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戸惑う私と悪魔な義兄

間章ラスト

婚約話が解消された・・・




何度も何度も頭の中で繰り返しては、現実味のないものが真実なのだと思い知る。お父様の言葉を信じなかった訳じゃない。嘘や偽りが嫌いなお父様がこんなことでくだらない冗談も言わないことも分かっている。だけどほぼ決まりかけていた婚約話が突如なくなってしまえば誰だって疑ってしまうと私は思うのだ。きっと表情に出ていたんだろう。お父様は勅使が持ってきた書状を私に差し出した。上から下までじっくり読んでみても、ミハエル家と私に対する謝罪の言葉しか書かれていない。本当になくなったのだ。



嬉しい。うん、確かに嬉しいのだけど、余りにも突然すぎて感情が追いつかないのだ。微妙な表情をしていたんだろう。お父様は私がショックを受けたと勘違いして優しい言葉をたくさんくれた。



だけどどうして急にこんな話になったのだろうか。私が義兄に話してからほんの数日で・・・まさか、と私は首を振った。私が結婚したくないと義兄に気持ちを知られてしまったからと言って、いくら次期公爵だからと言っても、王族の未来を左右するだろう結婚を操るなんて、そんなことできるはずがない。私は心の奥底で沸き上がる疑問と予感にそっと蓋をして、これも1つの運命だったのだろうとこの話を完結させることにした。
















深夜のとある寝室、仄かに灯るランプの炎に浮かび上がるその影に、気のせいだろうか、炎の揺らめきでその背に黒き羽が生えているように見えた。



「ククッ・・・思いの外簡単に事が進んだな。まあ、これも協力者あってのことだったがな」


その手に握られていたのは『協力者』からの密通書。書かれていたのは彼への感謝の言葉ばかりだった。


「まあ、せいぜいあの王子様に捨てられないように体と薬を使って繋ぎ止めてくれ。いまだ私の天使に心を奪われたままの憐れな王子様・・・貴方の代わりに・・・いや、俺の代わりだった貴方よりもずっと深い愛で彼女を幸せにしてみせよう。せいぜい代替え品を横に置いて幸せに笑う彼女を羨望の眼差しで見ているといい」



狡猾な笑みを浮かべ、スッと便箋をランプの炎に翳すと、ぼうっと勢いよく燃え上がり一瞬で炭とかした。



「クリスティーナ、お前を幸せに出来るのは誰でもない俺だ。邪魔するやつはもういない・・・やっと、やっとお前をこの手に・・・!」



静かに笑う彼の周りを炭とかした便箋がまるで羽根のようにヒラヒラと舞う。彼の内なる闇を纏ったような真っ黒な羽根が、静かに床を汚していった。


おにいたまルートが見たいとご意見頂いたのでおにいたまにします!!

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