私ぼっちになってる?
お久しぶりです。
「ああ、なんて清々しいのかしら」
バルトロスから自由権を勝ち取った私は、一日の大半を薔薇園や噴水広場で過ごした。お城に噴水って誰得?とか思ったりもしたけど、この噴水から城中の緑に水が行き渡っているらしいので、実はとても重要な役割があるとのことだ(バルトロス談)。妃修行?勿論やっていますよ。ダンスはバルトロスが率先してパートナーを務めてくれるし(他の男が私の体に触れるのが嫌だから)、国の歴史や諸国の簡単な挨拶程度の会話の勉強は外でも出来ますからね。引きこもって暗くじめじめしているより晴れやかな空のしたで勤しんだほうがずっと効率がいい。
「クリスティーナ様、そろそろお休みなさってはどうでしょうか。もう2刻ほど本と向き合っていますよ?」
「あら、そんなに時間が経っていたのね・・・ならカリー、紅茶をお願い」
私が言い終わるのと同時に、湯気のたった紅茶が差し出される。さすがはベテラン侍女長、その観察眼と行動力には恐れ入ります。琥珀色の液体を飲み込めば、ふんわりと紅茶の香りとは別に花の香りがする。
「本日はお砂糖ではなく、リュナハの花からとれた蜂蜜を使っています。自然な甘さになっていると思うのですがいかがでしょう」
「とても素敵、紅茶の渋味も感じられて私は好きよ。次からはこちらの蜂蜜で入れてください」
私がそう言えばニコリと微笑んで頷いた。しかし本当に誰にも会わないわ。私が毎日顔を合わせるのはカリーと侍女2人、そして聖騎士団から派遣された衛兵が3人、それだけだ。バルトロスは別としても6人しか顔を見ないなんてどうなんだろう。これをバルトロス特有の独占欲や保護欲と言ってしまえばそこで終わりなんだけど、私って未来の王妃様だよね?王妃様って王様ほどじゃないだろうけど沢山の人と顔を会わせないといけないはずよね?なのにこれって・・・本当にいいのかしら。
「確かに、クリスティーナは将来私の妻として、この国の国母として民衆の前や各国の王族と顔を会わせることになるだろう。だけど今は別だ。君はまだ私の婚約者、謂わば恋人だ。私だけのものでいる時間を設けてもなんら問題はない。クリスティーナは不満なのか?私だけでは満足できないのか?」
おおっと、ちょっと聞いてみただけなのになぜ貴方の精神バランスはそう簡単に崩れてしまうのかしら。つい先程まで慈しみに満ちた瞳で私を見ていたのに、今ではいない相手に嫉妬と殺意を向けている。ある意味器用である。
「聞いているのクリスティーナ。まさか・・・私以外の誰かのことを考えているのか?相手は誰?護衛のうちの一人?それとも・・・アーダルベルト?いけない子だねクリスティーナ。やっぱり外に出すんじゃなかった。明日からまた部屋から出るのは禁「誰のことも考えていませんわ。いない相手に焼きもちをやくバルトロス様が可愛らしくて、私、ますますバルトロス様を好きになってしまいます」クリスティーナ・・・」
おっといけない。バルトロスの暴走でまた監禁生活に逆戻りするところだった。しかしまだアーダルベルトを危険視していたのね。まあ、公の場でしか会うことはないけれど、たまに見せる表情は少し危険かもとは思ってた。だって護るべき王子に殺意を向けます?いつ斬りかかるのかと私はヒヤヒヤしたものだ。しかしこの2人の凄いところは表だっては正しく王子と聖騎士隊長を演じているのだ。オンオフの切り替えが上手いのか、私のいないところではどうなのかが分からない為、なんとも言えないのよね。なんて考えているうちにバルトロスはチュッとリップ音をたてながら頬や首にキスを落としてくる。私が好きにさせているのは、間違っても私の不名誉になることはしないと分かっているから。例えばキスマークとかね。本人は沢山つけたいみたいだけど、軽く吸うだけで我慢している。そんなバルトロスにいい子いい子と頭を撫でる。これをすればだいたい機嫌が良くなる。実は案外お手軽なのね貴方・・・
「クリスティーナの手は柔らかく優しいから好きだ」
私の胸に顔を埋めニマニマとしている王子様。一般の淑女なら悲鳴ものだけどそこは私ですから、胸くらいいくらでもお貸ししますよ。誰でもじゃないから!バルトロスは婚約者だから許してるんだからね!!
「バルトロス様、眠いのでしたらお部屋に戻られては?」
「う、ん・・・まだ・・・折角クリスティーナと一緒にいるんだから、もう少し傍に・・・」
さらに強くなった締め付けに、私は仕方ないと思いカリーに視線で合図する。するとすぐに察して、バルトロスの上に毛布をかけ護衛の兵と話すためにドアから出ていった。すでに眠りの世界へ行ってしまったバルトロスに、やはり私は彼のことを好きなんだと再確認させられて、彼の寝息を子守唄にして私も深い眠りに就いたのだった。
結局ぼっちは解消されずいつの間にか誤魔化されたのはクリスティーナなのかバルトロスなのか・・・最後はなんだかんだいちゃいちゃカポーになっていた。あはっ




