魔界の現状
魔王様視点から始まります
我の名はガイナリアス・ディオン・ドゥ・アステリアス。この魔が支配する世界【魔界】を統治する魔王と呼ばれる者である。先代の魔王と呼ばれる存在が消滅した時より、最も魔力の高かった我が魔王となった。魔族は基本自由奔放であり、何にも縛られることはないが、それでも誰かが頂点となり畏怖を与える存在にならなければならない。その存在に、たまたま値したのが我であった。
「魔王様、残念ながら今年も新たな生命は産まれませんでした」
「・・・そうか」
人間よりも強靭で魔力もあり長命である我等魔族には唯一、致命的な欠点があった。それは子を成しにくいことだ。魔族には数種類の種族がありそれぞれの枠内でのみ子を成す。謂わば種族相姦というものである。他種族とも交わり子を成すことは可能であるが、純血を重んじる種族が多く、他種族と交わり出来た子も、そしてその親も種族から迫害され行き場のなくなった者達は失意のうちにそのまま消滅してしまうことが多い。
それでも種族相姦でも子が多く産まれるならば問題はないが、血が濃ければ濃いほど、力が強ければ強いほどにお互いに拒否反応が起こる。結果、子が産まれない。
約千年前にも同じことが起こった。いつからか子が産まれにくくなり魔族の数は減少の一途を辿っていた。当時の魔王であった先代も我と同じくこの問題に頭を抱えた。解決方法が見つからないまま、このまま魔族は消滅してしまうのか・・・誰もが悲嘆に暮れていたとき、一筋の光が差したのだ。そう、それが魔力を帯びた人間に子を産ませるということだった。問題なのは血が濃すぎること。それを薄れさせてしまえば以前のように子は出来るのだ。しかし自分とは違う種族の、しかも人間に子を産ませることに当然のように難色を示す者が多かった。自分達の消滅よりも純血を尊ぶ・・・もし我がその場にいたのなら、なんと愚かなと口にしていたことだろう。しかし今現在でもその考えが根強く残っていることをみれば最早なにを言ったところで変わりはしないのだろうと早々に諦めもするものだ。しかし先代の魔王は考えた。奴等の尊厳を守りながら種を絶やさぬ方法を。そして見つけたのが、魔王自らが子種を与えるというものであった。
魔王とは全種族を纏める者。つまりは以前がどの種族であろうが、魔王となったらその者は種族という枠組みに囚われなくなる。謂わばどの種族でもないがどの種族でもあるということなのだ。ならば魔王が自ら種族ごとに子種を与えればいいではないかとも思うが、それは直接に寵愛を与えることに繋がるため、優劣をつけないために禁じられているのだ。だから魔王が人間と交わり子を成せばその子供は自然とどれかの種族となる。それが男であっても女であっても、問題なく成長し次代の子を作る歯車となるのだ。
その考えに至った先代の魔王は探した。魔力を帯びる人間の女を。しかしもともと人間には魔力がなく、持っていたとしてもごくごく微量であった。魔王の魔力を体に入れても壊れないほどの魔力を持っていなければ意味がない。だがそれに値する人間は見つからず数十年の月日が無駄に流れていった。




