物語は終わる
本編これにて最後であります!!
「私、ガイナリウス様とは寝室を別に致しますわ」
この言葉を聞いたときの彼の反応はとても面白かった。まるで世界の終わりが目前まで迫ったような、とてつもない悲壮感が隠すことなくすべて晒け出されていた。
「く、くりすてぃーな、それはあまりにも・・・」
動揺が過ぎてまるで言葉を覚えたての子供のようだ。ロシュといい勝負かもしれない。
「ガイナリウス様が私の細やかな願いを受け入れてくれさえすればそのようなことにはなりませんわ?たまに一人寝はあるでしょうけれど、それ以外は今まで通りに仲良く眠ることができますのよ?」
ちなみに仲良くのところは強調してある。その含みに気付いた彼は子供の前だというのに欲情を隠しきれず瞳が爛々と輝いている。
「・・・一日だけだ。七日のうちの一日だけ、それと共寝することを許そう」
誘惑に負けた彼は少しだけ思考した後そう言った。誰もが恐れる魔王陛下も弱点があると改めて認識した瞬間である。この後も私は事ある度にちらりと誘惑を覗かせ、様々な権利を獲得していくのだった。そんな姿を見てしまった宰相からは、「魔力さえ伴えばどちらが魔王陛下か分かりませんね」などと言われることも珍しくなくなるのだった。
それから凡そ数百年過ぎ・・・
「子供達が各種族を纏めるために出ていってしまって寂しくなりましたわね」
私の長い髪を神聖なものに触れるように撫でる彼に呟く。ロシュとルナの他に数人ほど産んだが、成体になるとロシュ以外は城を出てしまった。ロシュも各種族の実態調査をと暫くの間城を空けている。それぞれが魔鳥で現状を伝えてくれているけれどやはり顔を見れなくなるのは寂しいものだった。
「これが永遠の別離というわけではない。我等の子等だ。この先も長く生きるだろう」
「そう、ですわね」
彼の魔力で生きる私は彼と同様、老いも病も知らず彼と出会った頃のままを保ち続けている。
「そんなに寂しいならばまた子を作るか?」
「・・・考えておきますわ」
確かにこの空いた隙間を埋める方法として一理あるけれど、でも暫くは私の我が儘を聞き入れ続けてくれた彼の為に時間を使おうと思う。
「それよりも、久しぶりに二人きりで遠くへ出掛けたいですわ。連れていってくださりませんか?」
「勿論、何処へでも連れていこう」
不敵に笑う彼の手に自らのものを乗せると、ゆっくりと扉へ向かう。少しだけ遅い新婚旅行はどんなものになるだろうか。どんなものでも、きっと彼となら胸が高鳴るに違いない。私は新たに始まる冒険物語に心踊らせながら、彼に微笑みかけるのだった。
とりあえず終わることができて良かった。自分の中では結構長く続いた方なので終わりまでいけるか不安だったけど完結にもっていけて満足です。この後あの婬魔ちゃんの肉人形を一話、宰相様視点でお送りし、あとは気まぐれに番外編というか書いてみたかった話を入れていきたいと思います。
最後に、これまでこの作品を読んでくださり、また、メッセージで応援してくれた皆様、本当にありがとうございました。
もしこんな話が見たいという注文があれば検討しいけそうなら書きたいのでご要望くださいませ。




