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歩み寄る心

あの日、ロクサスの真剣な瞳を眼にしてから、私は彼の婚約者になることを決めた。あんな・・・自分の命を盾にするまで追いつめ傷つけてしまったロクサスへの贖罪の気持ちも少しはあるのだけれど、彼の気持ちを信じたいと強く思ったから、だから私は彼の隣に立つことにしたのだ。この決意にお父様は賛成してくれた。少なからず前の婚約の無効を気にしていて、私が僅かでも尻込みすればそれに同意してこの話を拒否していたはずだ。ロクサスと私との間にあったことはなにも知らなくても、きっと私の望む方向でなにかしら手助けをしてくれたと思う。だけどそうしなかったのはロクサスの真摯な態度と私の揺れる気持ちに気付いたから。だからお父様はすべての決定権を私に与えてくれたのだ。そして私は選んだ。彼の婚約者になることを。




「こうやって二人きりで会うのも久しぶりだね」

「そうね。それが約束なのだから仕方ないとは思うのだけれど」


今、私とロクサスは一ヶ月ぶりの再会を果たしていた。婚約者なのにどうして一ヶ月も長く会っていないのか、それには義兄が私達・・・というよりも、ロクサスに課したものが関係していた。






「クリスティーナの婚約者になりたいなら以下二つを実行してもらおうか。まず一つ目、通常の婚約期間である一年間はクリスティーナに接近し過ぎないこと。まあ、俺も鬼ではないからね。誰かの監視の目がある中でなら会っても構わないよ。それでも、触れることは許さないけれどね。二つ目、クリスティーナが嫁ぐ先が地盤の弛い所だなんて俺達家族が心配だからね。どの爵位を授かるかは知らないが、せめてクリスティーナの生が続く間くらいは平穏を保てるようにしっかりと周りを懐柔しておいてもらわないとね」


お父様からの了承は得たものの、やはり義兄はそう簡単には許してはくれなかった。少しだけ浮上していたロクサスの心に大きく重りを撃ち込んだのだ。この義兄の言葉で私達は婚約したのかとても曖昧なものになってしまった。婚約者同士なら当然あるだろう甘やかな時間はさっぱり排除され、ロクサスは私と結婚するために日々貴族同士の繋がりを持つため奔走し、忙しい合間にも作品を造り上げたり、休む暇などないのではとこちらが心配になるほど心身を酷使していた。そんな中でもこうやって顔を見せに来てくれるロクサスに、段々と心ほだされてしまうのは当然のことなのかもしれない。


「折角会えたのに触れられないなんて・・・やっぱりメリオロス様は鬼だよ。悪魔だよ」


うっすらと目の下に隈を作っているロクサスは私の目の前で両腕をぶんぶん回して此処にはいない義兄に抗議している。あの場で潔く了承したものの、まさかここまで大変だとは思ってなかったみたいで僅か一週間で後悔し始めたのは記憶に新しい。それでも弱音を吐かずに着々と成果を見せ始めているところが、さすがというべきなのか、もともとあった才能が開花しただけなのか。


「はぁ、ティーナが僕の知らないところで誰かに誘惑されていないか心配だよ。最近はよく色んな家の茶会に参加するようになったんでしょう?」

「ええ、私も自分の情報網を広げておこうと思って」


良くも悪くも私は公爵家の令嬢だから、前は・・・バルトロスの婚約者候補の筆頭にいた頃は妙な派閥を生まないためになるべく誘いは断っていた。全ての誘いを受ければいいと思うのかもしれないけれどそこは貴族同士の思惑があり私の行動で物事が動いてしまうこともあるのだ。本当に面倒だったから、実はあの頃が一番楽ではあったのかもしれない。だけど今はバルトロスの婚約者候補から外れたから割と自由に動けるようになった。


「私も、ロクサスの助けになりたいから」

「ティーナ・・・・・・・!!」


なにやら私の言葉に感動したロクサスが今にも飛びかかりそうな勢いなのだけれど、義兄専属のメイド達の監視の目があるため必死に我慢している。少しでも触れればすぐに義兄に連絡がいき婚約は白紙からやり直し。可哀想に思うけれど仕方ないと割り切ることにしている。





それから約束の一年が訪れるまで同じような葛藤をロクサスはすることになる。そして漸く義兄が諦めロクサスが認められた日、私はそのままロクサスに拘束されて丸一週間、彼から離れることができなくなった。だけどさすがにお手洗いと入浴の時だけは涙目になりながらお願いしたけれどね。義兄が結婚式を終えるまで手を出すなと言わなかったら・・・私はどうなっていたのかしら。





やっとロクサスが正式に婚約者になれました。ロクサスは芸術面は勿論のこと、貴族としても認められるように頑張りました。ロクサスは今回伯爵位を賜ることになりましたが一代限りのものです。もし二人の間に子どもが産まれても平民扱いになるかどちらかの家の養子となるかの二択です。まあお兄様が結婚するか分からないので娘でも産まれようものなら実の父以上に愛情を注いでいつのまにか養女になっていた・・・なんてこともあり得ますね。



たぶん次でロクサス編は最後です。結局スランプから抜け出せずに終わりそうです。いや、魔王編のほうはなんとなく頭にあるんですけどね。

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