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本当に結婚してもいいの?その1

私の「婚約はなかったことにしましょう」宣言から早数ヶ月、あの宣言はなかったことにされ今も順調に式までの準備と義兄との逢瀬(同じ邸内だけど)は進んでいる。


「式の準備・・・私は一切関与しておりませんねメリオロス様」

「しているじゃないか。君が纏うドレスの為の採寸だっり、俺とともに絵師の前で退屈なのを我慢したり」


ドレスに関しては私が着るのだから当たり前としてその他はなにも触れていない。招待客リストの作成や会場の下見、料理や諸々のこと何一つ今現在どうなっているのかさっぱり分からないのだ。


「でもメリオロス様は把握しているのでしょう?私だけ除け者ではありませんか」

「クリスティーナの意に沿わないことにはなっていないから安心してよ。君はただ完成されたドレスを纏って俺の隣にいてくれたらいいんだ。花嫁が主役なのだから君はなにも気にせず当日を心待にしていればいいんだよ?」


私の頬に触れ蕩けんばかりの笑みを浮かべる義兄に、これ以上なにを言っても無駄なんだと早々に諦めた。下手に首を突っ込もうとすれば・・・


「あんまり可愛くないことばかり言うこの口を塞いでしまうよ?」


と下手すれば自爆してしまうから。式が近付くにつれて義兄の密着度が増えている気がする。手を繋いだり髪の毛に触れたり頬を撫でたりは当たり前、最近はそれに加えてやたら腰に触れたり抱きしめてくるのだ。まあそれは気にしない。だって彼は私の婚約者でもうすぐ夫となる方だから。ただ過度なスキンシップに慣れないせいで私のなにかがぐんぐん削れているだけ・・・中でも過激なのが・・・


「さあ、クリスティーナ。おやすみの口付けをしよう」


いつからか恒例行事となったおやすみ前のキス。これが頬とか額ならなんの問題もない。だけどそんな可愛いもので終わらないのがこの義兄だ。


「んっ、ふぅんっ・・・ちょ、っとま・・・」

「はぁっ・・・ほら、もっと舌を絡めて」


ぴちゃぴゃと水音をたてながら口内で忙しなく動く舌を必死に追う。結婚前にこれはどうなのと疑問に思うけれど、これをしないといつまでも義兄が部屋から出てくれないから、私は経験ないながらもそれに応えようと毎回息絶え絶えになりながら頑張るのだ。


「ん、だいぶ上手になってきたね。クリスティーナは頑張りやさんだから短期間でこんなにも濃厚な口付けができるようになったんだね」


まったく誉められている気にならないのは気のせいじゃないわね。普通に毎日されたら誰でもこれくらいできると思う。じとりと義兄を睨むと、


「ふふっ、怒ったクリスティーナも可愛いなぁ。それじゃあ俺は部屋に戻るとするよ。また明日」


ちゅっと額にキスを落としてから義兄は部屋を出ていった。







それからもなんら変わりない日常を送る日々。このままなにも疑問も不安も抱くことなく義兄と夫婦になるものだと、この時の私は思っていた。


「王城に、ですか?」

「うん。一応国王陛下に俺達の報告も入れないといけないからね。まあ、一貴族の結婚式に国の王が出るわけにはいけないから、対外的には謁見だけどその実は祝辞を下さると思えばいいよ。クリスティーナは特に、両陛下にとって身内と変わりないわけだし」


・・ああ、そういえば私のおばあ様が王家のお姫様でこのミハエル家に嫁いできたから、実は王家と親戚関係にあること忘れていたわ。


「やはり行かなくてはいけないですよね?」

「そうだねぇ、両陛下が望んでいるから此方から断るのはまずい・・・かな」


まずいですよね・・・正式ではなくとも国王陛下のお願いを断るだなんて反逆罪もいいところ。有り難いことに勅命ではなくお願いなのだから、ここは此方が折れて聞き入れるしかないだろう。バルトロスとのことでも、特に王妃様は胸を痛めているようだし、私がまったく気にしていなくて寧ろ幸せなところを見せなきゃ彼等は安心してくれないだろう。


「分かりました。日程はもう決まっているのですよね?」

「うん。三日後なんだけど公務の合間の僅かな時間しかとれないから前日から滞在するようにと言われたね」


私は義兄の言葉に頷くとメイドを数人呼んで宿泊の準備を始めた。




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