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私とバルトロスとピクニック?

毎日暑いですが皆さん元気ですか?私は保冷剤がお友だちになっています。

「デート、ですか?」



珍しく部屋でのんびり読書を楽しんでいた私に、バルトロスは笑顔でこう言ったのだ。「クリスティーナ、デートしないか?」と・・・



「そう、よくよく考えてみれば、私達は毎日会って話はするものの、何処かへ出掛けたりはしたことがなかっただろう?」

「まあ、そうですね」



それを貴方が言ってしまいますか?半ば半監禁状態を難なく作り上げた張本人がそれ言っちゃいます?この前涙ぐましい自身の努力で漸く庭を歩けるようになったんですけど?バルトロスの中で今までの出来事がまるっと抜け落ちているんじゃないかと心配になる。



「ちなみに何処へ行こうと?」

「そうだねぇ・・・街は美しい私の婚約者が何処の馬の骨に懸想されては困るし、街とは反対の森の方へ行こうか。あそこは王領だから勝手に侵入できないし、あの森の奥には綺麗な湖があるんだ。精霊が棲んでるとも言われるくらいにね」



やはり独占欲に歪みなし!!分かってはいたけどね。もともとのヒロインが逃げたしたから彼の歪んだ愛がすべて私に向けられていることは・・・それが嫌ではないとか思い始めているあたり私もおかしくなってきているんだと思う。いや、だって多少歪んでいても私だけに好き好きオーラ出して犬のように忠実な姿見せられたら誰だってほだされると思うよ。



「クリスティーナ?」



王家特有の金色の髪をさらりと揺らして首を傾げるバルトロス。私よりもずっと背が高いうえ綺麗な顔でそんなことされるとドキリとしてしまう。



「湖ですか・・・私も行ってみたいです。最近は少しだけ暑いですからね。冷たい湖に足を沈めたらきっと気持ちいいでしょうね」

「そうだね。そういったことはしたことがないけれど、クリスティーナとなら楽しそうだ」



令嬢らしからぬ発言も彼はさらっと流して同意をしてくれる。端から見れば皆こう言うだろう。「なんて優しい婚約者なのでしょう」と・・・



そんなこんなで私達は翌日、バルトロスの言っていた森に行くことになった。メンバーは私とバルトロス、いつもの護衛3名と侍女2名(カリーはもう歳だからとお留守番だ)、そしてアーダルベルト。王子とその婚約者が城を出るのだから彼がついてくるのは当然だった。だって騎士達の中で彼が一番強いのだから。前に護衛の騎士達にアーダルベルトの実力はどれくらいなのか尋ねてみたことがある。すると彼等は口を揃えてこう言うのだ。「隊長には我々が束になって挑んでも叶わない」と。この国で最も強いと言われる聖騎士団が揃って叶わないと言う彼の戦闘能力はいったいどれほどのものなのか・・・そしてそれに渡り合えちゃうバルトロスは一体なんなのか・・・謎しか呼ばないのでもう考えるのは止めた。





「これは・・・とても広大な森ですね」

「そうだね」




目の前を覆うのは青々と茂る木、木、木・・・こんなに木が群生しているのに何故今まで気づかなかったのかしら。理由を挙げれば、私の家がある街とは正反対にあることとまったく興味が湧かなかったのが正直なところね。こうやって実際に訪れるまで森がどんなものかなんて知らなかったんですもの。



「さあ、行こうか」



にこりと笑って馬車から馬を離し馬に跨がるバルトロス。彼は私にその長い腕を伸ばす。これはあれね、仲良く一緒に乗っていこうってことだよね。まあ私は馬に乗れないから歩かないなら誰かに乗せてもらうしか方法はないのだけど。そうなるとここにいる男性陣の中から選ぶわけだけどバルトロスがそれを赦すわけがない。従っておのずと私は彼と馬に乗るしか道はないのだけど。



仕方なしに私が彼に腕を伸ばせば、彼は嬉しそうにその腕を引っ張った。






「さすがにこの細い道では馬車は無理だからね。クリスティーナはあまり馬には慣れてないから君の腰が心配だよ」

「少しくらいなら平気です。確かに馬は初めてですけど・・・」



だから実は落ちるんじゃないかって不安なんだけど、バルトロスがしっかりと両腕で私の体を固定しているからまあ心配ないだろう。馬は軽快に足を進めどんどん奥に入っていく。獣道ほど細い道しかないからもっと荒れているかと思えばそうでもない。木々の間から太陽の光はしっかり届いているし草も獣がいるからだろうそこまで伸びきってはいない。人はそれを自然美というのだろう。



「もう少しで目的地に到着するから我慢してね?」

「はい」



本当にそれから数分で森の最奥、湖のある場所へ辿り着いた。



「・・・・・・」

「ふふっ、綺麗でしょう?私は此処がお気に入りでよく来ていたんだ」



言葉にならないとはよく言うけれど、目の前の神秘的な光景に私は瞬きさえも忘れて魅入ってしまっていた。透き通る水は天から降り注ぐ光をキラキラと反射し、まるで宝石を散りばめたような輝きを放っている。対岸には雄々しい鹿が優雅に湖の水を飲んでいて、その姿を絵にしたらどんなに素晴らしいだろうと思う。



「どうやらクリスティーナも気に入ってくれたみたいだね」

「ええ!!とても素晴らしいですわ!!私、こんなに素敵な場所に来れるなんて・・・」



たぶん私の瞳はキラキラ輝いていたと思う。私は前世の頃からこういう神秘的とか幻想的なものが大好きだったから。現世でも私室にはそういった物語の本やイラスト集が本棚に並んでいる。それを実際に自分の眼で見られて興奮せずにいられるだろうか。いや、無理だ。

のほほんと平和な一時ですね。このままエンディングを迎えたいけどやはりやつは動くのだー!!

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