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罪を購う夜

遅くなりました。ついにきたスランプはやはりこういう話なんだよね・・・

夜も更け、静寂が辺りを包みこみランプの灯りのみが唯一、部屋の主たる自分と手足のごとく動くこの男を照らしている。


「随分早かったけど、もう終わったのかな?」

「ご指示の通り・・・どちらからご報告いたしましょうか」


どちら、とは言わずもがな愚かにもこの俺に喧嘩を売った伯爵と子爵だ。


「そうだねぇ・・・まずは子爵からにしようか」


伯爵にまんまとのせられ、娘を使いこの俺と関係がありさらに子供までいるという有りもしない嘘をつき、愛しいクリスティーナを傷つけた。清らかな胸を痛め、宝石のごとく美しい瞳から真珠のような涙を流す彼女を、とても愛しく自分のために感情を揺さぶったのだと歓喜したものの、それが他人がもたらしたものだというのは許せない。


「シリング子爵ですが、就寝中の子爵とその夫人、そして娘を拘束。ご命令通り、夫人と娘は子爵の目の前で凌辱後、隣国の最下層の娼館へ送りました。子爵は夜道で不審者に襲われ殺害された・・・ということになっています。金銭目的を装うため、金と貴金属類を奪取し、そこを目撃させておりますのでただの物取りと判断されるでしょう」

「それだと夫人と娘はどこだって誰かが疑問に思うだろう?」


小さなミスで此方に要らぬ矢が向いたら面倒だ。


「それについては問題はないかと。少し前から、夫人には愛人がいてその男と駆け落ちするかもしれないと噂を流していましたから。娘は以前より絵に興味があり他国で学びたいと思っていたところ、偶然出会った他国の商人が彼女の才能を買い、子爵公認で共に他国へ渡ったと・・・もともとあった話に少し上乗せして広めても得に誰も不思議には思っていないようです。連絡を取ろうにも夫人は駆け落ちで娘の相手の連絡先を知るのは子爵だけですので変に探られることはないでしょう」


そう見せかけるためにわざわざ夫人の愛人役と商人役をやっている人間がいるわけか。それなら、誰も不審には思わないだろう。しかも名も通っていない子爵家だ。多大な費用と時間をかけてまで捜査するなんてことはないだろう。恐らくこの男の言うとおり、物取りとして処理され忘れられるだろう。


「で、伯爵の方は?さすがに通り魔に襲われたは通じないだろう?あれでも伯爵という爵位持ちで未来の王妃の親だからね」


死ねば必ず捜査されるはず。彼等とは形に残る繋がりはないけれど、でも可能性はゼロではない。ただ死体にして放っておくことはできないはず。


「ハインツ伯爵家の方は身代わりを立てることにしました」

「身代わり?」


首を傾げて表情の変わらない男を見つめると、一呼吸置いた後、すらすらと流れるように語り始めた。


「貴方が危惧していらっしゃる通り、伯爵家の人間が、しかも王族に名を刻もうとしている人間が死ねば誰もが不審に思いなにかあったのではと疑うでしょう。それを防ぐには彼らの代役を立てれば良いと思い立ち、伯爵とその夫人にそっくりな体格、声音の男女を部隊の中より選出し、顔に細工を施しました。実際ご覧いただければ分かるのですがハインツ伯爵と夫人によく似通っていますので、よくよく彼等を知らない人物からはまず疑われることはないでしょう」


成る程、此方の手足となる人間が伯爵に成り済ましていると。確かにそれなら他人は騙せるかもしれないが・・・


「実の娘は欺けまい?十数年共にいたのだから」


今は王宮で妃教育を受けているがいつかは彼らと顔を合わせる時が来る。その時に不信感を抱かれ偽物だと気付かれれば厄介なことこの上ない。


「その点に関してですが・・・二人には軽い事故を起こしてもらいます。そして娘には此方の用意した医者から事故で頭を強く打ち、記憶が曖昧になってしまっている、事故の際に偶発した火事により喉が焼けて声も変わってしまったと伝えます。貴方や親の言うままの娘です。医者の言葉を簡単に信じるでしょう。後は貴方が裏で彼らに指示を出していただければ・・・」

「ではその二人は今後ハインツ伯爵とその夫人として生きるわけだ」

「そういうことになりますね。彼らもプロですから、自分達がやるべきことは分かっているはずです」


子爵は死に家は取り潰され、伯爵も死に残るのは自分の駒となる人間だけ・・・か。まあ、つまらないけどこんなものか。と、既に興味のなくなった彼等については記憶に留めておくことも無駄だとすぐに忘れることにした。


「わかった。もう下がっていいよ。ああ、そうだ、もしこの件について誰かが調べ始めたらすぐに知らせてよ。一応、此方もそれなりに用意しなきゃいけないだろう?」

「御意に」



男が去り、また一人になった自室で、夢の世界へ旅立っている愛しいクリスティーナを想い口角を上げる。


「俺達の邪魔をしようとした悪いやつらにちゃあんとお仕置きしたよ。もう君を傷つける奴等はいないから、もし現れてもすぐに消してしまうから安心してお休み?そしてまた、君の曇りない笑顔を見せておくれ」


そう届くことはない言葉を紡ぐと、ランプの灯りを吹き消した。



残虐性には程遠い・・・要修行は否めない!!さて、そろそろおにいたま編も終わりです。後残ってるのは結婚式くらいかな?このままじゃただのハピエンだーい(*´ω`*)

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