝室のベッドの上で枕を抱えている愛しい彼女に尋ねると、彼女は柔い頬をぷっくり膨らませてふいっとそっぽを向いた。そんな少女のような振る舞いに思わず悶えたくもなるが、何故彼女が怒っているのかとんと検討がつかないのだ。


「私の何に怒っているんだい?言ってくれないと分からないし直しようもないのだが・・・」


ベッドの端に座り彼女に語りかける。あくまで優しく。私には思い当たる節がないのだが、きっと彼女の琴線に触れることがあったのだろう。


「・・・・・・」

「・・・・・・・・」


沈黙が続く。これが他人ならば苛立つのだろうが相手が彼女というだけで沈黙すら嬉しく感じる。根気よく待ち続けていたからか、彼女の体から力が抜け始める。もう少し待てばきっと話してくれるだろう。そういえば私が部屋に入ったときからずっとベッドの上にいたが喉は渇いていないだろうか。テーブルにもそれらしきものは見当たらない。きっと飲み物が欲しくなるだろうから誰かに持ってこさせよう。そう思って立ちあがり扉の方へ歩いていくと、


「いかないで・・・」

「クリスティーナ?」


ドアノブに手をかけたところでか細い声が聞こえて振り向くとアメジストの瞳からはらはらと大粒の涙を流しながら私を見つめる彼女の姿があった。

その姿に一瞬でお茶のことなんて吹き飛び、急いで彼女を抱きしめるためにベッドの彼女まで駆けた。


「どうしたんだい?私は何処にも行かない。君が喉が渇いているかもとお茶の用意をさせようと思ったんだ。声を掛けたらまた戻るつもりだったんだよ」

「ほん、とうに?」

「本当だ。なにが悲しい?」


腕の中で震える彼女を落ち着かせるためにぽんぽんと背を撫でる。落ち着いてきたのか震えも治まってきた。そしてポツリポツリと事の詳細を語り始めたのだ。


「・・・そう。そんなことがあったんだ」


こくりと頷く彼女の頭を撫でる。しかし今の私の顔は彼女には見せられない。きっと酷く残酷な顔をしているだろうから。


「私は、最初言われたとき嘘だと思いました。だけど貴方が夜遅い日の翌日に彼女達はやって来るんです。それが続いて、嘘か本当か分からなくなって・・・」

「私が浮気をしているかもと疑ってしまったんだね。その話をしてきた婦人達の名前は分かるかい?」


頭の良い彼女は全ての名前を覚えていた。そしてその名はすべて、私が裏の仕事で関わっていた者達のものだった。関わっていたと言っても、向こうは罪人で、証拠を掴むために甘事を囁いてやっただけなのだが勘違いをした上に彼女に牙を向けるとは。殺すだけでは足りないな。


私は大きく息を吐いて彼女だけに向ける顔に戻す。


「私は浮気なんてしない。こんなに愛しい人がいるのにする意味がわからない。詳しくは言えないけれど、君を煩わせた原因達はすぐに居なくなるから、私を信じてほしい」

「信じます。だから、あまり酷いことはしないでくださいね?」


私の考えていることを察してしまったのか、釘を刺されてしまった。しかしそれは無理な話だ。なぜなら・・・


「勿論」


奴等は私の大切なものに手を出したのだから。






















ひと月後、身元不明の遺体が数体、国のあちらこちらで発見される。行方不明になった貴族の婦人のものではないかという憶測もとんだが、全ての遺体の顔が潰されていた為、捜査は断念された。


















「死んで罪から解放されたんだ。私にしては優しい処罰だと思うけれどね」





クリスティーナが浮気を疑ったのは、お相手が仕事の上で対象者にちょーっと優しい言葉をかけたら対象者が勘違いしちゃってお相手が好きなのは私なのよ的なことを次から次にクリスティーナに言っちゃうもんだからクリスティーナは最初は信じてなかったけど(お相手の執着が半端ないので)タイミングよく現れるご婦人どものせいでもしかしてと半信半疑になり、溢れた気持ちが決壊し号泣。お相手慌てる。理由を聞いてお相手激怒という流れ。


最初はもっとライトな焼きもちくらいにしようと思ったのに何故こうなった?

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