89.榎崎 朱音②〜vsミキオ〜
◼️前回までのあらすじ◼️
残り3つのメンバー枠を巡って、候補者5名によるメンバー争奪戦を行うことなった。
その初戦として、アカネは同学年のミキオと対戦することとなったのだった。
※今回も朱音視点です。
ランダム選択で選ばれたバトルフィールドは『荒野』であった。障害物はほぼ無く、地形効果も特に無いオーソドックスなフィールドだ。
「良い勝負としよう」
「ええ」
戦闘開始前にミキオと言葉を交わす。
バトルが成立したため、部員のみんなの姿は光学迷彩が施され見えなくなる。
ここは私とミキオだけの二人の戦場となる。
バトル開始までのカウントダウンが始まる。
投擲士の私はブーメランを構え、対する騎士であるミキオは盾を前に構える。
ミキオの戦闘スタイルは盾を二枚使用してでの防御主体のものだ。試合開始と共に【武具錬成】にてもう一枚『大楯』を召喚し、【念動力】にてそれを操って闘う戦法を取ってくるはずだ。
Fight!!
「スキル発動【長距離投擲】!」
私はバトル開始と共にスキルを発動させてブーメランを投擲する。そして更に私も駆け出して相手との距離を詰める。
「なっ――くぅっ!」
武具錬成をしようとしていたミキオは先制の投擲攻撃に慌てて、スキル発動を中断して防御行動を取る。
ガキン!
真っ直ぐに投擲したブーメランはミキオの盾に弾かれる。だが、それは想定内だ。ダメージを与えるための攻撃ではなく、二枚目の楯を召喚させないための牽制攻撃なのでスキルをキャンセルさせられただけで目的は果たせている。
なので、次の行動は――
「スキル【縮地】」
高速移動スキルを使用して一気に差を詰めると、地面を蹴って跳び上がり
「スキル【飛燕脚】!!」
空中を高速移動して蹴りを放つスキルにてミキオに追い討ちをかける。
「くおぉっ!!!」
全体重が乗った蹴りを盾で受けたミキオは、弾き飛ばされるが何とか倒れない様に堪えた。
「まだまだぁ!」
私は気合の声と共にジョブの固有スキル【武具帰還】にてロスト状態となったブーメランを手元に戻すと、ブーメランを打撃モードに変更し波状攻撃を仕掛ける。
武器による打撃、拳撃、蹴撃と間断なく攻撃を加え続ける。
盾二枚使いになってしまうと中距離攻撃が封殺されてしまうので、このままラッシュで削り切るしかない。
「はぁ! はっ! やぁ! はあぁっ!」
何とか防御を掻い潜ってダメージを与えようとするが、防御に専念したミキオのガードが固く突破できない。しかも、所々で特殊武器である短刀『ソードブレイカー』で防御するため、こちらの武器の耐久が削られている。あと数回あの武器でこちらの武器を防御されたら、こちらの武器が破壊されてしまう。
鉄壁の防御で守りつつ、防御時に相手の武器の耐久値を削るソードブレイカーの効果で武器破壊を狙うミキオの得意な戦法だ。
「ならばっ」
私は手数で勝負するのを止めて、ぐっと腰を落とす。
「必殺『崩穿華』!」
Snowが使う必殺技名を鍵言葉としてスキル【貫衝烈拳】を放つ。
「なっ、しまっ――」
通常の正拳突きと変わらない単純なモーションのスキルだがその効果は絶大だ。防御に徹していたミキオは手に持つ盾で防御しようとしたがスキルの特性に気づき慌てて回避しようと試みるが間に合わない。
私の拳がミキオの盾に炸裂し、スキルによって自動で体内に溜め込んだ気が放出される。
「くわぁっ!」
ミキオが苦悶の声を上げてよろける。
スキル【貫衝烈拳】は防御無視の貫通攻撃なのである。放出された気が盾を貫通してミキオの左腕に大ダメージを与えたのだ。初撃ボーナスも相成って相手の体力を一気に削る。
好機――
この好機を逃すまいと距離を詰める。ミキオは慌ててソードブレイカーにて反撃してくるが、その剣閃は単純なもので、私はそれを躱してカウンターの拳を叩き込む。ミキオの体力が更に減少する。
「くそっ」
ミキオは慌ててシールドバッシュを繰り出して距離を取ろうとするが、先読みしていた私は突き出した盾を鉄甲で受け止めて弾き飛ばされない様に踏み留まる。
「やはり強いな。賭けに出るしかないか――スキル発動【武具錬成】」
盾と鉄甲で押し合っている状態で、ミキオがスキルを発動する。右手に装備していたソードブレイカーを投げ捨てて、右手に大楯を召喚する。
何かを狙っているようだが、この状態で二枚目の楯を召喚されても形勢が変わらない筈だ、と結論付けて私は猛攻を続ける。押し合いになっていた相手の盾を左にいなすと打撃モードにした武器での一撃を繰り出す。
「くっ、うおおっ!」
私の攻撃をミキオはバックステップで躱すと、先程召喚した右手の大楯を上空に投げ放つ。
ミキオの戦闘スタイルは二枚目の大楯については【念動力】による遠隔操作をするものだ。
今更、盾二枚装備になっても遅い。距離を詰めれば盾二枚のメリットは無くなる。二枚目の楯については中遠距離に対応するものだ。攻撃に利用したとしても遠隔操作された楯では大ダメージを受けることはない。
――このまま勝負を決める。
私は念のため頭上に投げ上げられた大楯に注意を払いながら、一気に距離を詰めて接近戦を仕掛ける。
相手は武器を投げ捨てている。手に持つのは盾一枚だ。
「スキル【念動力】!」
ミキオが予想通りのスキルを発動させる。今更上空の楯を操ったところで脅威にはならない。
「一気に勝負を決めさせてもらうわ! スキル【爆烈打撃】!」
スキルを乗せて武器を振り抜く。ミキオは手に持つ盾で防御するが武器が接触した瞬間、スキル効果で爆発が発生する。
「ぐぁっ……っ!」
その爆風にミキオは盾を弾き飛ばされる。
これでミキオは丸腰だ。あとは鎧で守られていない場所を狙い、一気に削り切るだけだ。
追撃を仕掛けるために一歩踏み込む。
ガラ、ガランと2つの盾が地面に落ちる音が響く。
僅かな違和感を感じながらも、攻撃を仕掛ける。が――
ドスッ……
「うあっ…… なっ」
背中に衝撃と痛みが走り、私の体力がグンと減る。
何が起きたの?!
何が起きたのか分からないが、背後から攻撃を喰らったようだ。まさか――
「【念動力】で動かせるのは所有権がある自分の武具だ。盾だけじゃない!」
ミキオが拳を繰り出しながら叫ぶ。
私は理解する。二枚目の楯は囮だったのだ。ミキオが【念動力】で操作対象にしたのは投げ捨てた武器の方だったのだ。
ドガッ
しまった――
ミキオの拳がカウンターとなって私の顔面を捉える。その衝撃で視界が歪み、体勢が崩れる。
「それに俺は防御一辺倒じゃないんだぜ。いざという時のためにSnowに頼み込んで格闘術も学んだんだ」
ドガッ、ドガッと衝撃が襲う。連続してでの拳の連打。ミキオが言う通り格闘術を学んだその拳は重みがあり確実に体力を奪っていく。
まずい、何とか体勢を立て直さないと――
必死に防御を試みるが、的確な相手の打撃に体勢を立て直すことができない。
「はあぁぁぁぁっ!!」
気合の声と共にミキオが回し蹴りを放つ。何とか防御が間に合ったのだが、遠心力で威力を上乗せした強力な蹴りを受けて、私は弾き飛ばされた。
しまった――
背面方向に弾き飛ばされながら、体勢を変えようと必死にもがくが、空中に浮いた状態だったため状態を変えることが出来なかった。
私はそのままなす術なく背中から地面に落ちる。ただそれだけではダメージにもならないのだが、私の背中にはソードブレイカーが刺さっていたのだ。
地面に落ちた衝撃で、刺さっていたソードブレイカーが背中から心臓部分を貫き致命の一撃となる。
Game Over……
You Lose
非情にも私の敗北を告げるシステムメッセージが目の前に表示されたのであった。




