【完結】終わりの始まり
今までありがとうございました。
また、どこかで会えるといいわね?
式当日の新婦控室で、
私は美容師として、最後の仕事をしている。
私の30年は、この日のためにあったんだ
終わりにしよう。
———最高の幕引きね
私は花嫁のヘアメイクをやらせて貰った
「瑠璃、最高の花嫁が出来たわよ」
認識阻害眼鏡を外している瑠璃は、
まるで女神の様だ
「わぁ!瑠璃綺麗!」
チャコ、アルゼ、セリナは、
はしゃぎながら瑠璃の花嫁姿を見に来た
この4人が集まるのは、今日で最後だ、
セリナは、瑠璃の結婚式が終わったら
元の世界に帰る
4人で、はしゃいでいたけれど、
花婿が来た知らせで、3人は会場に向かった
入れ替わって、ソージュが入ってきた
こちらも、認識阻害眼鏡を外しているから
目が眩むほど眩いイケメンだった
——-うちの娘凄いわね
「瑠璃、準備はできて・・・」
瑠璃を見てソージュが固まった
じわじわと顔が赤くなる
そうなるでしょう?家の娘美人よね
しかし、相変わらずウブな反応だわ
ソージュを見て瑠璃は花が咲く様に笑った
「ソージュ、どう?」
瑠璃は立ち上がり、
ソージュの側まで歩いて行く
「綺麗だ。胸が潰れるかと思った」
ソージュは胸を押さえて瑠璃を見た
2人はそのまま見つめ合い
目で会話をしている様だ
「そろそろ、会場に入るようにと言われましたが、準備はお済みですか?」
会場の人ではなく、ケルナーが呼びにきた
「あらケルナー、貴方が呼びにきたの?」
係の人じゃないのね?
「皆から、行けと言われ・・・トーコ、本日は結婚おめでとうございます。ルリは素晴しく綺麗ですね」
ケルナーは私を見て微笑みかけ
瑠璃を見て優しく笑いかけてから褒めて
ソージュを睨み
「ソージュ様、ルリを絶対、必ず、幸せにしてくださいね?」
と、ケルナーは念押しをした
「はい、必ず」
ソージュはケルナーにも
ちゃんと頭を下げていた
「お母さん・・・」
マズイ、挨拶だわ!
「瑠璃。まだよ!泣いちゃうから!」
私は耳を塞ぐが
「ケルナー、お母さんなんとかして!」
ルリに言われたケルナーは
「すみません」
と言って、私の腕を押さえた状態で、
後ろから抱きしめてきた。
これじゃ耳が隠せないわ!
「ありがとうケルナー。お母さん、ちゃんと聞いて?」
娘のお願いで私は渋々諦めた。
「お母さん、今まで私を大切に育ててくれてありがとう。いつだって私の味方でいてくれて、沢山の愛情をくれたから、今の私があるの。これからはソージュが側にいてくれるけど、私多分、お母さんに頼っちゃうから、親離れなんて出来ないかもしれない」
それは嬉しいけど、
親離れ出来ないのは困るわね
涙が出そうになったけど、
それを聞いて、ちょっと引っ込んだ。
「瑠璃、いつだって助けるけど、まずはソージュを頼るのよ?頼れないならその時は飛んでいくから」
まずは彼を頼りなさい。
手に雷を出現させたら
ケルナーがぎゅっと抱きしめたので
雷は霧散した
「トーコ、ルリの事は、必ず守り、誰よりも幸せにします。ここに誓います」
ソージュはルリの肩を抱き
わたしに宣言してくれた
「トーコ、そろそろ時間ですよ」
部屋の入り口に、
案内の人がスタンバイしている。
私は瑠璃に
「瑠璃、生まれてきてくれてありがとう。幸せになるのよ」
そう言ってケルナーとチャペルに向かう
———まだよ、まだ泣いちゃダメ
———私がルリの
バージンロードをエスコートするんだから
私はチャペルの入り口で瑠璃を待った
ソージュのスタンバイが終わったら
瑠璃と中に入る。
中でどよめきが起こった。
多分、認識阻害のないソージュに
皆が驚いているのだろう
あれは、私でも驚く
「瑠璃、ソージュ凄いわね?」
隣で緊張している瑠璃に話しかけたら
「もう、お母さんは緊張感ないんだから」
と、笑われてしまう
「あら、失礼しちゃうわね?これでも必死よ?」
そう、私は泣き出さないために必死なんだ
「えー、どこがよ?あ、マズイ行かなきゃ」
扉を開ける人が既にスタンバイしていた
私は瑠璃の手を取り
「瑠璃、行くわよ?」
と声をかけて、一歩踏み出した
煌びやかな教会の奥に
恐ろしく美しい男が立っていた。
普段の彼とは空気感が違う
私は、瑠璃の手をぎゅっと握り、
そのまま前に進んでいく。
彼の前迄辿り着き
瑠璃の手を彼に預けるのだが
私は一瞬躊躇した。
「お母さん?」
瑠璃が小さな声で私を呼び
ハッとして瑠璃の手を彼に預けた。
私と目を合わせたソージュは
フッと柔らかく目元にいつもの笑顔を見せた
私はその目を見て安心して
自分の席に下がった
式は続き目の前には
一枚の絵画の様に美しい男女がいる
私はなんだか現実に思えなくて
ボーっとしながら見つめていた
誓いのキスも終わり
2人が振り返り、歩き出すと
カラーンカラーンカラーン♬
澄み切った鐘の音がなり
皆が盛大に祝福した。
2人は満面の笑みだった
それを見た瞬間、
瑠璃とソージュは結婚したんだと
急に実感が湧き、
私の涙腺は一気に決壊した。
隣にいたケルナーが
ハンカチを渡してくれたけど、
全く間に合わない
教会の外に出て、
皆から祝福される瑠璃を見ていたら
上手く立つ事すら叶わなくて
瑠璃が幸せな事が幸せで、
ケルナーにつかまり号泣していたら
「お母さん、泣き過ぎだから!」
まず、瑠璃に見つかり笑われた。
周りの皆も、優しく笑いかけてくる
だって仕方がないじゃない
ずっと瑠璃が、幸せな姿が見たかった
シュラーフは、
「ケルナー、トーコが倒れない様に、しっかり支えろよ」
と言う。
隣にはアルゼがいるけど、もしかして?
「トーコさん、瑠璃の事は、ちゃんと兄さんが隊長さんを見張るから安心してね!」
アルゼも気にしてくれた様だ
「トーコ、ルリ綺麗だったな。本当に良かったなぁ」
ベーレンは涙を流し、良かったといいながら、隣にいる護衛を締め上げている。
よく見たらネットだった
「団長、痛い痛い首締まるから!」
と、ジタバタしている。
それを救出したのはリープだ。
「ネット、ちゃんと祝辞を述べないか」
と、叱る
「トーコ、ルリさん、この度はご結婚おめでとうございます」
と、リープは大人の対応だ。
「貴方達も、来ていたのね?ありがとう」
私は泣きながらも、彼達にお礼を伝えた
「トーコさん、ルリさん、ご結婚おめでとうございます」
振り返ると、エーデルもいた。
「まぁエーデルまで!今日はありがとう」
彼女も護衛としてきていた様だ
「トーコ!めでたいなぁ!ルリちゃん本当に綺麗じゃったなあ?」
バシバシ叩かれているのはゼーネンだ
「トーコさん、ルリさん本日はご結婚おめでとうございます」
ゼーネンは以前より・・・
「なんだかいい男になったわね?」
と、言うと、
「お陰様で成長出来ました」
と、大人な余裕だ。
「皆さーん写真撮りますよー」
集合写真を撮ってくれる人を見たら
ゲナウだった
「ケルナー、ゲナウはいつから便利屋になったのかしら?」
余りにも・・・雑用よね?
「ゲナウは、写真が趣味なんです」
なるぽど?
撮影も終わり、私も落ち着いた頃
会場を見渡し瑠璃を探した。
瑠璃は今、ソージュと共に
チャコちゃんとペリルと話をしている。
出発の時間が近いのだろう
瑠璃はこちらを見て、
私に手を振ったので、私も振り返した
「瑠璃、幸せそうね・・・」
瑠璃、本当におめでとう。
お母さん嬉しいわ、
でもね、貴方がいない家は
ちょっと広くて寂しいのよ・・・
式のエンディングは馬車の見送りだ。
瑠璃達は、そのまま旅行を兼ねて旅に出る
馬車の旅立ちの時間は直ぐにやってきた。
「お母さーん!今までありがとう!」
瑠璃が私に呼びかけ、大きく手を振った。ソージュは私に向かって頭を下げた。
「瑠璃、幸せになるのよ!」
私の声の後に、皆が祝福の言葉をかけた。
そして2人は馬車に乗り込み
馬車はゆっくり進んで行った
去り行く馬車に、涙があふれだす
瑠璃、私は大丈夫よ
私は1人でも逞しく生きていくわよ
コツコツと王宮の廊下をセリナと歩く
「本当に見送りは良かったの?」
私は召喚室で今からゲートを開き、
セリナをあちらの世界に送るために来た
「チャコとアルゼは、瑠璃と一緒に行くと決まっていたし、もう別れは済ませたわ」
セリナはニコッと笑い
「見送りは必要ないわ」
と、あっさりしてる
ケルナーが、召喚室迄の案内をしてくれて
私だけ付き合う事になった。
部屋の扉を開けると、
そこには既にゲートが開いている
躊躇なくゲートに入るセリナに
「これから、頑張るのよ」
声を掛けてみたけど、
彼女に声は届く事はなかった
ゲートの向こうに、我が家が見えている
私は思わず、ふらっと一歩踏み出してしまう
———これを抜けたら、元に戻れるの?
それは、なんだか物凄く素敵に感じて
もう一歩踏み出そうとした時
「トーコ!」
私の真後ろに居たケルナーが、私の腕を掴み
「私が貴方を1人にはしません!これからもルリの幸せを見守るのでしょう?」
と、叫び、ハッとした
「私、今?」
———帰ろうとした?
ケルナーは、はぁ、とため息をつき、
私を正面から抱き止めた
「貴方は、本当に目が離せないですね?いいですか?もう一度伝えますが、私が、貴方を決して1人にはしないので・・・」
ケルナーはぎゅっと力を込めて抱きしめた
「だから、側にいさせてください」
そんな風に言われたら
断りにくいわよ
私は返事に迷ったから
とりあえず
「そうね、それもありかもね?」
と答えておいた
100話まで読んでくれた皆様へ
長い間、お付き合い頂き、本当にありがとうございました。
何となく思いついて書き出したお話が、思いの外、沢山の人に読んで頂けてとても嬉しかったです。
これにて、透子のお話は終わりになります。
毎日頭の中に居たキャラクター達と別れるのはちょっと寂しく感じますが、
またいつか、オマケでも書けたらいいかなと思っています。
もし、希望があったらキャラ名だけでも
コメントに残しておいてくださいね
最後になりますが、お話を気に入ってくれたら
★評価、コメント、レビューお願いします!
楽しみにお待ちしてます。
本当に、今までありがとうございました。
黒砂無糖




