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魔族文字に魔神に色々なんです。

 デンキチのカミングアウトに私は驚いたの。

 水神ミミミの一件も解決しトンネルも開通した頃にフッと頭の中を駆け巡る洋館の地下室、思い出したわ。じい様に本の自慢するんだった!


「メルリ、留守番よろしくね」


 朝から気分よく出掛ける私はデンキチの肩の上で再度、自分の眼で本の内容を確認した。“絶対記憶者”の(ジョブ)があるから、まぁ問題は無いんだけど。


「デンキチ? 人間てやっぱり欲張りなのかしら、不老不死とか、羨ましいって思っちゃうのよね」


『カミル、まだ若い。デンキチには不老不死とかわからない』

 

 まぁ、モンスターの寿命は長いのよね、不老不死なんて必要ないか?


 そんな話をしながら、私達はアメト村のじい様の図書館に着いた。


 中に入って、じい様に洋館の話をして本題ね。


 じい様の前にずらりと本を並べると慌てて布を掛けられたの。


「何すんのよ? どうしたのじい様」


「カミル、地下に本を運ぶぞ、此処じゃ不味いんじゃ」


 慌てるじい様の反応からすると、この本・・・全部不味い本なんだわね。


 地下室の本棚から古い本を取り出してきたじい様。


 その中に私の持ってきた本と同じマークが記されたページがあったわ。


 説明書きに“魔族書”と書かれていたの。


 じい様の話だとかなりヤバイ物みたいなのよね。


 魔族書は世界で読むのを禁止された禁書であり、魔族文字を独自に解読して人の言葉に置き換えた書物だとわかったわ。


 見つかった禁書の殆どは、国家管理図書館か重要危険物保管所、もしくは国家博物館の厳重管理室に送られるらしいの。


「カミル、この本は燃やすべきじゃ、本来なら、こんな事は言いたくないが」


 本を大切にする、じい様から有り得ない言葉が出てきたわね……そんなにヤバイ物なのかしら、流石に驚くわね。


 じい様の話を聞いて分かったことは、魔族書が読める者は世界に数人と魔族のみと言う事実、そして……魔族書は読んだ者に刻まれると言う事実だったわ。


「つまり、私が声を出して読めば解決じゃない!」


「古代文字とは、物が違うわ、幾らなんでも無理じゃわい、諦めよ」


 じい様、私を嘗めるんじゃ無いわよ!


「私は既に読んでるんだから、寧ろ声を出すだけなら楽勝よ」


 そんな私の頭の中にアララからの念話が入ってきたの。


『カミル、駄目ですよ。魔族書なんかいけません! 仮にも女神の主人が魔族の力が有るなんて笑えません』


 なんか、焦ってるわね?


『なら、何で魔族の言葉まで読めるような力にしたのよ?』


『してません! 寧ろなんで読めるのか不思議なんですが……』


 あら、アララ本気で否定してるわね? うっかりじゃないみたいだわ。


『アララ、因みに魔族文字を読む条件とかあったりする?』


 条件……魔族の血を継いでいることが最低条件、もしくは前世に魔族の血が濃かった者。


 私は考えた……そして、数分で結論に達した。

 クレレが体の入れ間違いしたんだった……


 アララもその指摘に固まっていたわ。当然よね、私の身体……元々魔族の幹部が生まれ変わる筈だったやつなのよね。


 悩んでいる私


 悩むとか面倒だわ! 


 目の前の魔族書に書かれた魔族文字をなに食わぬ顔で口にしてみた。


 あ、じい様がフリーズしてる。


 突如動き出す魔族書。黒い光の渦が螺旋階段のように次第に巨大になると、そこから自称魔族書の魔神が飛び出してきたの。


『我、力を望みし愚者よ、我を崇めるがよい! 貢物を捧げよ……さすれば』


「誰が……愚者よッ!」


『ギャアァァァ、いたい、イダイ……』


 魔神にも容赦なくデコピンとハイキックを食らわせる私、自分で言うのもなんだけど、無茶苦茶だわ。


 顔面にクリティカルを食らわした私は気絶した魔神から話を聞く為に蜂蜜を口に少量突っ込んであげたわ。


 起き上がると無駄に偉そうな態度にイラっとしたから、腹に正拳突きを食らわせて、また気絶したから蜂蜜投入。


 売り物だから、後で請求書ね。


「態度を改める気になったかしら?」


 私が指をバキバキならしながら優しく尋ねると魔神は正座で緊張に震えながら頭を下げたわ。


『ハイ……大変失礼しました……』


「で、アンタは何?」


 魔神は魔族書には一冊に一人魔神が封印されてる事実と魔神の力を体内に入れる事で能力を使えると教えてくれたわ。


 私は取り敢えず魔神の名前と能力を聞く事にしたわ。


 魔神の名前はビルク。

 能力は全ての対象を小さくする。


 正直、世界を滅ぼす終焉の炎とか、全てを凍り付かせる息吹とか、期待してたけど……ショボい!


「アンタ……そんな能力で、私を愚者扱いしたわけ?」


 魔神と言っても迫力を出したのは最初だけで、今は小さな猫の姿で反省してるわ。


 しかし、私が何故、こんなにキツい口調かと言うと、ビルクを試しに私の魔神にしたの。


 そこまでは上機嫌だったわ。


「よし、こんな感じなら? 魔族書を片っ端から集めて私の力にすれば問題ないわね」


『魔族書は一人に一冊しか能力を与えないんですが……』


 そこからよ、私の怒り爆発、先に言わないなんて詐欺よ! しかも、死ぬまで解除出来ないのよ。


 クーリングオフすら無いなんて、悪質だわ!


 結果として、他の魔族書と 死霊魔術師(ネクロマンサー)の書物も預けたわ。大切な物だし、じい様なら信頼できるもの。


 因みに私はいったい何者なんだか、自分でも分からなくなってきたわ。


 帰り道、デンキチの一言……


『カミル良かったね。デンキチのお陰だね』


 うん? 何を言ってるのかしら。


 デンキチの能力、つまり契約の際に知識を求めてきたの、その知識を吸収しやすくする為に魔族文字とか、アララの与えられない部分を私に与えたらしいの。


 たまに賢いこと、言うけど……侮れないわね、デンキチ。


 そんな私はビルクの能力を使って面白い事を考えたの。


 私はデンキチの肩で不適な笑みを浮かべると、私の膝に乗ってるビルクが背筋を震わせたわ。でも……逃がさないんだから!

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