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第6章:自分からフラグに挑んでみせましょう(8)

 ……。

 えー……。


 ハイッ!?


 今のあれだよね!?

 恋する男女の営みの一環ですよね!?

 どういう事どういう事!?

 イル、あの子何を思ってあんな行動に出た!?

 というか、あの子こんな事知ってたの!?

 というか(二回目)、めっちゃくちゃ慣れてたぞどこで覚えたんだ!?

 というか(三回目)、「向こう」での人生も合わせてマジで初めてだったんですけどーーーーーッ!?


「ホアアアアア……」


 もう変な声しか出ない。顔は茹でダコだ。心臓ばっくばく言ってる。

 腰が砕けてその場に崩れ落ちそうになるが、何とか膝を叱咤して立ち続ける。

 動揺してる場合じゃない。イルの真意を問いただす為にも、生きて『エルフォリアの迷宮』を攻略し、『掟知らず』の悪魔をどうにかせねば。

 それを実行するには、わたしがニナに同行して、迷宮の扉を開けなくてはならない。伝言を彼女に届ける為に、ヘメラを呼ぶベルを鳴らそうとした時。


「おい」


 アーモンドをかじり終わったケージが、ちょいちょいと籠の格子をつっついてきた。


「オレ様も連れてけ」


「アアン?」


 思わずガラの悪い声が出る。『エルフォリアの迷宮』にケージを連れていくなんて、「アーリエルーヤ」そのまんまじゃないか。

 不信感はばっちり顔に出ていたらしい。「そう構えるなよ」とケージは、モルモットではなく、餌を食べる時のコツメカワウソみたいなあくどい顔をする。


「こう見えて、オレ様だって、担当の物語にちょっかい出されて頭に来てるんだよ。反撃出来るメンツは多い方が良いだろ?」


 正直、こいつの事を信じ切れた訳ではない。何せ悪魔なんだ。甘い言葉で誘惑して、最後の最後に裏切るかも知れない。

 でも、首尾良く『ソロモンの火壺』まで辿り着ければ、こいつも『掟知らず』も、まとめてどうにか出来るかも知れない。


 ここはひとつ、表面上は手を組むか。


 決意して、籠の扉を開ける。ケージは嬉しそうに籠を飛び出して、すとととと、とわたしの肩にのぼってくる。


「さあ、行こうぜ」


 ケージが腕を組んでふんぞり返り、往年のケージの最高に格好良い主人公の決め台詞みたいな声でのたまった。


「オレ達を怒らせた事を奴に心底後悔させるくらい、派手にやってくれよ、アーリエルーヤ!」

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