愚直な愚行
あけましておめでとうございます。ちょっと、いやかなり間が開きましたが(短編を書いていたなんて言えない)今年も宜しくお願いしますm(__)m
あの婬魔の件から一ヶ月程経った。ガイナリアスの話では今現在あの婬魔はヴァンパイア族が監視下に置き、同じ婬魔族の族長が矯正を行っているそうだ。まあそれで更正してくれるならばいいし、出来なかったらガイナリアスがなにか考えてくれるだろうと少し楽観的に考えてしまった。その日の夜、と言っていい時間帯にガイナリアスは私の寝室へ訪れた。普通であれば密室に異性がいることは憚られる行為なのだけれど、ここは人間世界の常識が通じない場所であるし、なんといっても彼の城なのだ。主が好きに行動することに私がどうこう言える立場ではない。
「あの婬魔族の女のことだが数日後には釈放される」
「まあ、そうですか・・・更正されたのですね」
激しく嫌悪の念を露にしていた彼があの女の解放を命じたのならば、恐らくは変われたのだろうけれど。
「婬魔族の族長と見張りをしていたヴァンパイア族、そして宰相のマイヤーズの判断から決めた。我としてはこのままそなたの目の届かない場所に置いておくほうがいいと思うのだがな」
「ですが機会を与えたほうがよりガイナリアス様への忠誠が高まるのでは?」
ガイナリアスがマイヤーズやらに聞いた話では女は、大人しく与えられる課題に取り組み言葉遣いも上品になったらしい。それだけでは信用できないからとアクシデントを含めた罠を用意したりもしたが本当に性格が変わったかのような行動や態度からもう釈放しても大丈夫だと判断したとのことだった。彼等がそう判断したならば私がとやかく言うことではないと思い、仕方なくあの婬魔の擁護にまわるが彼はあまりそれを快く思っていないようで・・・
「人間と魔族ではそもそも王の在り方が違う。我らは力が全て。かような微々たる魔力の持ち主などが傍にいようが煩わしいだけでしかないな」
「そうなのですか?ではマイヤーズは特別なのですね」
あの老齢のヴァンパイアは常に彼の傍に居て、たまに彼に進言もしたりする。それを彼はきちんと聞き入れるのだから。
「マイヤーズは先王の時代より魔王に忠誠を誓っているからな。その分の信頼はある」
だからそのマイヤーズが大丈夫だと判断したから渋々ながらも受け入れたのだろう。たまに冷酷な表情を見せると思いきやこうやって身内に甘いところもありそれが私の心を擽るのだ。
「ではその信頼しているマイヤーズの言葉通り、彼女を釈放してあげましょう。私からのお願いです」
「・・・・そなたの願いならば聞き入れなければならぬか。しかし万が一そなたに危害を加えようものならその時は一切の慈悲もくれてやらぬ。我のすることに口は出させぬぞ」
よいな、と目で言われ私は頷いた。ここまで恩赦を頂いた上での愚行ならばもうなにをしても駄目だろう。まあ、そうならないように大人しくしてくれればいいのだけどね。
だけどどうやらこの婬魔は底の知れない愚か者だったようだ。
「どう?体を動かせずに芋虫のように地面に這いつくばる感想は。とぉっても惨めね!!あっはははははは!!」
地面に身体を委ねた私を見下すように立つ婬魔はお役のように高笑いをし、まるで自分が勝者のように振る舞った。




