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79.デモ体験⑥〜傍観者たちの反応〜

◼️前回までのあらすじ◼️

七夕イベントにて、ブレバト紹介ブースに足を運んだ真雪達。

たまたまデモ体験をする被験者に選ばれた真雪と冴華だったが、ゲーム開発者の作為によって強力なモンスターと闘う羽目となってしまった。


※今回は観客席、第三者の視点でのお話となります。

 目の前で繰り広げられる闘いに魅了され、歓声が上がっている。

 途中、システムアナウンスによってデモアバター「ゆき」についてシステムトラブルがあり「スキル表示がされない」とアナウンスがあったが、それを忘れさせる様な熱い闘いが舞台で繰り広げられていた。



『おおっと、またしても怪鳥デネブの全方位攻撃の態勢だ!

 全身に纏った冷気が生み出した氷の礫を全方位に撃ち出す反則級の攻撃。撃ち出されたら逃げ場がない広範囲の攻撃だが、チャレンジャーの三人はこれまで何度も凌いできている。今回も凌ぎ切ることが出来るか!?』


 怪鳥デネブの予備動作に、興奮気味の司会兼実況の声が響く。


 怪鳥デネブは上空で大きく翼を広げて、弾となる氷の塊を生成している。


『先ほどよりさらにチャージ時間が長い。おおっと、これはとんでもない氷の量だ。これでは逃げ場が無くなるどころではない大量の弾が発射されるぞ! これは流石にヤバイんじゃないか!?』


 実況の声に動揺の色が混じる。

 先程は360°全方位に満遍なく氷が生成されただけであったが、今回は二重、三重にと取り囲む様に氷の弾が生成された、もはや怪鳥デネブの姿が完全に隠れてしまっている。


「ちょっ、さすがにあれは」


 同じく戸惑いの色を見せるセシル叡王の前に、魔法少女姿の真雪(ゆき)が移動し、なにか言葉をかける。

 セシル叡王はその言葉に驚いた様な表情を浮かべるが、ビキニアーマーの冴華(サエ)が何か遠くから何かを伝えると、セシル叡王は頷いて魔法詠唱を始める。

 微かに冴華(サエ)の言葉の一部「――を信じて」の声をマイクが拾っていた。


『チャレンジャー達はどんなやりとりをしたのでしょうか?』


『うーん。分かりませんね。ですが、セシル叡王の唱えている魔法ですが、あの魔法陣の形状から攻撃魔法の様に思われます』


『と、いうことは、セシル叡王は防御を捨てているということですか? まさか、魔法少女のゆきさんが身を挺して盾になるということでしょうか』


『分かりませんが、おそらく……』


 解説の二人が状況を分析してその様なやりとりをしている。身を挺して隙を作るという作戦予想に観客は大きくどよめく。


『チャレンジャー達は、大胆な作戦に出る模様です』


 実況を行なっている司会者がその言葉を聞いて観客に説明をした瞬間、怪鳥デネブが大きな鳴き声と共に大技を発動させる。


『怪鳥デネブの全方位攻撃が発動した!

 画面を覆い尽くすほどの氷、氷、氷! 凄まじい数の氷の弾丸がチャレンジャーを襲うぅぅ!!!!』


 立体映像で映し出されたその圧倒的な光景に観客は驚き、現実と錯覚してしまったブレバト観戦の初心者からは小さく悲鳴が上がった。


『観客の皆さん安心してください。これは立体映像なので観客席に氷の礫が降り注ぐことはございません!

 さぁ、目を凝らして舞台をご覧ください。

 この氷の嵐の中チャレンジャーの体力は未だ健在! な、な、な、なんと、ビキニアーマーの「サエ」さん、この氷の礫の嵐を避ける、避ける、避ける!

 とんでもない動きだ。これは【俊敏強化(スピードシフト)】を使用している様だ。肉眼で捉えきれないほどの凄まじい動き。

 避けきれない氷も刀で弾いている様だが、この物量、それにスキルのデメリットで器用さが下方修正されているため、さすがに全ては防ぎきれないようだ。このままでは体力が無くなってしまうのも時間の問題か?!』


『いや、よく見て見てください。避けきれなかった攻撃をなんとビキニアーマーの鎧部分で受けています。

 ビキニアーマーは保護部分は僅かですが、アーマー部分は無敵部位となっています。ですので、ダメージを受けず、追加効果の凍結も無効化されています。

 これはとんでもない高等技術ですよ!』


 実況の言葉を遮って、解説が興奮気味に説明する。

 観客席からは「うほっ、おっぱいガード、ぱねぇ」「もっと胸元みせろー」のような野次が飛んでいる。


『な、なるほど。凄いことが起きてるんですね。でもしかし魔法少女の「ゆき」さんの方は――って、えっ?』


 真雪(ゆき)の方へ目を向けた実況が言葉を失う。

 目の前で何が起きているのか理解出来なかったからである。

 強いてその状況を説明するならば、氷の礫が真雪を()()()()()通り過ぎていた。

 それはまるで小川に浮かぶ大量の落ち葉が、川の流れによって勝手に橋の柱を避けて流れる様に、真雪にぶつかる寸前に軌道が変わって真雪(ゆき)を避ける様に後方へ飛んでいっていたのだ。


『これは何が起きているのか?! プログラムのバグ、でしょうか。怪鳥デネブの攻撃がゆきちゃんを避けているように見えます――』


『プログラムのバグではないです!

 中央モニターをご覧ください』


 実況の言葉をすぐにゲーム開発担当の解説が否定する。スキル表示がされない不具合だけでも問題なのに、これ以上システムに不具合があると認めるわけには行かないからだ。必死に手元の計器を操作して、リアルタイムで撮られた映像をスローモーションで中央モニターに表示させる。

 そこにはスロー再生する事でやっと見ることができるほどの素早さで腕を振るい、高速で飛来する氷の塊を逸らしている魔法少女の姿が映し出されていた。


『こ、これは凄い。魔法少女がとんでもない事をやってのけているぅぅ!!! これは何が行われているのでしょう?』


『これは高速でスキル【会心防御(パリィ)】を繰り返しているか、高度な格闘術を自ら使用しているかどちらかでしょう。

 スキル表示の不具合のためどちらか判断がつきません』


『それによく見てください。ゆきちゃんが攻撃を捌いているお陰で、後ろに立つセシル叡王へも攻撃が届かない様になっています。

 ゆきちゃんが()()()()()()()()()()()()()ようです。

 これは私達が予想した「ゆきちゃんが()()()()()()()()()」という予想を良い意味で裏切られましたね』


『この舞台で、チャレンジャーの二人がとんでもない高等技術を披露しているぅー!!!』


 実況と二人の解説が次々と熱の籠った言葉で会場を沸かす。それと同時に長く続いたデネブの全方位攻撃が終わる。


「これは私も活躍しないと、プロの面子丸潰れになるわね。大技いくわよ。

 ゆきちゃん、射線を開けて」


 詠唱が完了したセシル叡王が、真雪(ゆき)に声を掛けて魔法を発動させる。


「スキル【氷操剣(アイスブレード)】――多重詠唱(マルチキャスト)――『巨人の剣(ギガブレード)』生成!」


 両手を掲げたセシル叡王の上に幾つもの氷の剣が生み出され、一つに融合し一本の巨大な剣となる。


「クソ鳥め、あんたの高見の見物はもう終わりよ!

 喰らいなさい、奥義『光剣大断撃(クラウ・サラス)』!!!」


 セシル叡王が腕を振るおろすと、それに連動するかの様に巨大な剣が唸りを上げて上空の巨大な鳥に襲いかかる。


 ズドオオオォォォォン!!!


 怪鳥デネブは必死に回避しようと鳴き声を上げるが、大技(スキル)後の硬直によって行動不能に陥っている。

 その怪鳥デネブに巨大質量の大剣が直撃した。


『ここでセシル叡王の大技「光剣大断撃(クラウ・サラス)」が炸裂ぅぅぅっ!

 多重詠唱で作り出された巨大な氷の剣が怪鳥デネブに大ダメージを与える!

 水晶の鎧にて斬撃については弾かれたが、打撃ダメージと打ち落とし効果で飛翔状態のデネブが地上近くまで落下。これで、地上で構えている二人の射程に入ったぞ!』


 セシル叡王の大技に、司会者が絶叫気味に実況を入れ、それに合わせて爆発する様な歓声が巻き上がる。


「ねぇ、美月。司会の人がゲームPR用に過剰演出をしていますって言ってるけど、これってマジの闘い、だよね?」


「うん。それに、さっきシステムトラブルで、真雪ちゃんのスキル表示がされなくなってるってアナウンスあったけど、あれって――」


「間違いなく東雲所長(ゲーム関係者)の作為だろうな。柊木は間違いなく【超過駆動(オーバードライブ)】を使用して、自力で必殺技を使っている」


 激しい歓声の中、朱音と美月が言葉を交わし、そこに楓が意見を述べていた。


 舞台では地面スレスレまで落下し射程に入った怪鳥デネブに、冴華(サエ)が【斬波衝】を放っている。

 だが、その斬撃は怪鳥デネブの鳴き声と共に放たれた冷気を伴った衝撃波に弾かれる。

 怪鳥デネブはそのまま再度上空に飛びあがろうと羽を広げるが、その額に小さな影が出来ている。

 その影は、デネブの衝撃波の勢いを利用して上空に飛び上がっていた真雪の影である。


『グ、ガア?』


 その影が一瞬目元に入り異変に気付くが――


「奥義・水穿(すいせん)!」


 デネブが真雪の存在に気付く直前に、真雪が落下の勢いを乗せて奥義を放つ。


『ゴキャァ!』


 苦悶の鳴き声と共に怪鳥デネブの頭を覆っていた兜型の水晶装甲が砕け散る。


「まだまだぁ! 奥義・崩穿華(ほうせんか)!!」


 続けて左の拳にて奥義を繰り出し、完璧に怪鳥デネブは頭を地面に叩きつけ、完全に墜落させる。


『凄まじい! スキル表示がないので断定は出来ませんが、防具破壊系のスキルと貫通ダメージ系のスキルの連続発動で怪鳥デネブを地面に叩き落としたぁ!』


「後は任せます!」


 そう叫んで、真雪は【二段跳躍】を利用して怪鳥デネブから距離を取る。


「ここまでやられたら、私も本気を見せるしかないね」


 ふと口元に笑みを浮かべて冴華が刀を構える。


「セシル」


「分かってるわよ! 形状変化――神封之槍(ロンギヌス)――磔刑神封槍縛(クルーシフィクション)!!!」


 セシル叡王が両手を翳すと、先ほど生成した巨大な剣が螺旋を描く槍の形状へと変化する。そして、さらに魔力を込めると、その槍は螺旋回転しながら落下し地面に墜落した怪鳥デネブを地面に繋ぎ止める。


『ギギャァァァァァァァ!!!!』


 怪鳥デネブは苦悶の鳴き声を上げ、必死にもがくが地面に繋ぎ止められた体を動かすことができない。


「不本意だけど、冴華(あなた)にとどめを譲るわ」


「ありがたく頂くとしましょう。

 スキル【属性纏衣】――奥の手発動!」


 武器だけでなく冴華(サエ)の全身を炎が包む。


「紫電一刀流・奥義『篠突迅雷閃(しのづきじんらいせん)』!!!」


 水平に構えた刀が炎を纏い、凄まじい威力の刺突連打が撃ち出される。真紅に輝く閃光が幾つも怪鳥デネブの頭を貫き三本あった怪鳥デネブの体力ゲージの残りわずがとなっていた体力を削り切った。


「ふぅ、これで終わりね」


 刀を一振りして纏わせていた炎を消し去ると、とどめを刺した冴華(サエ)がそう呟く。

 それと同時に『Winner』の文字が浮かび、大歓声が会場を包んだ。


「ねぇ美月。私、今更ながらに思ったんだけど」


「うん……」


「私はとんでもない人物をブレバトに誘っちゃたのかも」


「そう、だね。こうして第三者として真雪ちゃんのバトルを見ると、あの子の凄さを改めて思い知らされるね」


 歓声と万雷の拍手の中、舞台で喜びを爆発させている真雪を見ながら朱音と美月が言葉を交わす。そんな二人の背を隣にいた楓がバンバンと叩く。急な事に驚いて二人は楓の方を見ると楓は「どんなに強くなろうが、有名になろうが、あいつらは変わらないよ」と告げた。


「アタシはサエが有名になった事で遠い存在になってしまったと錯覚して距離を取ってしまった。そのせいでアイツは道を踏み違えて強さのみを追い求める様になってしまっていた。

 オールスターバトルで柊木に敗けて目を醒ましたが、それまでアタシもサエの変化に気づけずにいた。

 だからアンタ達はアタシみたいな後悔はするなよ。どんなに柊木が遠くに行ってしまったと感じても、アンタ達は柊木の()()()()()()()でいてやってくれ」


 チラリと視線を向けて、楓がふと笑って見せる。その言葉に朱音達は「はい」と答えた。


「ほら見てみろ。あいつらは変わらない」


 楓が軽く視線で舞台の方を見るように合図する。

 舞台を見ると、こちらに向かって手を振る二人の姿があった。


「先輩の言う通りですね」

「うん。真雪ちゃんは変わらない」


 手を振り返すと、無邪気そうな笑みを浮かべた真雪を見て朱音と美月も微笑みを返す。


「こっちもな」


 無愛想に手を振り返した楓に、屈託のない笑みで答えた冴華を見て、同じように楓も口元を綻ばせるのであった。

さらっとバトルを終わらせる予定でしたが、意外と長くなってしまいました。

今話で語りたかった楓の後悔の部分がなんとか書けて良かったです。


長くなりましたが、デモ体験についてはここで一区切りです。


次回からは、七夕イベントの続きとなります。

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