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マドラッドに到着したのですが

 次の日、私達は朝日が顔を出すと同時に島から小船でマドラッドへと向かったのピクシー達の話だと船旅はあと2日程だと言われ、残り2日も同様に島に泊まり、何事もなく三日目の朝がやって来たの。


 順調に進んでいく小船の上で受かれる私達、しかしピクシー達は朝から私の顔を見ようとしない。


 まぁ、当然よね? 魔王の部下と言う事なら、私を案内するのは裏切り行為に為る訳だし、不安で当然ね。


 次第に加速して行く小舟の先に巨大な島が見えてきたのデンキチ達にも見せてあげようとビルクの力で小さくなった私より更に小さくしてからローブ4つあるポケットにキツくならないように入れて船からの景色を見せてあげたの。

 デンキチは御機嫌だったけど、スカーやボスは潮風が苦手みたいね?


 そして、いよいよマドラッドの海岸が見えてきたわ、でも、島を目前に凄い霧が出現したの、目の前すらよく見えない状態になっちゃったのよね。


 そして、何処からか聞こえてくる歌声、優しく心地いいハープの音色も加わり、私達は辺りを見渡す、ハープが鳴り止んだ瞬間だったわ、全身を凄まじい睡魔が襲い、体が言う事を聞かなくなりその場に倒れそうになったの。

 咄嗟に私とメルリ、タウリ、ナッツの体のサイズを元に戻し、海に飛び込もうとしたんだけど、ピクシー達に取り押さえられたの。


『ごめんカミル、皆……でも、仕方無いんだ』


 辛そうな表情と泣き出しそうな震えた声のピクシー達、私は船の周りを薄れ行く意識の状態で必死に確認する。

 霧が嘘のように晴れた海、無数の船と海面から顔を出す女性達の姿が見えたわ、そして何も出来ないまま意識を失ったの。


 次に目覚めた時、私は何故か地面からそう高くない位置に建てられた十字架に両手を拡げた状態で手足を鎖で繋がれ身動きが取れなくなっていたの。


 正直、こんなゲームや映画の世界だけに存在するようなシチュエーションで目が覚める事になるなんて、想像もしてなかったわ。


 目の前には数十人が一斉に食事をできるような巨大な長テーブルが1つ、更にその先に玉座のような両端に木彫りの骸骨(ドクロ)が彫られ、紫の装飾品で飾られた悪趣味な黒塗りの椅子が1つ、流石の私もドン引きするような代物だったわ。


 辺りを見渡し状況を確認すると私の後ろからタウリの声が聞こえてきたの。


「カミル、皆、無事か……! 此はいったいなんなんだ!」


 状況が分からず焦るタウリ、今騒がれると厄介ね。


「タウリ、落ち着いて。今は騒がないで、それより後ろが見えないの、メルリとナッツも居るの?」


 冷静に情報を集める私、タウリからの返答は、タウリを一番後ろに、メルリとナッツが右と左、その前方に私という位置で4つの十字架に繋がれてる事が分かったわ。


 幸いなのは敵の姿が見えないことね、今なら脱出出来るわ。


「取り敢えず、鎖を魔法で何とかするから、待ってて」


 私が鎖を何とか外そうと魔法を発動する瞬間、私達以外の若い男の声が聞こえてきたの。


『無駄です。優しい私が教えて差し上げましょう。このマドラッドでは人間の魔法は無効化されます、無駄な悪足掻きはやめて諦めなさい』


 突如姿を現したのは爬虫類にしか見えない人間サイズのカメレオンの魔物(モンンター)だったの、しかもスーツのような服を着て、葉巻を吸いながらの登場したのよ。


「アンタ誰よ? それに意味が分からないわ、あと煙たいから葉巻を消してよ! 身長とか発育に良くないでしょ!」


『おっと失礼した。ピクシー達がアンタ達を丁重に扱って欲しいと魔王様に泣きついたのさ、本来の計画では見せしめにする予定だったが、仕方無く生かしてるのさ』


 そう語るカメレオンは葉巻を消すとその場から姿を消したの、正式には私達に見えないように姿を隠したと言うべきね。


 分かったのは私達の洋館にピクシー達が現れたのは多分偶然じゃない、カメレオンが最初から計画に私達もしくは私を拐う予定だった事を語ってたし、最初から仕組まれてたんだわ。


 何とか脱出しようと鎖に魔法を発動するも魔法は全く発動しない、目覚めたメルリとナッツも魔法の発動を試みるも同じ状況だったわ。

 私の力でも千切れない鎖をよく見ると力を入れた際に文字が浮き出て、力を鎖に吸収する仕組みになってるみたいなのよね。


「少し不味い状況ね、本当にピンチなんだけど」


 私の発言に後ろから3人の絶望の声が聞こえてきたわ。


「だから言ったろ! どうすんだよカミル!」


「お嬢様が歯が立たないなんて……お嬢様、メルリはお嬢様と一緒なら死んでも構いません!」


「取り敢えず、カミルちゃん何とか脱出方法を考えよう! カミルちゃんなら出来るよ!」


 3人の騒ぎ声に対して今度は正面から女の子の笑い声が聞こえてきたの。


「アハハ、良い眺めではないか! 妾は嬉しいく思うぞ!」


 突如、王座に腰掛ける少女の存在に気付いた私は鋭い目付きで少女を直視したの。


 少女の肌は黒と銀を混ぜ合わせたような暗い銀色、頭には角が2本あり、露出の多い軽装の鎧姿に黒いマント姿、手にはロッドが握られ先端には竜の彫り物と刃を装備した槍のような形をしているのが分かったわ。


「アンタが親玉って訳ね! 間違って宣戦布告した話も嘘なの!」


「当たり前であろう? 全くもって安い手に引っ掛かってくれたザカメレアとベジルフレアの2国には感謝してもしきれぬわ、お陰でマドラッドに両国の戦士達が出向いてくれるのだから」


「アンタ、バカじゃないの! 魔法が使えなくても数で攻めて来るのが人間なのよ! 島の1つや2つ簡単に消し飛ばされるわよ!」


 私の言葉に笑みを浮かべると玉座から立ち上がり、私を指差してきたの。


「バカは御主達だ! 妾は魔王、ヘルム=ペンネル。マドラッドの王であり、この一帯の海を支配する妾が人間に負ける訳があるか! 現に主らも捕まってるではないか? 妾は陸に新たな国を創り、世界を支配する女王となる存在なのじゃ!」


 悔しいけど、言い返せないわ、何とかしないとルフレやティストルとカルメロ達の船が危ないわ。

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