限られた時間
まだよ、まだダメよ?
朝、早く起きて、昼から魔族の国に向かう為、執務室でルートの最終確認などをしていたら、ペリルがやって来た。
「ソージュ様、おはようございます。何をして・・・ルート確認ですか?もう、準備は一通り終わりましたか?」
急いでいる様だが、何かあったのか?
「既に全て終わったよ、今は最終確認だな」
そう言って書類を手にしたら、ペリルによってその書類は取り上げられた。
「ソージュ様、反論は認めません、今すぐに「メシヤ」に行って、ちゃんとルリさんと話をして来て下さい」
反論、出来ないのはこまるな
「ペリル、いきなり、どうした?」
いつもこんなに強引じゃな・・・
————-いや、いつも通り強引だな
「とりあえず、散歩して、お互い緊張感が取れたら、一度自宅に招いて下さい、認識阻害がお互いの邪魔をしています」
確かにそうだが、昨日の今日だぞ?
「・・・ちなみに、部屋について来るなら、脈アリだと思いますよ」
ペリルの言葉に思わず振り返ってしまう。
「100%大丈夫だけど、魔族の国に行くのだし、万が一も有ります。念のため声をかけた方がいいですよ」
確かに、心配かけてしまうか・・・
「彼女かなりモテますし、のんびりしていたら、あっさり誰かに持っていかれますよ」
それは!!
————身に覚えがありすぎるんだが
俺はジトっとペリルを見つめた。
「せめて、帰るまで待ってもらいましょう。自宅に招いたとして、チャンスがあっても絶対我慢してください。絶対ですよ」
そんなに言わなくても
————大丈夫か?俺
さっさと行けと尻を叩かれ「メシヤ」に向かうと、店の前に、既にルリが居た。
「あ、なんか、お母さんから、今からソージュが来るからって、追い出されたの」
トーコ、何をしてるんだ
ペリルとトーコが手を組んだ事を理解して、ルリを馬に乗せた。
「俺も、ペリルに追い出された。一緒だ」
————ルリは今日も可愛い。
確かにペリルが言った様に認識阻害が邪魔だな?今度ペリルにお互い見える様に改造して貰おう。と、心に誓った。
「行きたい所は、あるか?」
時間は限られているが、とりあえずルリの良い様にしよう。
「薬草が好きだけど、どこかある?」
振り返り。遠慮がちに尋ねる瑠璃の、近づく事で感じてしまう体温に、意識をしてしまい、近づき過ぎないように気を使う。
「薬草が群生している丘でいいか?」
そう尋ねたら、
「はい、行ってみたいです」
と、顔を見なくても、笑顔が分かるような、弾んだ声がした。
「通常は魔物が多いが、俺が行くと魔物は逃げるから安全になるんだ。人の手があまり入っていないから壮大だよ」
森を抜けた先には辺り一面に—————-
————-青白く光る花が咲き乱れていた
ルリは馬を降り、花園に降り立つ
"ザワザワザワ"
丘に着くと、一陣の風が吹き、
————青白い花びらがひらひら舞い踊る
花びらに包み込まれた、瑠璃の長い髪が
——- ふぁっ ——と広がり収まる頃、
———-お互いに目が合った・・・
「凄く綺麗ね」
ルリはその瞬間
———花が咲いたように笑った———
それを見た時、俺の身体全身に
突き抜けるような衝撃が起きた。
「好きだ・・・」
溢れた言葉は、とても小さくて、ルリには届かないけど。
———-これ以上ないほど、好きだ。
まだ、今は伝えるわけには行かない———
俺は一歩ルリに近づき
「魔族の国に行く前に、ルリとゆっくり話がしたいんだ。このまま外で話すのと、俺の屋敷に行くのと、どちらがいい?」
俺はずるい聞き方をした。
「・・・転移陣に乗るの?」
ルリは少し戸惑いを見せた。
「ああ、興味あっただろう?」
これで、断られたなら、諦めもつく
「・・・転移陣には、乗ってみたいかな」
俺は心の中で叫んでいた。
———-ありがとうルリ!
「分かった、行こう」
表向きは、冷静だが、馬の足は行きよりもだいぶ早かったかも知れない。
———拠点に行くと、誰もいなかった
「あれ?誰もいないですね?」
ルリが、キョロキョロしていたので、ついうっかりして
「チャコとペリルの事だ、多分部屋で・・・」
と、余計な事を口走りそうになり、頭ブンブン振ってしまった。
「どうしたの?」
ルリが不思議そうにこちらをみた。
「なんでもない。こっちだ」
ルリの手を握り転移部屋に入る
「これが転移陣?」
ルリは魔法陣に興味津々だ
「転移するよ」
ルリを軽く抱きしめ発動する。
———-—倒れない為だと自分に言い訳する
————-自室に瑠璃がいる
何とも言えない緊張感が湧き起こる。
とりあえず、執事にお茶を頼み、2人でソファに座った。
————-勿論隣に座った
「俺は明日から魔王討伐に行く。その前に俺の話を聞いてくれるか?」
俺は、自分の過去を掻い摘んで話した。
———正直怖いけど、隠したく無かった
「今は、もう大丈夫なの?」
ルリは、複雑な表情をしながらも心配してくれた。
「今は、前みたいな衝動は無いな」
別の衝動ならあるが・・・
「チャコ可愛いから・・・」
瑠璃が小さな声で呟く
————-まて、違うな?
俺の今の衝動を、正直に話すか?
ダメだろう。話したら嫌がられるぞ
俺が考えている間に、瑠璃の雰囲気がどんどん暗くなる
「ルリ、俺は今、女神の力は受けてないんだ。ちゃんと理性が働いているはずなのに、押さえられない衝動が酷いんだ」
俺はそう言って、ルリを見つめた。
「今は、やるべき事があるから、待っていてくれないか?帰ったら、伝えたい事が沢山あるんだ」
瑠璃が涙目で、俺の手を握った。
———頭がグラッとしたが、ぐっと耐えた
「最後に一度だけ・・・ダメですか?」
最後って、どう言う意味だ?まさか、ペリル達が言っていたように、思い出作って帰るつもりか?
—————-耐えろ俺!!!
「ルリは、それしたら、帰っちゃうだろ?だからダメ。俺がちゃんと向き合うまで、待っていて欲しい」
俺は、抱きしめたい衝動と闘いながら、ルリの手をポンと叩く
「ルリも、超えられない壁があるんだろ?俺は唯一を求めているから、一度きりの癒しにはなれないよ」
ダメか?手を握り目をみて話す
瑠璃、赤くなりながら首を振り
「ごめんなさい」
涙が溢れている。手で溢れる涙を拭っていたが・・・
———-もう、我慢の限界だ!
「これ以上は、俺が"危ない"から、もう行こう」
————このままじゃ"絶対"押し倒す
戸惑いを隠せないルリを立ち上がらせ、
————-キスしたい衝動を蹴散らして
肩を抱いたまま転移陣にのり「メシヤ」まで送ると
「ソージュ、今日はありがとう。頑張ってね。行ってらっしゃい」
と、目を潤ませるルリに
「必ず戻る。その時に、ちゃんと俺の気持ちを伝えるから、それまで待っていてくれ。」
最後にそう伝え、軽いハグだけして、紳士的に拠点まで帰宅した。
———-俺、頑張ったよな?
頭を冷やしたくて、ちょっとだけ馬を走らせ拠点に帰宅したら、ペリルが寄って来て
「よく、耐えられましたね。さすがです」
———-そう言ってペリルに頭を撫でられた
俺、お前の上司だよな?
まあ、嬉しいからいいけど・・・
ソージュは頑張りました。
ソージュ目線でタイトルつけたら
欲望と理性の間です・・・R指定ですね
瑠璃は、不安もありグラグラしちゃいます
次回、疲れた時に沁みる優しさ です
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