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琥珀とロクサス

「ごめんなさいね、急に呼び出してしまって」

「構わないよ。ティーナからの呼び出しならなにを優先しても駆けつける」


あれから、漸くロクサスに贈るプレゼントが決まり、義兄の伝で手元に届いたそれを渡すためにロクサスを邸に招いた。急なことでさすがに無理かとも思ったけれど、ロクサスは嬉しそうに私のもとへやって来た。


「今日来てもらったのはね、これを渡したかったからなの」


座っていたソファーの横に置いてある小さな木箱を差し出す。ロクサスは不思議に思いながらも腕を伸ばして木箱を受け取った。


「・・・開けていいの?」

「ええ」


私と木箱を交互に見たあと、ロクサスはごく自然な動作で箱を開けた。そして中身を確認するとまた私を見て首を傾げた。


「これは?」

「琥珀・・・というらしいわ。宝石の一種なのだけれど、普通の鉱石とは違って樹液が固まったものらしいわ。昨日一昨日固まったものではなくて新しいものでも数千年は経っているらしいの。この琥珀も、中の花から1500年以上前のものだと鑑定されているみたい」


琥珀を実際に見たとき、きっとロクサスに似合うと思ったのよね。この飴色が彼の色にとてもよく似ているのだもの。それに琥珀にはマイナスのエネルギーを浄化する力があるらしいから、もしかしたらロクサスのヤンデレ化を無効化してくれるのではないかと思ってこれに決めたのだ。


「不思議よね。これが遥か昔は樹液だったのよ。こんなに固くて石のようなのに。そして中の花はその時代を生きていたのよね。神秘的だと思わない?」


にこりと笑ってロクサスに問いかけると、ロクサスは箱から琥珀を取り出すと雫のような形のそれを太陽に翳して覗きこんだ。


「いいの?そんなに古いものなら高いんじゃ・・・」

「宝石とあまり変わらないわ。寧ろ少し安価なのよ。加工までして渡しても良かったんだけど、ロクサスが好きなように使ってくれた方がいいと思ってそのまま渡したのだけど、良かったかしら」

「・・・うん。ティーナがくれたものだから肌身離さずつけていられるものにするよ。指輪がいいかなぁ」


うっとりと琥珀を撫でるロクサスに、


「それは私だけじゃなくてお義兄様と一緒に考えたものなの。お義兄様もロクサスの成人のお祝いをしたいからって。まあ、数種類あった候補の中から最終的に選んだのは私なのだけどね」

「へえ、メリオロス様が・・・考えたね」


なにを?と首を傾げるも、ロクサスは柔らかく笑うだけで答えるつもりはないようだ。


「最後にはティーナが自分で選んでくれたんだから僕は満足だよ。ありがとうティーナ。ティーナから貰ったこれは大事にするからね」

「え、ええ・・・」


いや、だから私だけじゃなくて義兄も選んだのだけど。何故か私だけから貰ったものとしたいロクサスにこれ以上指摘するのはやめた。あれ?そんなに義兄とロクサスって仲良くなかったかしら?男同士の関係ってよく分からないものねと、嬉しそうに加工の構想を話しはじめたロクサスの声をバックミュージックに、すっかり温くなったミルクティーで喉を潤した。

すっかり小話のようになってしまったこの回。いつもより短いですがご勘弁をσ( ̄∇ ̄;)

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