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はじめての買い食い(高校生阿蘇・藤田)

高校生の阿蘇と藤田の話です

藤田「暑ぃー……」

阿蘇「暑いな……」

藤田「ううー、アイス食いてぇー……」

阿蘇「あれ、珍しい。お前んち買い食い禁止されてなかったっけ?」

藤田「買い食いは校則でも禁止されてるだろ。なんか阿蘇はいつも食ってっけど」

阿蘇「三食じゃ足りねぇんだよな。そんで家的にゃ大丈夫なの?」

藤田「バレたら一日絶食させられる」

阿蘇「ハイリスクじゃねぇか」

藤田「でもそのリスクを冒してでも、今のオレはアイスを食べたい。たとえそのために明日一日何も食えなくなったとしても」

阿蘇「すげぇ覚悟だ」

藤田「だから阿蘇、オレの罪に付き合ってくれ」

阿蘇「たかが買い食いごときで重いんだよ、お前は。でもまあいいよ。どこ行く? コンビニ? フードコート?」

藤田「コンビニで買って自転車かっ飛ばして神社の裏手にある小さな公園で食いたい」

阿蘇「なんかすげぇ夏って感じだ」

藤田「よっしゃ、そうと決まれば早く行こうぜ。見とけよ、すんげぇ高くていっぱい入ってるアイス買うから」

阿蘇「箱アイス?」

藤田「そっか、この条件だと箱アイスかぁ」





阿蘇「あちぃー……」

藤田「あちぃー……」

阿蘇「あー……今から箱アイスをカラにすると思ったら、すげぇ勢いで自転車飛ばしちまったな……」

藤田「うん……めっちゃテンション上がった……」

阿蘇「よっし、早く食おうぜ。アイス溶ける」

藤田「おう、食べよ食べよ。オレバニラ」

阿蘇「いちごどれ、いちご」

藤田「これ」

阿蘇「あー、サンキュ」

藤田「わー溶けてる溶けてる。なんか箱で買ったら互いの冷たさで溶けないと思ってた時期がオレにもありました」

阿蘇「限度があるだろ。いただきます」

藤田「ます」

阿蘇「……」

藤田「……」

阿蘇「うめぇー」

藤田「うめぇー」

阿蘇「あーーークソ暑い中で食うアイス最高にうまい。天の恵みだ、これ」

藤田「でもアホみたいに溶ける。やべー、服についたらどうごまかそう」

阿蘇「洗えば? ちょうどそこに水たまりとかあるし」

藤田「個人的にはもうちょい清潔な水で洗わせてほしいな」

阿蘇「じゃあ別の白色のもんでごまかすとか」

藤田「下ネタ?」

阿蘇「なんでだよ。えーと、ほら。白い花びらとか」

藤田「急にファンシーな姿にさせるじゃん……。オレを妖精さんにしてどうする気?」

阿蘇「森に還す」

藤田「不法投棄より許されない」

阿蘇「テッペン取ってこいよ」

藤田「分かった。絶対森のヌシにまでのぼりつめて、阿蘇を迎えに行くからな」

阿蘇「なら今日から家の周りに殺虫剤撒いとくわ」

藤田「どうしたらそんなに殺意高い発想が出てくるんだよ。オレ達友達だろ?」

阿蘇「俺の友達に全裸花びら男はいない」

藤田「いつのまにオレパンツまで脱いでんの?」

阿蘇「夏だし暑いかなと思って」

藤田「善意が裏目に出てるんだよな。つーか、全裸になるならもうアイスのシミごまかす必要ねぇじゃん」

阿蘇「なるほど。じゃあ最終的な解決策としては、全裸で家に帰ればいいと」

藤田「頼むから全裸から離れてくれよ。いや今人生で初めて使ったな、この文言」

阿蘇「なー、アイス二本目くれ。チョコがいい」

藤田「はいよ」

阿蘇「うめぇー」

藤田「うまいね」

阿蘇「……」

藤田「……」 

阿蘇「……アイスさぁ」

藤田「うん」

阿蘇「全部で五本あんじゃん」

藤田「あるね」

阿蘇「最後の一本どうする?」

藤田「そうだなー。いっせーので阿蘇は右側を、オレは左側を食べるってのは?」

阿蘇「初めて聞いたわ、そんな気色悪いシェア。俺絶対嫌だからな」

藤田「じゃあジャンケンにする?」

阿蘇「いいよ」

藤田「あ、ダメだ。お前ジャンケン激強だもん。フェアじゃねぇ」

阿蘇「じゃあどうすんだよ」

藤田「んー……」

阿蘇「……。ま、いいや。お前が食えよ」

藤田「え、いいの?」

阿蘇「いいよ。俺また帰りになんか食うし」

藤田「げ、まだ食うのか」

阿蘇「うん。それにお前、明日一日食えねぇんだろ?」

藤田「食えるよ。いや何の為にオレがこんな辺鄙な公園まで来たと思ってんだ。完全犯罪を成し遂げる為だぞ」

阿蘇「とにかく食えって。おら早くしねぇと服ひん剥いて森に還すぞ」

藤田「やめて妖精さんにしないで。顔が良くて頭のいい素敵な妖精さんにしないで」

阿蘇「大丈夫、お前ならどこでも生きていけるよ」

藤田「まっすぐな目で見るな。でもアイスはいただきます」

阿蘇「はいよ」

藤田「……あー、うまい。喉にしみる」

阿蘇「だろ。それが買い食いアイスの味だ」

藤田「罪な味」

阿蘇「だから買い食いごときで重いんだってば」

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