温もり
すみまへん大変遅くなりました。ロクサス編ラストです。
「おかあしゃまー」
とことこと小さな娘が庭に立つ私のもとへ駆けてくる。私はその愛らしさに微笑むと娘を受け止めるために芝に膝をたてた。
「あらあら、レディーが走っては駄目よ?」
「おとうしゃまがおかあしゃまをさがしてたからおてつだいしてたんだもん!」
注意したことに反省をせずに寧ろ誇らしそうに胸を張る娘、ティナリアに苦笑して彼譲りのハチミツ色のふわふわの髪を撫で付けた。
「ロクサス、私を呼んでいると聞いたのだけど」
「ああ、ティーナ、うん、ちょっとこっちに来て?」
ロクサスは時間ができるとこうやって邸内にあるアトリエに籠ってしまい出てこないのだけど、たまにこうやって娘を使って私を此処に呼びつける。娘はまだまだ幼い為か、うまい具合に使われていることに気付かず、大事な使命を任されたと嬉々として邸内を駆け回っている。それを諌めるのが私しかいないのでまったく困ってしまうのだけど。
「それで?今度はなにかしら?一昨日は疲れたから癒してって言ってずっと私を抱き締めていたけれど・・・」
「ティーナは僕の力の源だからね。でも今回はちょっと違うかなぁ」
そう言うと、ロクサスは徐にアトリエのドアまで歩いていきドアに鍵をかけるとにこりと微笑みながらまた私のもとへ戻ってきた。
「実はね、昨日メリオロス様に呼ばれたんだよ」
「まあ、お義兄様に?」
仕事上、たまに一緒になったりするけれど、それ以外で二人が共にいることは少ない。だから驚くのだ。
「なにか言われたの?」
暗に苛められたの?と聞いてみる。私とティナリアにはとても優しい義兄だけれど、やはりロクサスには厳しかった。それは婚約前から変わらなかったのだけれど、一向に和らぐことはないようだ。ロクサスは肩をすくめて、
「いつもとおんなじことだよ。ティナリアを引き取りたいって。メリオロス様は本当にティーナを愛しているよね」
「あら・・・お義兄様はまたそんなことを言っているの?義妹の子供よりも血を分けた実子の方がいいに決まっているのに」
「・・・ティーナのその鈍いところにたまに救われるよ」
なんだかとても失礼なことを言われた気がするのだけれど、力強く抱き締められていてその表情を伺えない。あまりにも強く抱くものだから苦しくて軽く彼の背をタップし解放を要求するも、今度はゆったりしたソファーに押し倒された。
「ロクサス?」
「ティナリアのことは置いといても、万が一のことを考えてもう一人くらい子供がいてもいいと思うんだけど・・・ティーナはどう思う?」
そう言って私の首筋に唇を当てて舌を這わせる。その行為が、彼がなにをしたいかを表していて一瞬のうちに身体が熱くなる。
「ティナリアがメリオロス様のところに養子に行っても、いつかはどこかに嫁がされるだろうし、ならきちんとした嫡子をあげたほうが喜ぶんじゃないかな?ティーナに似た嫡子なら尚更ね」
「んっ・・・だけどそれではお義兄様が結婚したときに困ることになるでしょう?」
「うーん、たぶんメリオロス様は結婚しないよ。あの人の心はずっと囚われたままだろうから」
意味深なことを口にするロクサスに、彼は一体義兄のなにを知っているのだろうかと疑問に思う。不思議そうな顔をしていた私を見たロクサスは、「男にしか分からないものだよ」と曖昧に笑うのだった。
「まあ、メリオロス様とのことは建前で、ただティーナとこういうことがしたいだけなんだ。だから・・・」
ロクサスの男としての欲望が私を貫く。
「僕が満足するまで、ティーナを貪らせて」
その日散々、ぼろ切れのようになるまで彼を受け止めさせられた私は案の定子を身籠った。しかも産まれたのはどこか私に似た男の子。そしてその子は後にミハエル家の養子として迎えられるのだけれど、どこまでがロクサスの思惑通りなのか、永遠に謎である。
end
最終回、子供が出来てましたね。最初に産まれたのはどちらかと言えばロクサス似の女の子です。まあ二人の子供なので将来絶対可愛いに決まっています。メリオロス様もクリスティーナにあんまり似ていない子だからそんなに乗り気にはなってませんがまあクリスティーナの血を半分引いてるからきっと愛せるだろうと思っております。勿論娘としてですけどね!!でも次に産まれた男の子がクリスティーナに似ていたためすぐにそっちに乗り換えます。まあ確実に愛せますからね。きっとメリオロスさんの脳内ではその子の父親は自分で母親がクリスティーナになっています。
ロクサス編はやっぱり難産でした。前編のメリオロスさんが強烈すぎたせいかなにをしようが霞むかすむ・・・自分の話じゃないのにやたら出張るしね!!もう次編はさわりに誰かが出るだけだから魔王様に好き勝手やってもらいます!!




