ある男の話
とりあえずこれで本編は終了です。
あれから何百年過ぎたのだろうか。今の魔王陛下の治世になってから、更に言ってしまえば妃陛下を迎えられてからは比較的平穏が保たれている。地が揺れ、空が濁ったのは妃陛下の御身が危険に晒されたあのときだけである。もし万が一にも妃陛下の身になにかあれば・・・考えるだけでも恐ろしい結末しか待ち受けてはいないだろう。
私はあの事後に陛下に受けた言葉を思い出しながら地下深くへと続く階段を降りていく。高潔であり気位の高い我等ヴァンパイア一族の長である私にとって最も大きな罰であり、そして受け入れざる得ない贖罪である。私は一つ溜め息を漏らし、数年ぶりになる目の前の鉄の扉を気重く押し開いた。
「・・・二百年ほど前とは随分様変わりを見せたものだ。以前は獣との交わりは忌避していたものだがな」
此方の声も届いているのかどうか・・・目の前のそれは獣人に犯され、それに応えるように腰を振っている。耳にこびりつく不快な嬌声に自然に眉間に皺が寄っていく。
「獣人の、それの腹の子はお前のか?」
「さあ?産まれてみるまではどの種族の混血か・・・なにせこの女は毎日多種族の男を相手にしてますからねぇ」
獣人の男はいつ産まれてもおかしくないほど脹れ上がった腹を見てニヤニヤと笑う。
「まあ、貴方様のお子でないことは確かだと。ヴァンパイア族やドラゴン族、エルフ族は勅命がない限りは来ませんし、決して中には放ちませんからね」
男の言葉に苦い顔をする。確かに、以前ここに訪れたときも私はあれを一度しか犯さず、しかも子種を授けることすらしなかった。もしこのような穢れた女に私の子供が宿ってしまったら・・・結果は自ずと見えてしまう。自分の子供を殺すことのないように、あれを孕ませることがあってはならない。
しかし陛下の赦しがない限り、私はこの命尽きるまであれを犯さなければならないのだ。それが罰であり贖罪なのだから。
「まあ、やるなら今がいいと思いますよ。既に孕んだあの躯には、貴方の子種を植え付けることはできませんからね」
「ちっ」
私は下肢の衣装を緩めると、股を開き男を待ち構える婬魔へ己の分身を沈めるのだった。
あれが死ぬまで私の子供を孕まなかったことだけが、私の唯一の救いである。




