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83.翌日の約束

■前回までのあらすじ■

七夕イベントに参加した真雪は女王(クイーン)・冴華と再会することで、自らの実力を認め、そして冴華と再戦するために全高ブレバトグランプリへ出場することを心に決めたのであった。


□登場人物紹介□

太刀川 達也(アバター名:タッチ―)

 神里高校二年。真雪の先輩。

 手足の長い長身かつ痩身の体形。天性の柔軟性で予測不能の動きが可能。

 津張工業高校との練習試合にてジョーカーに魅了され、変幻自在な攻撃を行う戦闘スタイルに変更し才能が開花した。


藤岡 勇悟(アバター名:ジョーカー)

 津張工業高校一年、かつ学校の悪を束ねる番長。極道『藤岡組』の一人息子。

 家の厳しい教育に耐えかねて、理知的で優しい人格の『僕』と、好戦的で凶暴な戦闘狂の『俺』という二つの人格を有することとなった。

 変幻自在な攻撃が特徴の格闘術『藤岡無双流』の使い手。


土門 勝利(アバター名:ドモン)

 津張工業高校二年。リーゼント、短ラン、ボンタン姿の昔ながらの不良姿。

 Snow(真雪)の大ファン。

 七夕イベントに参加した土曜日の翌日、私は『Brave Battle Online』にダイブしていた。


 私が今いるのは私の住む神里町の管理するエリアである。現実ではまだ緑が多く残る田舎町であるのとリンクしていて、ゲーム内でも人がそんなに多く居ない遊牧民の集落の様な風景のエリアとなっている。


 マスコットモードでダイブした私は、ゲーム内の活動に身体を慣らすために大きく深呼吸をして、視界を確認する様に辺りを見回す。

 人口の少ない町の管轄エリアなだけあって周りにはあまり人がいない。町のPRをしてくれるNPCがちらほらいるだけで、プレイヤーはあまり見当たらなかった。


「約束の時間まで、まだ少し時間があるから、まだ誰もログインしてないかな?」


 メニューウィンドウを開くと、予想に反して今日に会う約束をしていたプレイヤーはみんなログイン中と表示されていた。

 今日はプレイヤー名「タッチー」こと太刀川先輩からのお願いで、津張工業高校の「ジョーカー」さんと会う約束をしていたのだ。

 ジョーカーさんにメッセージを送ったところ、指定の時間にこちら(私の初期ポップアップ場所の神里町エリア)に来てもらえることになっていた。


「あれ、もうみんなログインしてる。タッチー先輩はこのエリアに居るっぽいから、近くにいるはず」


 メニューに表示されたフレンドの情報から、タッチー先輩が同じ神里町エリアに居る事を読み取って辺りを見回す。辺りにプレイヤーがほとんどいなかったため、タッチー先輩をすぐ見つけることができた。

 タッチー先輩は、カカシ相手に訓練ができる訓練エリアにいたのだが、私がログインした事に気付いてこちらに向かってきていた。


「あの。タッチー先輩、こんにちは」


 私が挨拶すると「今日は我の我儘のために段取りさせてしまってすまぬな。どこかで埋め合わせはする所存だ」と独特の口調で応えた。

 私は「そんな、気にしなくていいですよ」と返すが、タッチー先輩は「いやいや、そうはいかぬ」とそんなやり取りをしているうちにピロリンというシステム音とともに神里町エリアにアバターが転移してきた。

 転移してきたアバターは二人で、学生服と学生帽をビッチリと着こなした学生姿のアバターと、リーゼントに髪型を決めて短ランボンタンを着た不良風のアバターだった。転移機能を使うために二人ともマスコットモードの姿である。


「こんにちは。お久しぶりですね」


 転移してきたアバターのうちの一人、学生帽のアバターである『ジョーカー』さんが声をかけて来た。


「あの、わざわざこちらまで来てもらっちゃってすみません。今日は、よろしくお願いします」


 私はぺこりと頭を下げてお礼を言う。


「いやいや、気にしないでいいよ。ゲーム内なら転移なんてすぐだから。

 で、紹介したいプレイヤーって隣の方かな?」


 チラリとジョーカーさんがタッチー先輩を見ると、タッチー先輩はビシッと姿勢を正しす。


「はい。うちの高校の先輩でタッチーです。

 ジョーカーさんの戦闘スタイルを参考に戦術を新しく組んだので、バトルを見てもらって出来たらアドバイスをいただければな、って思ったのですけど」


「ふーん。なるほどね。僕に見てもらいたいって事は、それなりにその戦闘スタイルが形になっているのかな?」


「はい。いや、まだ修行中の身であるため、まだまだ未熟ではありますが、是非ともご助言頂ければと思っております」


 話を振られて、カチコチに固まりながらタッチー先輩が受け答えをする。なんとなく冴華さんに会った時の朱音ちゃんに反応が似ていて、ちょっと微笑ましい。

 私としてはタッチー先輩の戦闘スタイルはかなり出来上がっていると思うのだけど、憧れの相手に緊張しまくっているみたいだ。


「はん。なんだこのモヤシ野郎は。ジョーカーさんや、Snowさんが面倒を見てやるほどの人材か?」


 リーゼントのアバターが睨みを利かすようにタッチー先輩を見る。その視線にタッチー先輩は「うぅ」と一歩後退った。


「ドモン先輩、あまり相手を悪く言ってはダメですよ。あまり僕らの会話を邪魔するようでしたら帰ってもらいますよ」


「す、すみません。会話の邪魔をするつもりは」


「ならばいいです。すみません。僕が『Snowさんと会う』と言ったらどうしても連れて行ってほしいと頼むのでドモン先輩も連れてきてしまったのですが、問題なかったですか?」


 ジョーカーさんはリーゼントのアバターのドモンさんを諭した後、私に確認してきた。


「はい。全然構わないですよ……」


 そう答えると、ドモンさんは「あざす。すみません。迷惑はかけないのでここにいさせてください。姐御!」と何度も頭を下げた。うっ、姐御って……


「それじゃあ、早速タッチーさんの――――ぐっ、うっ……」


 話を進めようとしたジョーカーさんが、突然頭を押さえてよろける。それとともに、ザワリと空気が震えAIで管理されているNPCの鳥たちが驚いて木々から飛び立った。


「ジョーカーさん!」


 みんなが慌てて声をかけるが、ジョーカーさんは手を前に出して「大丈夫だ」とみんなを制止する。


「ご、こめん。もう一人の(ぼく)がSnowを前にして興奮しちゃってて、今日はSnowとバトルするためにここに来たのではないって言い聞かせていたのだけど」


 苦笑を浮かべてジョーカーさんは事情を話す。こうやって優しい対応を見せているジョーカーさんだが、心の中に凶暴なもう一つの人格が存在しているのだ。多重人格というものらしいのだけど、心の中で二つの人格がせめぎあっているみたいだ。


「あの、ジョーカーさん」


「なんですか。すみません、ちょっと待ってください。もう少し時間をいただければもう一つの人格を抑え込めるので……」


 ジョーカーさんはなんだか苦しそうだ。ならば――


「もしジョーカーさんが私とのバトルを望むならば、いいですよ。私、闘いますよ」


「な、に――」


 私の言葉にジョーカーさんの雰囲気が一気に変わる。


「今の言葉、二言は無いな?」


 鋭い目つきとなったジョーカーさんが訊き返してくる。


「はい。私もブレバトグランプリに出場するって決めたので、それと私も自分の実力を知りたいので」


 今まではずっと受け身でいたけど、昨日の七夕イベントでの冴華さんとのやりとりで私の意識は変わった。これからは積極的にバトルを行っていき、ブレバトグランプリの全国の舞台でライバルであるSaeKaと闘うのだ、と心に決めたのだ。


「くくく、はははは! 我儘を言ってみるもんだな。ならば早速バトルだ」


 ジョーカーさんは呵々と笑い、すぐさまバトル申請を送ってきた。


「タッチー先輩、すみません。先に一試合、私にバトルさせてください」


 断りを入れると、先輩も「いや、気にしなくていい。ジョーカー殿の生のバトルを見れるだけでも参考になる故」と許可をくれた。

 相手側も「ジョーカーさんとSnowさんのバトルを間近で見れるなんて、光栄っす」とドモンさんも目を輝かせていた。


 それならば問題ないな、と思い私は「では、ジョーカーさん。よろしくお願いします」と言って、私はバトル申請のダイアログの「承認」ボタンを押したのであった。

キリが良かったので、今回の話はバトル前で切らせてもらいました。

次回はジョーカーとの再戦。本気バトルとなります。


ついに上を目指すことを心に決めた真雪。どんなバトルになるか

次回「84話・本気のバトル」

を乞うご期待ください。

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