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身に迫る危機

目が覚めると、砂と埃で汚れた床の上に、両腕を縛られた状態で寝かされていた。ぼんやりとする頭でどうしてこんな状況に陥っているのかを思い出すと浮かび上がったのは忘れもしない真っ赤なドレスであった。


どうやら私はあの婬魔の手により城から連れ出されたらしい。らしいというのは、部屋には窓がなく外が見えない為に此処が何処だか分からないことと、私が城の全てを見たことがなかったからだ。もしかしたら城の使われていない部屋に拉致されたのではとも考えたが、その可能性は低いだろうとすぐにそれを捨て去る。あれでも一応は魔力のある魔族であるから、私を連れ出すことくらい容易であろう。


それにしてもなんて愚かなのだろうか。あれだけのことをして処罰も寛大な処置を受けたというのに、自ら命を捨てる真似をして。呆れを通り越して憐れである。


「あらぁ、目が覚めたのねぇ」


耳障りの悪い甲高い声が反響し、その声の主に目をやれば、大胆に胸元の開いた真っ赤なドレスに身を包んだあの女が居た。


「ふふっ、無様ねぇ。汚い地べたに這いつくばって身体中泥や埃だらけ・・・溝鼠のようよ?でもお似合いねぇ」


体を揺らしながら悦に入ったように嗤う女を俯せの体勢で見上げれば、その瞳はまるで虫を見るかの如く酷く侮辱の気を帯びていた。


「そうよ。お前のような人間風情が我等の陛下と・・・いいえ、魔界に存在すること自体が許されないのよ。許されるとしたら精々家畜のように精を搾取されることくらい」


ニヤリと唇を歪めて決定的な言葉を発した。


「だから私が貴女に存在意義を与えてあげるわ。これから貴女はこいつらの精の捌け口になってもらうわ」


そう言って指を鳴らした次の瞬間、古びた木の扉から複数の獣が入ってきた。獣、というのは些か間違っているかもしれない。二足歩行をし服を着ている獣の頭を持つ魔族。所謂これが獣人というものだろう。しかし彼等に意志があるのかは分からない。何故なら瞳孔は開き開いた口からは大量の涎が垂れているから。


「こいつらは魔族の中でも下等な連中なの。私の魔力で思いのままよ。こんな風にね?」


そう言って深いスリットの入ったドレスの裾から脚を出すと、獣人はその前に膝まづき長い舌をそれに這わせた。獣人の興奮度から、その行為が性的なものを表しているのが理解できる。


「ふふっ、私の体が欲しくて犬のように従順なのよ。私の命令でどんなことでもするわよ。そう、例えば・・・・」


これでもかと唇を引き上げて高揚した声を上げる。


「この場で貴女を犯す、とかね」


やはり、と瞳を閉じる。この女のプライドと私への憎悪を最大限に満たすのは、私が魔王以外の輩に純潔を奪われることだからだ。そして思い出す。本来私が向かうべきバッドエンドを。

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