84.本気のバトル
◼️前回までのあらすじ◼️
タッチーこと太刀川先輩との約束で、津張工業高校のジョーカーと再度会うとこになった真雪。
今回はタッチーの戦闘スタイルについてジョーカーから助言をもらうのが目的であったが、その前にジョーカーからの要望で、真雪と闘うこととなったのであった。
ブレバトグランプリに出場しようと心に決めた真雪は、久々に本気でバトルに挑むのであった。
バトルフィールドは『闘技場』であった。
円形の舞台であり、端は高い壁で囲われており、その高い壁の外側に観客席と観覧席が設られている。しかし、その椅子には観客の姿は無い。バトルが始まると観客の姿は不可視となりバトルに影響を与える事はできなくなるからである。
なので、今現在は闘技場にジョーカーさんと私の存在があるのみである。まさに邪魔の入らない一対一のガチンコバトルなのである。
私は細く息を吐き出し集中力を高める。
対するジョーカーさんはというと、初期装備の杖を投げ捨て【武具錬成】にて『鉄甲』を装備する。
「マジなバトルなら偽装は不要。最初から本気でいくぜ」
ドウっと音が聞こえるほどの勢いでジョーカーさんが闘気を放出する。
相手は最初から本気だ。私もそれに対応するために、気を身体中に巡らす。
フィールド中央に数字が表示される。その数字がカウントダウンとなり、試合が始まる。
……2……1
Fight!!
開始と共にジョーカーさんが地面を蹴る。瞬く間に私の間合いにジョーカーさんが飛び込んでくる。
「まずは小手調べだ。はぁっ!」
ジョーカーさんは気合の声と共に掌打を繰り出す。
私は『流水の捌き』で防御を試みるがその動きを予知した様に掌打の軌道が変わる。
これこそジョーカーさんの真骨頂。蛇の様に腕をうねらせて変幻自在に掌打の軌道を変化させる藤岡無双流の『蛇絞牙』だ。攻撃を払おうとした私の左腕を避けるように弧を描く軌道に変化した相手の掌打が私の頬に炸裂する。
だが、二度目の対戦である。ただで攻撃を喰らわない。相手の攻撃と同じ方向に首を捻り威力を相殺させ、さらにその首の動きに合わせ身体も一回転させ遠心力を乗せた肘鉄を相手の脇に叩き込む。
「ぐはっ」
ジョーカーさんは苦悶の声を漏らすと、堪らずに距離を開ける。
「くっ、初撃は奪えたが、そう簡単に主導権は握れないか」
ジョーカーさんは獰猛に笑うと、腰溜めに構える。その右手に闘気が凝縮されていく。何か技を出す予兆だ。
私は相手の攻撃に備えて再度基本の構えを取る。
「ふぅ…… 新技だ。食いやがれ、秘技『飛天烈鷲拳』!」
ジョーカーさんが、気合の声と共に闘気を込めた右腕を突き出す。
それと同時に私は本能的に回避行動を取る。
瞬間、右肩の近くに衝撃波が駆け抜け、後方でドゴンと爆発するような音が響いた。ただの衝撃波じゃない。闘気を乗せた強力な一撃だった。危ない、今避けてなかったら大ダメージを食らっていた。
「藤岡無双流・王虎猛襲!」
間髪入れずに距離を詰め、連撃を放ってくる。先程の衝撃波を躱した影響で体勢を崩している私は、回避する事が出来ず、防御することしかできない。
「くっ!」
変幻自在の軌道を描く攻撃に『流水の捌き』は通用しないので相手の攻撃を撃墜するように拳をぶつけて防御をするが、後手に回ったことと、読み切れなかった攻撃があったことでいくつか攻撃を喰らってしまう。
スキル【超過駆動】のデメリットの被ダメージ倍増の影響でぐんぐん体力が減っていく。
このままだとマズイ。
距離を取ろうとバックステップしようとした私の体がグンと相手に引き寄せられる。
くっ、掴まれた。
凄まじい握力で、肩口の服を掴まれ、距離を取る事が出来ない。
ならば――
投げ技を繰り出そうと身を反転させたのだが、相手も同時に投げ技を繰り出そうとした様で、互いの引っ張る力が重なり合い互いの投げ技が不発に終わる。
「チィッ!」
ジョーカーさんは舌打ちをして、別の技を繰り出す。広げた手に闘気を集中させ、五指を極限まで強化させる。
「藤岡無双流・奥義『鮫牙覇砕撃』!」
闘気によって技の名前の通り、鮫の歯の如き凶器へと変貌した五指が螺旋の軌跡を描いて私に迫る。
このまま防戦を続けていると敗ける……
私は覚悟を決めて重心を落として気を練り込みながら左腕の鉄甲で防御を試みる。が――
ズシュッ!!
相手の攻撃の軌跡が変化し、無敵部位の鉄甲を避けて左腕の上腕部に指が突き刺さる。
「くっ……!」
激しい激痛を私は歯を食いしばって堪える。
この痛みは覚悟していた。変幻自在の攻撃を放つジョーカーさんならば攻撃を当ててくるのは想定内だ。左腕は捨てる覚悟だった。
私は自分の体力ゲージが赤くなるのを視界の端に確認しながら地に着けた足を踏み込む。服を掴まれ近距離だった互いの身体の位置が接触するほど密着する。
「!!」
地面を蹴った足元から螺旋状に身体を伝い気が練り上げられる。ジョーカーさんは危険を感じ取ったのか、掴んだ手を離し距離を取ろうとする。が――もう遅い!
「必殺――『瞬勁』!!」
接触した右の拳から、重心移動にて生み出された衝撃と共に全身を使い練り上げられた『気』を相手の身体に叩き込む。師匠を倒した私オリジナルの必殺技だ。
「がっ、ぐはぁぁあっ……」
ジョーカーさんの背中から貫通した衝撃波が吹き出し、遅れてその身体が吹き飛ぶ。
八割あったジョーカーさんの体力ゲージが黄色に変わり、さらに赤色にまで減少する。
「まだまだっ!」
相手の体力を削りきれなかった事を確認した私は、吹き飛んだジョーカーさんを追う様に地面を蹴る。
ここで決める!
先程の攻撃を受けて左腕が部位破壊と判定され、力が入らない。こっちは右腕一本しか使えず、さらに体力は残り1割だ。ギリギリの状況なので、これ以上戦闘を長引かせれば不利になる。
吹き飛んだジョーカーさんに追いついた私は、真陰熊流格闘術で最大の威力を発揮する追撃技を繰り出す。
「真陰熊流『迅潮蹴』!」
前方に一回転し、遠心力と全体重を乗せた踵落としを、吹き飛び中で回避不能な相手へと叩き込む。
ドゴン!!
足から伝わってくる感覚から鉄甲で防御されたのが分かる。しかし、渾身の力を込めた一撃を受けてジョーカーさんは舞台に叩きつけられる。
「ごはっ!」
背中を強かに打ち付けてジョーカーさんが苦悶の声を漏らす。相手の体力ゲージは更に減ってゲージは残り数ドットとなる、勝利まであと少し!
「はあぁぁぁぁっ! 『水穿』!」
とどめとばかりに拳の連打を叩き込む。ジョーカーさんは必死に鉄甲で防御するが、拳の連打を受けて唯一の防具である鉄甲が砕け散る。これで相手は防御手段が無くなった。
「これで終わりです」
左手が使えないため、右手を引いて最後の一撃を繰り出す――
「くっ」
追い詰められたジョーカーさんは、玉砕覚悟で蹴りを繰り出した。
それは苦し紛れのものであり、直線的な攻撃だったので『流水の捌き』で相手の攻撃を逸らして、こちらの攻撃のみを叩き込めるはずだったのだが――
脇腹に衝撃と痛みが走る。
しまった――
防御しようとした左腕は部位破壊によって使用不能だったのだ。
互いの攻撃が同時に入り、体力ゲージが同時に消失する。
『Draw……』
このゲームでは珍しい引き分けの文字が表示されたのだった。
久々のガチバトル、書いててとっても楽しかったです。
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