家政婦(メイド)は見た
あなた、働き者のいい子なのね?
ランドリーメイドのプッツェンは、今日は配達係の為、
午前中は場内のあちらこちらから、使用済みの洗濯物を回収する。
各部屋に、空間魔法のランドリーボックスが設置してあり、
部屋の外から、回収する事ができる様になっている。
洗濯場は、リネン室のすぐ側にあるので、
クリーニング後のリネン類は、直ぐに補充したり出来るが、
ドレスや絨毯、天幕やカーテンなどは、部屋ごとに配達しなければならず、
配達係になると一日中歩き回る事になる。
配達係は、間違いが起こらない様に、回収した洗濯物は必ず、同じ配達係が配達に行くので、
回収日、配達日の2回宮殿内を周回する事になる。
プッツェンは、効率良く宮殿を回るのが上手いと、メイドの仲間から良く言われている。
誰よりも早く周回するからだ。
何故そんなに早く回れるのか?と良く聞かれるが、
プッツェンは、移動する際に、裏庭や中庭などの道なき道を使って
ショートカットをするのが上手いだけだ。
皆に道順を教えたが、他の人は迷ってしまい、余計な時間がかかると不評だった。唯一理解を示したのは、シュラーフ様の側近のケルナー様だ。
「凄いな。かなり時間が短縮されたよ。でも、危ない場所もある。怪我などには気をつけなさい」
と言われた。
プッツェンは、シュラーフとケルナーのファンで、2人の役に立ちたいと常日頃から思っている。
推しがいる職場だ。毎日が楽しい。
上手くいくと周回中に、推しに会えるのだ。
プッツェンは、始めの場所からテンポ良く回る為に、一覧表も作り、
回る順に何を回収したかを、記入しながらサクサクすすんでいく。
一区画の回収が終わり、次の区画へ向かう為に中庭を抜けると、
目的の区画の城の部屋から、叫び声が聞こえた。
プッツェンは、咄嗟に近くの木に隠れて、
窓の中に居る叫び声の主をみた。
「バカ王子の部屋だ…」
小さな声で呟いてしまい、誰かに聞かれなかったかキョロキョロした。
誰も居ないのを確認したら、もう一度見てみる
「ブフッ」
思わず吹き出してしまった。
プッツェンは見てしまった。
アフロになっているバカ王子を
笑うわけにはいかない。今声を出して笑ったら多分打首だ。
グッと堪えて立ち去ろうとしたら
「くそ!忌々しい!最近は足の小指はよくぶつけるし、ケルナーにはバカにされるし、医者はなんかよくわからない、嫌な治療ばかりするし、しかも何だこれは!おい!お前、この頭はいつからだ!」
余りにも大きな声で叫んでいるので丸聞こえだ。
バカ王子の宮殿は隔離されているはずだから、叫んでも誰も迷惑にはならないから問題はないが…
とにかく王子は煩いのだ。
プッツェンは、一体いつからアフロなのか気になって、聞き耳を立てた。
「昨日、お戻りになられた時にはそのヘアスタイルでした。オシャレなのかと思い何も言わずにいました」
従者が答えているが、口元はピクピクしている。
笑いを堪えているのだろう。
(オシャレってやめてよ笑いそうだわ)
プッツェンは腹筋までピクピクしてきた。
このままではダメだと一旦離れて洗濯物を回収して回る。
王子の横の部屋のランドリーボックスの中が、かなり埋まっている。
布製品は全て入っている。何かしたのだろうか?
中にメモが入っていた。
『この部屋の洗濯物は、他の物とは分けて洗い必ず換気のいい外でやる様に』
ケルナーの指示書が入っていた。
ちょっと嬉しくなり、それも鞄に丁寧に入れておく。
沢山の洗濯物をメモをしながら一つ一つ確認して、鞄に移していると
また声が聞こえてきた。
「聖女は見つかったか?何?まだだと?一体いつまで僕を待たせるつもりだ!隣の部屋もバレて、解体されてしまったし。もう待ってられないからな、僕は従属の首輪を手に入れたんだ!」
え、何の話?
「あの聖女にこれをつけて、北の塔に監禁してやるんだ!僕を振り回した罪だ!散々辱めてやる!泣いて喚くがいいさ!はぁ?お前らにも分けろだと?僕が飽きたら貸してやるよ」
聞いてはいけない。
そう思い手早く荷物を移動させた。
王子の部屋のランドリーボックスも、サッと取り出し急いでその場を離れた。
区画から少しずれてから、一覧に洗濯物をメモし、
白紙のメモに今聞いた事を一言一句違えずに書き記した。
これは直ぐに伝えなければならない。
次は丁度、王の執務室だ。運が良ければシュラーフ様に会えるはずだ。
ダメならケルナー様に届けよう。
そうプッツェンは考え、いつもよりも早足で区画移動をした。
王の執務室より、さらに奥の王の私室の洗濯物を回収している時に
シュラーフ様とケルナー様の
足音と話し声が聞こえてきた。
普段なら喜びに震えるのだが、今はそれどころじゃない。
プッツェンは、作業を中断して
はしたないけれど、全力疾走で2人の前に躍り出た。
「プッツェン。走るとは何事ですか?」
ケルナーに叱責されるも、プッツェンは跪き
頭を下げて1枚の紙を掲げている。
「待て、ケルナー叱らなくていい、これを見ればいいんだな?もう頭を上げていいよ」
シュラーフに言われ、プッツェンは頭を上げた。
「…これは!プッツェン、これはいつ聞いた話ですか?」
ケルナーに問われ、プッツェンは10分程前だと伝えた。
「ケルナー、向かうぞ。プッツェンと言ったか?よくやってくれた。感謝する」
シュラーフは言葉を残し、颯爽と立ち去って行った
「プッツェン、ありがとうございます。でもあまり危ない事はしちゃダメですよ?気をつけて下さいね」
ケルナーもお礼を伝えた。そしてやはり優しい注意をしてくれた。
プッツェンは、推しの2人の役に立てて
幸せそうに、震えながらその背中を見つめていた。
プッツェンはシュラーフとケルナーに城内で迷子になった時
助けられて以来どちらも大好きになってしまった女の子。
まだ入って1年目です!
次回は 毒父の戯言 です。
もやっとします。
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推しキャラ出てきましたか?いたら教えてくださいね!本命はまだ先になりますが・・・
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