全ては義兄の手の上だったようです
今年最後の投稿です。
まるで流れるように物語かのごとく自身のやってきたことを微笑を浮かべて語る義兄に、私は震えが止まらない。表面上はきっと平然としているように見えるだろうけれど、内心は『やっぱり義兄もやばい奴だった!!』である。カップをテーブルへ戻す手が震えていないのが奇跡である。
「・・・私は、お義兄様は義妹として愛してくださっているのだと思っておりました。だって・・・」
少し考えて口にした言葉。だけどその先は目の前の義兄によって遮られてしまう。
「そんな素振りを一切見せなかったから?あの時はそうすることが正しいと分かっていたからね。もし、クリスティーナにこの胸に巣食う醜い恋情を知られてしまったら・・・きっと拒絶されて、俺は正気ではいられなかったろう。それにいつも近くには王子がいたからね。王子の判断で俺を他所にやることだって可能だったはずだ。でも、俺を見くびっていたのは王子の最大の失敗だったな。俺の気持ちを知っていて、その上でなにも出来ないだろうと放っておいた代償は大きかったと今頃ベッドの上で泣いているのではないかな」
「そこまでバルトロス様が私を想ってくださるとは想像できませんけれど・・・」
あの完璧な王子様がベッドの上で悔し泣き・・・似合わなすぎる。
「俺には想像できるし、あの王子のクリスティーナへの愛は確かに深かったと、敵である俺だから分かるよ」
同じ年月焦がれていたからね・・・そう呟いた義兄の言葉は、私には届かなかった。
「私はお義兄様と夫婦になるのですか?ですがすでに養子縁組をしているので無理なのでは・・・」
確かこの世界でも、例え血の繋がりはなくとも同じ戸籍にいるならば婚姻は不可なはずだ。私も義兄もお父様の扶養家族なのだから、やっぱり無理なのでは?
「さっき言ったよね。あるお願いをしたって」
そういえばあの話の最中にそんなこともあったかもしれない。確かお父様になにかを願いそれと引き換えに色々と教わったと。なにを願ったのだろうか。
「俺のお願いはね、もし、万が一にもクリスティーナが王子と結ばれなくなったとき、俺がクリスティーナの夫となる権利だよ」
「・・・え?ですが、例えバルトロス様との話がなくなったとしても、私は公爵家の娘ですしやはりどこかの家と繋がるための婚姻をするべきなのでは?」
筆頭公爵家であっても所詮は一貴族なのだから、バルトロス以外にも候補は上がっていたはず・・・義兄と結婚してもこの家にはなんの利益もないというのにお父様は許したの?
「クリスティーナは女の子だからあまり知らないのかもしれないけれど、義父上は政治の駒に自分の娘は使わないよ。ミハエル家が筆頭公爵であるのはどこまでもクリーンであるから。だから王家からの覚えもよく、あの王子の婚約者に・・・なんて話も上がるんだよ。義父上には渋られたんだけどね。まあ、万が一にもそんなことがあるならば何処の馬の骨とも分からない男に娘を奪われるくらいなら俺と結婚させた方が安心だと思ったみたいで了承してくれて正式な養子縁組・・・というよりも母上との書類上の夫婦の手続きを行わなかったんだ」
つまりは事実婚というやつか。まあ誰も態々書類まで確認したりしないからあの2人が実は夫婦ではないなんて分からないだろう。実際私は聞かされるまでとっくに籍を入れてるんだと思っていたし。
「義父上の了承も得た俺はこの日のために頑張ってきたんだよ。そしてそれは実った。バルトロス王子からクリスティーナを奪い返せた」
実に楽しそうに、嬉しそうに語る義兄の華麗なる復讐は、私との婚姻によって果たされたと。約10年越しのバルトロスざまぁに、この義兄の執着と意外と狭小だったことに私は溜め息が漏れた。
なんだかメリオロス編はやたら長くなってますね。仕方ないです。語ることが多いのですから。だがしかしヤンデレのヤンが希薄すぎる(。>д<)




