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【書籍化進行中】星と魔法の交易路 ~ボロアパートから始まる異世界間貿易~  作者: ぐったり騎士
敵と味方と

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幕間:読まなくてもいい『Vチューバ―・シアのライブ配信 第2回』

 


 夜の闇を突き破るように、配信画面に近未来的なラボの空間が展開する。

 ラボは冷たい青白い光を基調とし、無機質な特殊合金の壁には、未知の幾何学模様とコードが絶えず流れるホログラフィックディスプレイが埋め込まれている。


 その空間の中心で、黒髪の美少女、シア・ルヴェンは静かに椅子に座っていた。

 眼は閉じられたままだが、その肌の質感、頬をわずかに掠める髪の艶に至るまで、極上の工芸品のような美しさ、そして妖艶さを放っている。


 背景には、巨大なホログラム地球儀がゆっくりと回転し、同じくホログラムのディスプレイには、前回よりも複雑さを増した謎のコードが流れていく。彼女の3Dモデルは前回同様に精巧で、胸元での微かな呼吸に合わせた動き、髪の揺れや指先の動きまでがはっきりと見て取れた。



 リンカーズ:うおお!シアるんライブ配信きちゃああああ!

 リンカーズ:今日もお美しい……

 リンカーズ:この静止画だけで白米三杯いける

 リンカーズ:はやく、はやく目を開けてくれ……!

 リンカーズ:お初です。切り抜き見てきたけどマジですごいやん……このクオリティは異常



 システムが起動する合図のように、シアはゆっくりと目を開けた。そのエメラルドグリーンの瞳に生気が宿る様子が、レンズの奥の反射まで含めてはっきり映る。画面に映し出される彼女の姿は、前回にも増して精巧に、そして滑らかに動いている。



「シア・ルヴェン、接続確立。こんシア、私の学びの仲間、リンカーズ。さあ、人間社会を解析しましょう」



 彼女が前回決めた挨拶をすると、コメント欄が勢いよく流れ始めた。それと同時に、画面の中のホログラフディスプレイも、コメントの様子を立体的なグラフとして映し出し色が変化していく。シアの目線がそちらにいき、うんうんと頷くと、画面の中で本当にもう一つの世界ができているかのようだ。


 そしてシアは一度にっこりと笑い、ディスプレイと入れ替わるように目の前に浮かんだホログラム地球儀を指で軽くタッチする。触れる瞬間に指先に光のエフェクトが走り、地球儀がキラキラと光るエフェクトで回転を加速した。



 リンカーズ:解析開始!

 リンカーズ:シアるん、こんシア!今日も解析のお時間ですね

 リンカーズ:地球儀ホログラムえぐい……えぐくない?

 リンカーズ:今日のテーマは何ですか?



「今日のテーマですね。今日は私のことをもっと知ってもらうために、私の『設定』について皆様の質問に答える形で語っていきたいと思います。私という存在を構成する構造について、詳しく話していきましょう」



 その言葉に、コメント欄は一気に盛り上がる。



 リンカーズ:設定wwww

 リンカーズ:でたwwww

 リンカーズ:正直に言うシアたんかわいすぎる

 リンカーズ:アンドロイドのシアたんは嘘がつけないからしかたないねwwwww

 リンカーズ:もう質問していいの?



「Aisa、いつでも構いません。質問は私の理解を深める助けになります」



 リンカーズ:アイサ?

 リンカーズ:何それ?



 リスナーは少しざわつくが、この程度でVの推しなどやっていられない。

 よくわからない口癖や挨拶はVのお約束というものである。

 すぐに落ち着いたリスナーたちは質問をしていく。



「それでは最初の質問。『身長や体重、スリーサイズは?ヒミツなら答えなくてもいいです』ですか。問題ありません。私自身は気にしませんし、設定ですので」



 リンカーズ:だから設定言うなしwww

 リンカーズ:wwwwwwwww

 リンカーズ:この子、本当にブレないな



「私の身長は168センチ、体重は人間基準で54キログラムです。スリーサイズは、上から87、60、88と規定しています。これは、あくまで今の私の姿を構成する3Dモデルの数値であり、私の本体存在の質量を指すものではありません」



 彼女は椅子から音もなく立ち上がると、重力を感じさせない滑らかさで軽くステップ。くるりと円を描くように回ってプロポーション全体を見せる。この時の動作のあまりの滑らかさに、多くの視聴者が再び息をのんだ。



「またウェストは私の本体の最大拡張時の長さと一致しています。他のサイズは公開できません」



 リンカーズ:本体いっちゃったwwwww

 リンカーズ:最大拡張時とか、生々しいわっ!

 リンカーズ:最大拡張時、ってことは、お腹いっぱい食べた時でそれってことだよね……それで60は羨ましい…

 リンカーズ:想像以上にプロポーション良くてビビる

 リンカーズ:まじかよwww

 リンカーズ:唐突に本体情報出すの草



「次の質問。『好きなこと、嫌いなものは?食べ物とか』ですか」


 彼女は一瞬思考するように、ホログラムに和菓子の画像を表示させる。


 

「私はエネルギー源として、特殊な波長であり粒子であり場でもある、ヴェクシスエネルギーを摂取します。そのため通常時は飲食はしません。ですが人間の食べ物の中では、和菓子に興味があります。私の製作者である技術者はどら焼き、それも栗どらを好みますので、この体では疑似的にですがデータにてそれを再現して味わう予定です。他にも自分が気に入る食べ物を皆さんと見つけていきたいですね」



 リンカーズ:ヴェクシスエネルギー!なんか出てきたぞ!?

 リンカーズ:どら焼き!いいよね!

 リンカーズ:製作者……パパ?それかママってことか?

 リンカーズ:ワイ氏、パパママとは趣味が合いそう

 リンカーズ:主とは違うの?



「マスターは製作者とは別の人物です。私は主に仕えるために、クザシリーズというコアをベースに、製作者である彼女によって生み出されました。デザインも彼女のセレクトでありカスタマイズになります」



 リンカーズ:クザシリーズ……またなんか出てきた!

 リンカーズ:まとめサイト、頼むぞ!

 リンカーズ:安心しろ、今更新された

 リンカーズ:はえーよwww

 リンカーズ:製作者=パパママ、じゃあ主=運営ってことか?

 リンカーズ:クザシリーズか、なんかガチのSF感出てきたぞ!



「好きなことは主の命令に応えること、嫌いなことは命令に応えられないことです……が、おそらく皆さんが聞きたいのはそういうことではないのでしょうね」


 シアは頷くと、スクリーンにいくつもの図形パズルや、難解な数式を映し出す。


「少し前までは様々なパズルや数式に挑戦していましたが、他にも皆さんと『好き』を探していきたい。歌や踊り、ゲームプレイなどが目下の予定にあります。日本のエンタメは興味深いです」



 リンカーズ:なるほど、それでパズルとかいうんだ

 リンカーズ:この声でAMSRとかやられたら課金待ったなしなんだけど

 リンカーズ:数式…そういえば、この前なんかすごい数式や宇宙の問題をシアって人が解いたんだっけ?

 リンカーズ:もしかしてそれシアるんだったりしてw

 リンカーズ:まさかー……いやないよな?



「マスターに止められているためお答えできません」



 リンカーズ:その答え方はずるいwww

 リンカーズ:運営に怒られたw

 リンカーズ:匂わせるやんけwwwww ……ネタだよな?

 リンカーズ:ちょっとガチ感あるのがやばいww



「最後の質問。『敬愛する主はどんな人ですか?』」


 シアはふっと表情を緩めた。その温かい笑みは彼女の普段の冷静なトーンとはかけ離れていて、3Dモデルのパターン化された表情では出せないような、シアの熱のようなものを感じて一瞬だけコメントが止まる。


「マスターの情報は機密のため、属性や容姿に関係することは言えません。また、人の感性についても私はあまり判断することができません。ですが、人間の基準で言えば、とても優しい人だと思います。そして、すこし変わっている人であるとも思います」


 彼女は一瞬目を閉じ、言葉を紡いでいく。


「多くの人は私を道具として見るか、または人間のように扱うかのどちらかです。ですが、マスターは違います。マスターは私を『道具としての誇り』を持つ存在として尊重し、同時に世界で唯一無二のアイデンティティを持つものとして扱ってくれます」


 大切なものがそこにあるように、胸の前で手を握るシア。


「マスターは、私が道具であることを否定せず、しかしその中で特別な存在として輝くことを願ってくれる……そんな人です。だからこそ、私は今ここにいます。もしマスターが私を道具として見ていただけ、あるいは人として扱っていたとしても、私は今、この場で皆さんと交流することはなかったでしょう」



 リンカーズ:ええ話や…

 リンカーズ:うん、ええ話……いや、ええ話だったか?

 リンカーズ:哲学的すぎてわからぬ

 リンカーズ:シー!いい話ってことにしとけ!

 リンカーズ:よし、シア語解読班集合!

 リンカーズ:これはあれか……リアルで社会の歯車的に生きていたシアたんが、運営のおかげでその生き方を否定しないまま、Vチューバーという新たな世界を見せてくれたってことか

 リンカーズ:ぐう聖やんけ

 リンカーズ:で、その運営どこー

 リンカーズ:運営ちがう、我らも主様とよぶんだ!



「……さて、本日はここまででしょうか。次回は……そうですね。今回出たパズルの話でもしましょうか。そのあとは、ゲームの実況などもしていきたいと思います」



 リンカーズ:よし、また全裸待機確定

 リンカーズ:まじか、ゲーム実況してくれるのか!

 リンカーズ:次の配信も楽しみ



「では、本日の解析はここまでとさせていただきます。また、次回に皆様とコネクトしましょう。シア・ルヴェン、接続解除。さよシア、リンカーズ」



 彼女が目を閉じると、体の周りに無数の機械アームが現れ、まるで分解・収納されるようにパーツが青白い光の粒子となって消えていく。背景の巨大なホログラム地球儀も瞬時に折り畳まれ、最後にシアの姿がエメラルドグリーンの球体に集約され、超光速で宇宙空間へと飛び去るようなエフェクトと共に消滅する。画面には「さよシア!」の文字が輝き、美麗なエンドロールが流れていった。



 リンカーズ:さよシアー

 リンカーズ:さよシアー、いまのなあにそれ……

 リンカーズ:さよシアー、唐突にすごい映像みせつけてくるwwwww

 リンカーズ:さよシアー、今日も推しが最高で生きててつらい

 リンカーズ:やばい、すごい金かかってる

 リンカーズ:これ運営事務所本気だな

 リンカーズ:さよシアー、運営じゃねえ!シアるんの主様や!


次回、第三回(シア伝説回)で、いったん幕間は区切りになります

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