表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/91

ルート確定ですか?

静かな喧騒をまるっと無視して、さらにロクサスは口を開く。


「僕が物を生み出すのは、すべて彼女へ愛を伝えるため。ただそれだけのために芸術家などという一つの枠に嵌まっているに過ぎません。彼女が僕の前から消えてしまったら・・・恐らく、二度とこの指は動かなくなるでしょうね」

「随分と、執着されているようだなクリスティーナ。これでは、クリスティーナをバルトロスの妃にというのは難しそうだ」

「そうですわね。これほどまでに情熱的な愛の告白は、私、初めて耳にしましたわ。この殿方からクリスティーナを取り上げてしまったら、彼の芸術を愛する方達から批難を浴びてしまいますね」


国のトップに面と向かって文句を言う人間なんていないと思うけれど、それをも見越しての発言なのだと悟った。そして気づいた。もしかして、ロクサスはこの茶番のために私をここへ連れてきたのではないかと。国の重鎮も揃うこの会場で、ロクサスは声高々に宣言したのだ。彼が私に好意を寄せていると。もしどちらかに横恋慕しようものなら、もう二度と筆を執らないと。それが彼の芸術を心底愛する人間にとってどれほど残酷なことかわかっていて言っているのだ。


「バルトロス殿下なら、きっとすぐに心許せる方が見つかりますよ。もし殿下のご結婚が決まりましたらティアハート家にお知らせください。祝いの絵を描かせていただきましょう」


ふふふ、ほほほと私の混乱を他所に話は淡々と過ぎていく。私の関わらないところで、何故か家族でもないロクサスにより、私の妃への道はなくなったのだった。いや、べつになりたかったわけではないから、構わないのだけど、しかしそうなると私はロクサスへのルート一直線になるのだろうか。ロクサスのルートに入るとどうなったのか頑張って思い出してみる。まず出会いがこの会場だったのだけど、人の多さに気分が悪くなったヒロインはそっと会場から抜け出て庭園へ向かうはずだった。しかし道が分からず右往左往していたところにロクサス登場。うっすら涙を浮かべたヒロインの瞳に惹かれ声をかけ、話しているうちにその心にも惹かれるのだったわ。(ストーリー通りの私の横柄な態度からロクサスは女性不信になっていたはず)そしてヒロインが好きすぎて彼女が他の誰かに取られる前に上手いこと言いくるめて監禁。思考能力が低下したヒロインを産まれたままの姿にして彼女を描き続けるのが良エンド。メリーバットは確か、「君の体に中を巡る血を使えば、もっと美しい君を描ける」とか言って、死なない程度に彼女から血液を抜き続けるのだ。そして周りにはキャンバスに描かれた真っ赤なヒロイン・・・怖い。もしかして、私はそのルートを進まなければならないのだろうか。嫌だ。死ぬのと同じくらい嫌だ。


ぶるりと震える体を自ら包み込んで沈めていると、心配そうな顔をして覗きこむロクサスの姿が目に入る。


「大丈夫ティーナ。ティーナの柔肌にはまだ夜の空気は冷たいのかな」


私が震えているのは起こりうる未来に怯えているからなのだけれど、そんなこと口にできるわけもなく。


「そうね、このドレスは少し露出が多いから、肌寒いわ」

「じゃあ、僕の上着を着ているといい。似合うと思っていたけれど、やっぱりティーナの肌は他の男に見せたくないと思っていたし」


そう言って着ていたタキシードの上着をふわりと私の肩にかける。つい先程まで彼が纏っていたためか、彼の匂いと温もりが私を包み込んでまるで抱き締められているみたいに感じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ