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大団円

大変遅くなりました!!

「おかあたま」


呂律の回らない幼い声が自分を呼ぶ声に振り向くと、目下には父親譲りの端正な顔立ちの息子が両手をいっぱいに広げて此方を見上げていた。


「どうしたの、ロシュ」

「だっこ、してくだしゃい」


ぴんと指先まで伸ばして抱っこを主張する息子にくすりと笑うと、屈んでその体を抱き上げる。


「甘えたさんね。この前は抱っこは卒業したって言っていたのに・・・一体どうしたのかしら?」


力一杯抱きついてくる息子をあやすようにリズムをつけて揺らすと、首もとに顔を埋めていた息子がぼそりと呟いた。


「ルナがうまれてからおかあたまはルナばっかり・・・ルナのほうがかわいいのでしゅか?ボクはいらないでしゅか?」

「・・・寂しい思いをさせてしまったのね。ご免なさいロシュ。でもね?ロシュは私とお父様の大切な子よ。いらないなんて思うはずがないじゃない。そんな悲しいこと言わないで?」


背中を優しく撫でると小さな手がしっかりと力強く私の首に巻きつく。首に頭を擦り付けるところは息子の父親そっくりだと変なところに親子の繋がりを感じる。


「じゃあ、そうねぇ・・・今日は一緒に寝ましょうか。ロシュが大きくなってからはなくなってしまったものね」

「駄目だ」


息子が返事をする前に深みのある声が耳に届く。声の主は勿論我が夫である。


「クリスティーナは我の妻だ。他の男と眠るなど許すはずがないだろう」

「ガイナリウス様、ロシュは私達の可愛い息子ですわ」

「息子であろうと男は男であろう?」


そう、私が早々に息子との共寝が出来なくなったのは実の息子にでさえ嫉妬をしてしまう夫のせいであった。本来なら産まれた時点で引き離される予定だったものを私が拒否したのだけれど、まだ二足歩行も出来ない息子が私に抱かれているだけで嫉妬し、ベッドで寝かしつけている場面に何度踏み込んできたか知れない。一緒に入浴しようとしたときには・・・思い出したくもない。






















そう、私はあの魔王の盲目的なまでの一途な愛を受け止めた。というよりも、自分の中にあった彼への愛情を素直に受け入れたのだ。そうなったら話は転がるように飛んでいって気がつけば魔界にはないはずのバージンロードというものを歩んでいた。いつ作ったのであろうかと首を傾げたくなるほど見事なレースを扱った薄紅色のウエディングドレスは、自分の体に吸い付くようにぴったりとこの身を包み込んでいる。さすがに教会は用意できなかったのか愛を誓い合ったのは王の間である。誓いの言葉を述べる際も「綺麗だ」とか「愛している」とか、尽きることない想いを惜し気もなく伝えられれば、熱くなっていた頬もすっかりと普段の熱を取り戻した。私も彼を愛しているけれど、きっとそのベクトルは大きく違うのだろうとうっすら思い、その後の初夜で酷使した体を労りながら、これから続くであろう熱烈な夜の情事を思っては溜め息を漏らした。


彼の重い、そして執拗な愛情を毎夜体に受けていれば当然、出来るもので・・・日の計算をした結果、初夜に貪られた際に出来たと思われる子がロシュ・・・アローシュである。彼に似て将来美麗な顔立ちになることが分かっているロシュが産まれたときは産みの痛みさえ喜びに変わるとはどういうことか理解した。それくらい我が子は愛しい。愛しいから自らの手で育て守りたいと思ったのだけれど、彼にはその気持ちが理解できないようで反対された。・・・いや、ただの嫉妬であった。前にも話した通り、私がロシュを構うと嫉妬でギラギラと炎を燃やし(物理的に)、本気で我が子の生命の危機を感じた私は彼が満足するように、それはもう色々と尽くした。そのお陰か少しの間だけは手元で成長を見ることもできたが、いつの間にか引き離され、会うことが出来るのは彼が執務中の間のみになってしまった。なんとかその時間を延ばそうと奮闘している間にお腹には新たな命が芽生え、再び悪阻に振り回されることになって今に至る。


娘ルナが産まれ体調を崩してしまい、久々のロシュとの対面なのだ。体調はすぐに戻ったのだけれどルナに手をかけているとどうしても時間がとれずロシュに会いに行けなかった。母親失格だとは思いながら、聡明なロシュは文句一つ言わないものだからつい甘えてしまった。その結果、ロシュが泣きそうになりながら私に手を伸ばすまで追い詰められてしまった。ならば私は彼を敵に回してでもロシュの願いを受け入れる。


二児の母となった私は存外心も強くなっていたのだ。





「ガイナリウス様、私は今夜はロシュと共に眠りますからね?」


私の強い言葉に瞳を輝かせるロシュ。本当に寂しい思いをさせてしまっていたのだと反省する。しかしここで退かないのが彼である。


「ならぬと言っているだろう」


途端にしゅんと瞳を曇らせる。大丈夫だと小さな背中を撫で、強めの視線を彼に向けた。


「私は、今までガイナリウス様の仰ることを素直に聞き入れておりました。ですからガイナリウス様も私の願いを聞き入れてくださいまし。ガイナリウス様は私の伴侶なのですわよね?伴侶の意思は尊重するものだと学んだのですが」


宰相に聞いた話にそんな内容があったのを思い出し、強く主張をする。


「ガイナリウス様は私を愛してくださってますよね?なら、私の細やかな願いを聞き入れてほしいのです。もし、受け入れてくださらないなら・・・」


5月は色々イベント(暦的なもの)あって仕事に追われていました(^o^;)また夏休みは忙しくなるだろうからそれまでに完結できたらいいなぁ・・・

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